米国Hunt Oil社によるクルド自治政府との油田開発契約

(2007年11月30日掲載)

 10月、米国ダラスに本社を置く独立系石油会社Hunt OilはImpulse Energy Corp.と共にクルド自治政府(KRG)と石油開発契約を締結した。内容は公表されていないため不明。幾つかのメディアが伝える情報をベースに分析すると幾つかの興味深い点が浮上してくる。


♦ 開発地域
 トルコ国境に近いKRG自治区のDahuk州の鉱区及びクルド自治区北西部の石油探査で油田が特定されているわけではない。また、Hunt Oilも具体的な油田名を発表していない。しかし、おおよその鉱区は、今年KRGが公表した鉱区のうち6、7、8の3鉱区とみられる。この鉱区には、
       Jabal Kand
       Fajir
       Nerjis
       Ain-Sifni
の油層が走っている。このうち、最初の3油層はKRGの実効支配地域外にあり、バクダッド中央政府と新たな紛争を起こす火種を含んでいる。Hunt Oilが米国企業であることが同社のプレゼンスを決定する鍵を握ることになるだろう。


♦ 探査計画
 2007年12月までに地質調査を行い、2008年には試掘を行う計画。


♦ 米国石油会社がKRGと開発契約を結ぶことによる政治的影響
 米国当局者はHunt Oilによる開発契約を批判した。イラクでのさらなる緊張を助長するだけだ、というのがその理由。バクダッドの米国大使館によれば、同社は米国国務省から新石油法が制定されるまでは契約を結ばないよう、アドバイスを受けたという。他方、KRGは8月、独自の石油法を制定し、直ちにHuntとの契約を行った。この契約についてバクダッド中央政府のシャハリスタニ石油相は「中央政府が承認するまではKRGとの如何なる契約も無効・・・新石油法が制定されるまで中央政府は承認できない」と強く主張し、KRGを激しく非難している。今回クルド自治区に進出することについて、ホワイトハウス、ライス国務長官はHunt社と一切交渉していないと語っている。また同社も政府筋との接触を否定している。


♦ Hunt社について
 1934年、H.L.Huntにより設立。現在の代表者はRay L. Hunt(64歳)。
本社ダラス。

  石油・ガス探査地域:米国、カナダ、ペルー、オマーン、セネガル、
            ナミビア等への投資
     石油生産地域:米国、カナダ、イエメン、イエメン

 世界の石油メジャーに比べればはるかに規模は小さい。しかし、リスクをとる石油会社として米国内では知名度が高い。非公開会社であるためライバル社より機動力がある。同社は財務諸表ばかりではなく、従業員者数さえも公表していない。

 Hunt Oilは政治的に不安定地域にも進出する。1980年代初めにはイエメンに進出、内戦中も操業していた。2005年、イエメン政府はHunt Oilの操業地を接収したため、Huntは国際仲裁を求めている。現在でも、イエメンで利権を持つ。


♦ HuntのオーナーRay Huntについて
 Ray Huntは普通のテキサス人ではない。一匹狼として知られ、イエメンに初めて進出した外国人。過去2年間、共和党の資金集めの一環として7.5万㌦寄付している。さらに南メソジスト大学のジョージ・ブッシュ記念図書館に35百万㌦の寄付もした。長年、ブッシュ家とは友人関係にある。彼はエネルギー庁長官の諮問委員会である国家石油評議会や、大統領が任命する対外諜報助言委員会のメンバーでもある。

以上

(幹事 中嶋 猪久生<なかじま・いくお> )