米国による対イラン金融制裁 さらにジワジワ効いてきた その②

(2007年9月28日掲載)

 前号ではBank Sepahの事例を述べたが、今回はBank Saderatのケースについて述べてみよう。

 Saderatの場合、Sepahほどはっきりした事例を挙げることはできない。しかし、イランが必要とするレベルの高い工業製品や機械部品などの実質的な調達場所はどこかといえば、シンガポールと中国。アジアの工業国の日本をはじめ、欧州、韓国、台湾等の企業がシンガポールに現地法人の形で進出し、生産・販売活動を行っているからだ。この場合、Saderatはイラン本国からではなくSaderatのドバイ支店からL/Cを開設することが多い。邦銀が関与する円建て取引のひとつの事例を示そう。実際にはもっと複雑なルートの取引形態があるようだ。


<L/C発行と買取>


Saderatドバイ支店
円建てL/Cの開設
買主: 形式上の買主はドバイ企業、実体はイラン企業
売主: シンガポール登記の現地法人で、会社名が英語表記のためL/C買取するまで企業実体がわからないこともある。

邦銀・シンガポール支店
Saderatが邦銀・東京で開設している円口座にこの取引の残高を確保した上で、船積書類などを点検し、at sightベースで L/Cを買取り、売主の口座に入金する。


<物の流れ>

 シンガポールを含む各国で調達された輸出品の輸送ルートはいくつかある。例えば、


直接、イラン向けに船舶による輸出

一旦ドバイに陸揚げされた後、イランへ。ドバイからイランへは貨物船やダウ船(乗用車の積載も可能)が利用される。

今後の制裁がさらにエスカレートするような場合には、ロシアのシベリア鉄道を利用した陸路になりこともある。1980年代のイラン・イラク戦争の時には、ペルシャ湾での船舶航行に問題が発生したためシベリア鉄道を利用していた。


 イランの国営商業銀行2行(Saderat, Sepah)に対する制裁が強まっているため、イラン中央銀行は幾つかの対応策をとっている。具体的には、


2行が関与していた業務はイラン中央銀行指導の下で、米国のブラッ
ク・リストに載っていない4つの国営商業銀行に割振っている。


親イランを形成する中国、インド、ロシアの銀行、特に中国の国営中国銀行に貿易金融を含めた支援を求めているという。インドやロシアの銀行で国際的な拠点網が十分でないことや銀行実務処理能力に問題があるらしい。

イラン中央銀行のモジャラッド副総裁(米国で教育を受け、IMFの前専務理事のアドバイザーを務めた経験を持つ)はイランと取引のある外国の銀行や企業に対して、慎重な対応を求めており、「イランから出て行くなら、いつの日かまた戻れるという保証はないぞ」と警告を発している。これは7月、ドイツのドイツ銀行とコメルツ銀行がイラン企業との取引を解消すると発表した後に語られたもの。

以上

(幹事 中嶋 猪久生<なかじま・いくお> )