イランの石油開発投資ファンド構想
(2007年7月31日掲載)

 昨年10月以降の米国によるイランの大手銀行2行(Bank Saderat及びBank Sepah)に対する金融制裁発動はイランのエネルギー開発部門の資金調達を事実上不可能にしてしまった。欧州や日本の銀行が米国でのドル決済が出来なくなることを恐れたことと、イラン・リスクの高まりでイラン向与信供与を停止したからである。

 このような状況の下で、イラン国営石油公社(NIOC)傘下のPars Oil & Gas社のAkbar Torkan社長はSouth Parsガス田開発資金調達に向けてイラン国内市場やドバイやバハレーンのような周辺諸国の中でも金融部門のノウハウを持つ市場で投資ファンド設定構想について言及した。現在進行中のファンド構想は次の通りである。


◆ ドバイでの投資ファンド構想

ファンドの規模: 約30億㌦の債券発行
対象プロジェクト: 主としてSouth Pars 12 (Iran LNG)及びSouth Pars 17 & 18 (Pars LNG)
保証: NIOCによる100%保証
利回り: 年率8~12%
銀行: NIOCは中国と韓国を含むアジアの銀行と資金移動などの方法について協議中。

 イランはSouth Pars 12開発契約の有力外国企業候補2社、オーストリアのOMVとアルジェリアのSonatrachに対してこのファンドの利用を打診しているという。

 South Pars 17 & 18についての開発契約はNIOCとフランスのTotalとの間で最終交渉が行われているものの、総事業費の高騰を理由にTotalは契約に持ち込む積極的な構えを示していない。当初、フランスのSociete Generale銀行がフィナンシャル・アドバイザーとなる予定であったが、米国の圧力で撤退した後の事業展開の中で投資ファンド構想が出てきた。総事業費50億㌦のうち、7.2億㌦はイラン政府予算からの支出で、残りをファンド形式で資金調達しようとするものである。


◆ テヘラン証券取引所での投資ファンド上場構想

 イラン最大の国営商業銀行Bank Melli Iranの子会社が幹事となって石油投資ファンドを立ち上げる構想がある。おおそその内容は次の通りである。

投資ファンド名: First Persian Equities Fund
起債総額: 3億ユーロ
上場取引所: テヘラン証券取引所(TSE)
幹事会社: Bank Melli Iranの子会社Bank Melli Iran Investment Co. (TSE上場会社)


 上記2件の投資ファンドの販売見通しについては未知数。エネルギー開発の成否は巨額な資金調達(プロジェクト・ファイナンス)と事業遂行能力等幾つかの要素が必要で、投資ファンドによる金集めだけで成就するものではない。イランの銀行にはプロジェクトを長期的に資金面から支えるだけのノウハウも力もない。

 TSE上場予定のFirst Persian Equities Fundの内容や仕組みについては詳しい情報を持たないが、ハイ・リスク、ハイ・リターン物を得意とする欧州のヘッジ・ファンドから口頭ベースで総額1億ユーロ購入の引合いがあるという。

 欧州ではイランが構想する投資ファンドについて、国連による更なる経済制裁の強化や米国によるBank Melli Iranに対する金融制裁第3弾の発動があるのかどうかが注目されている。

以上

(幹事 中嶋 猪久生<なかじま・いくお> )