●イラン ヒタヒタと迫りくる経済危機 その①

(2007年1月23日掲載)

 1月20日付のArab Newsは“Iran : Looming Economic Crisis”という題名でイランに経済危機が訪れようとしている、と指摘する生地を掲載している。宗派の問題はあるにしても、中々的を射た内容であるので要旨を紹介しておく。


◆ 迫りくる経済危機とは?

 イランと国際社会との緊張が高まるにつれて、テヘランの支配層の中で、深く静かな水面下の対立がいよいよ浮き彫りとなり、より深刻な対立の形となってきている。


 迫りくる経済危機とはどのようなものか。第一に“インフレ”。中央銀行の公式発表では12%であるが、それでも実態にそぐわないとして17%に修正を迫られている。この数字は1970年代以降、最大のインフレだ。一連の工場閉鎖や企業倒産により失業率が高まり、その水準は第三世界の基準からみても高い位置につけており、過去30年間で最悪の水準にある。イラン・リヤルの価値も米㌦や近隣諸国との通貨と比べてみても減価していく一方だ。イランからの資本逃避(注)も止め処なく続いている。


 (注) 逃避資金の推定額は約3,000億㌦。このうち、1,000億㌦はドバイの不動産に向かっているといわれている。


 第三世界の共通現象はあらゆる階層の貯蓄を引出す役割を果すのは不動産投資であるが、イランにはその投資チャンスすらない。イラン人は余禄収入があればわずかばかりの土地とアパートを購入する。結果として、不動産はイラン経済実績をはかる鍵となる。イラン国内で不動産に向っていた資金は今やドバイやトルコに照準を合わせている。ここ数ヶ月でイラクはイラン投資家を引付けている。シーア派にとっての聖地ナジャフやカルバラ詣でがブームとなっている。イラン企業の一部はシリア、ルーマニア、ブルガリア等の不動産投資の機会を狙っている。


 ハメネイ体制の中でアフマディネジャド大統領の経済失政をあからさまに非難する人たちも出てきた。西側諸国、とりわけ米国を意図的に挑発しており、このことが投資家の不安心理を増加させ、不安定な状況を加速させている。イランのビジネス界では核開発疑惑に関する論議は全面戦争にまで行き着くと確信しているほどだ。


 アフマディネジャド大統領批判派は大統領の人気取り政策こそがインフレの原因だと強調する。生産的な投資機会がないため手許現金の増加がインフレを助長するという経済原則すら知らずに大統領は地方行脚を行い、地方に莫大な石油収入のバラ撒き行政を行っているのだ。同時に、大統領は必要量の40%を輸入に頼るガソリンや国内向けのガスなど大量消費財に対し政府補助金の削減策をとるよう指示しているのである。


 大統領のこのようなやり方こそがホメイニ支持者が支援を訴えてきた貧困層や選挙民を一層貧しくするという引き金になっている。不満の捌け口が工場でのスト、反政府デモ、モスクの金曜礼拝での批判的説教という形になってきている。ハメネイ最高指導者は「ア」大統領のパーフォーマンスに不満を示し、明らかに大統領の経済失政をほのめかしている。以下次号。

以 上

(幹事 砂野民男<すなのたみお>)