「ルーブル・アブダビ」美術館事業への協力を承認したフランス議会

(2007年10月16日掲載)

 フランス下院は2007年10月9日、アブダビ首長国の首都アブダビの沖合い約500mにあるサディヤット島に建設予定の「ルーブル・アブダビ」美術館事業に協力するとの計画案を承認した。フランス上院は既に2007年9月、同計画案を承認している。


 アブダビ政府とシラク大統領下のフランス政府は、2007年3月、フランスのルーブル美術館がアブダビの「ルーブル・アブダビ」美術館事業に協力することで合意していた。今回最終承認された計画案は、アブダビ政府とフランス美術館機構が合意した総額10億ユーロの協力協定の一部を成すものである。期間30年の協力計画案は、アブダビ政府がルーブル美術館の名前の賃借料及び絵画類の6ヶ月から2年の賃借料として総額4億ユーロ(約5億2500万ドル)を支払うとしている。


 フランスのクリスチャン・アルバネル文化通信相は「この事業はユニークな国際文化協力であり、巨大な文化計画を実行しうるフランスの能力の高さとその他の文化遺産、特にフランスの文化遺産に対するUAEの開放性を示すものである」と語り、協力事業を絶賛している。


 他方、アブダビのシェイク・スルタン・ビン・タハヌーン・アル・ナヒヤーン・アブダビ観光庁長官兼観光開発投資社会長は「ルーブル・アブダビ美術館は、UAEにとってのみならず、全アラブ世界にとっても一里塚である」「この美術館によってサディヤット島は文化地区を世界の文化の最高峰の一つとなろう」と語り、アラブ世界にとっても有意義な事業であることを強調している。


 但し、フランス国内には国家遺産を貸与・売却すべきではないとの反対意見もあり、議会での審議に向けて文化人や左翼の人達を中心とする約5500名の署名が集められていた。社会主義者のキャサリーナ・タスカ元文化相は「この合意は我が国の美術館政策にとって憂慮すべき転換点をなすものだ」と疑問を投げ掛けている。またフランスのジャン・クレア元ピカソ美術館役員も「この合意は我々の知っている美術館に死刑を言い渡すようなものだ」と厳しく批判している。


 フランス政府及び美術館の高官10名と美術機関の代表5名の合計15名が最近アブダビを訪問し、ルーブル・アブダビ美術館の経営戦略についてアブダビ側と協議している。因みに、フランスの著名な建築家のジャン・ヌーヴェの設計した総工費8300万ユーロ(1億900万ドル)の美術館の建設は2007年中にも開始され、2012年に開館が予定されている。

(10月11日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)