ハメネイとラフサンジャニ
(2007年8月31日掲載)

 イランのハメネイ最高指導者とラフサンジャニ元大統領に関する2つの記事が掲載されている。一つは、米国のワシントン近東政策研究所のPolicyWatch #1262 “How Supreme Is Iran’s Supreme Leader ?”。もう一つは7/6-12付のMEED“Understanding Tehran”である。この中で2人に関して次のように分析している。


◆ ハメネイ師の健康状態

 ハメネイ師は生命に関わる状態かどうか判らないが、健康状態は悪いとみられている。同師は1980年の暗殺未遂事件で重症を負い、その後遺症で右腕の自由を失った。時々、公衆の面前から長時間、姿を消すことがある。病状は特定されていない(注)が鬱病に苦しんでおり、アヘンを常用する伝統的な聖職者でもあるといわれている。

(注) その他に長年、癌を患っているのではないかという説もある。


◆ ラフサンジャニ元大統領の復権

 2006年12月の専門家会議の選挙結果を受けて復権の兆しが出てきた。2007年1月、アフマディネジャド大統領によるイランの国としての一体性や安全保障について好戦的すぎると保守派の新聞で非難され、さらにハメネイ師が健康悪化のため一時的に入院したとの報道が流れた時、ラフサンジャニは彼自身がキング・メーカーとして振舞い始めた。2月には、ラフサンジャニは聖地コムの高位聖職者を公然と訪ねるという行動に出た。この時、ラフサンジャニは聖職者の支持を求めるとともに、ハメネイ師の権力を減らそうとしているとの噂が立っていた。


◆ 次期最高指導者の候補者

 ハメネイ師が死ねば、次期最高指導者は対抗し合う2人の人物のうち、どちらか一人というよりは、2人の妥協により決まるだろう。その2人とは、テクノクラートの性格を併せ持つラフサンジャニ師と公然と民主主義を否定する極右のヤズディ師(Ayatollah Muhammad Taqi Mesbah Yazdi)である。高位の聖職者、議会、テクノクラート、革命権力構造(革命防衛隊、民兵組織バシジ、経済を支配するボンヤード)は限られた能力を持つ弱い指導者の下で利益分配を図っていくだろう。


◆ イランの行方

 ペルシャ政治を理解するためには重要な3つの教訓がある。第一に、イラン政治には他の諸外国では通用せず、時として誤解されやすい専門用語があり、第二に、イランでの選挙予測や国民のムードを判断することは不可能に近く、第三に、イランには全く相矛盾する現象が常にあるということである。

 イランには保守派、穏健派、改革派、伝統主義者、テクノクラート、現実主義者、右派と左派などというような伝統的な政治的レッテルはあまり意味がない。現状を維持し、最高指導者の地位を強化していきたいと望む勢力と、現在のイラン政治体制の中で民主的な要素を一層高めていこうとする勢力の間にこそ主たる政治的分裂がある。イラン・イスラム共和国がイスラム的になるのか、共和体制的になるのかという問題なのだ。

以上

(幹事 中嶋 猪久生<なかじま・いくお> )