イランのガソリン配給問題 その②
(2007年7月27日掲載)

◆ 安いガソリンはオイル・マネーの利益還元

 しかし、イランではガソリン消費量の制限は不人気といってよい。イラン人にとって
安いガソリンの供給は、オイル・マネーが公平に国民に利益還元される直接の証拠のようなものと受け止められているからだ。だから、アフマディネジャド大統領と議会が責任を取らなければならない。護憲評議会も補助金、特にガソリン値上げ問題に関しては政府が決める問題との立場をとっている。


◆ ガソリン価格問題の対応次第で政権の命取り

 議会は2008年には選挙の洗礼を受けることになり、何もこの時点で国民に不人気となる値上げに賛成したくはないというのが本音。大統領も選挙公約の履行に失敗しているという攻撃の矢面にさらされている。他方、この問題を先送りすればいつまでたっても補助金はなくならない。さらにガソリン価格の上昇は他の物価上昇に拍車をかけ、現在のインフレ(政府の公式発表は13%であるが、実態は20%超)を加速させることになる。物価とインフレの上昇、失業率の高まり、革命防衛隊など一部の集団に対する利益供与、経済性を無視した人気取りを狙った金のばら撒き政策、金融制裁による輸入品の高騰、資産の海外逃避などが連鎖的悪循環となり穏健派や改革派による現政権倒閣につながっていくとも限らない。


◆ ガソリンの闇市場

 タクシーや商用車のガソリン価格は一般車より高く設定されているため、新たな問題を引き起こす。タクシー運転手の大半は安い給与を埋め合わせるため副業としてタクシードライバーをやっているのであり、彼らの生活は益々追い込まれることになる。さらに補助金のついたガソリンを多く割当てられた政権に近い利権集団や政治エリート集団の余剰分を売買する闇市場が出現してくる危険性がある。数年前まではイラン・リヤルの市場でも政府の定める公定相場、市場相場、闇相場という3本立てであったことを想起してみるとよい。


◆ 今後の見通し

 ガソリンなど燃料や石油製品を担当する国営企業(NIODC)は100~150億㌦かけて製油所の拡張や改修を行ってきており、この3年間には その成果がぼちぼち出てきている。その中でもアバダン、アラク、バンダル・アッバスなどの計画が実行されれば、早くて2010年、遅くとも2012年までにはガソリンの自給自足が可能という見込みである。

 他方、これまで製油所の拡張・改修計画は比較的順調に推移してきたが、制裁が一層厳しくなり、米国が石油・ガス開発部門だけではなく、精製部門への投資の締め付けをさらに行えば、イランは今と変わらないか、あるいは今よりもっと厳しい状況に置かれることになるだろう。

以上

(幹事 中嶋 猪久生<なかじま・いくお> )