米国の巨大機関投資家“年金基金”と対イラン経済制裁

(2007年8月28日掲載)

 米国の巨大投資機関である“年金基金”などはイラン投資を行っている外国企業を基金の投資対象からはずすような動きが出てきた。ニューヨーク州の5大年金基金やカリフォルニア州公共雇用退職者システムなどの資産総額は約5,700億㌦。このうちイラン向け投資を行っているエネルギー関連会社への投資額は37億㌦。


 今回、一部の基金から2ページの書簡が以下に示す8つの外国石油・ガス会社の代表取締役に発送されたという。その書簡には「国内外の状況の悪化や経済制裁の強化はそのような国(イラン)での企業活動にネガティブな影響を及ぼす・・・イランはテロ支援国家だ」と書かれている。8社は8月31日までに今後の対応振りに回答を求められている。対象となる企業は、

   Royal Dutch Shell (英蘭)
   Total (フランス)
   Repsol (スペイン)
   Eni (イタリア)
   Gazprom (ロシア)
   CNPC (中国)
   ONGC (インド)
   Inpex (日本)

 ある基金の財務担当者は「(投資対象企業の)リスク分析と投資家保護の立場より今回の措置(書簡による質問書)を執っているものであり、米国政府による対イラン制裁に応えるものではない」と語っている。最近、米国の自治体や地方議会がイランやスーダンへの投資を禁止する法案を提出している。フロリダ州議会が第一号で、カリフォルニア州とテキサス州が同様の法案を検討しているという。


 このような公共的な戦略を用いて、株主として幾つかの米国企業に圧力をかけた前例がある。米国以外の外国法人の形でイラン進出していた実質的には米国企業がいずれもイランから撤退を余儀なくされた。ハリバートン、コノコ・フィリップス、GEがその例である。ハリバートンはケイマン諸島でペーパー・カンパニーを設立登記し、その会社がドバイに新会社をつくり、新会社の事務所をテヘランに置いていたとされる。また、米国GE社は傘下のGEカナダ現地法人の出先をテヘランにおいていた。ハタミ政権時代、日本はこのGEと組んで“あるプロジェクト”を進めようとしたが、日の目をみることなく幻に終わってしまった。このプロジェクトが実現していれば、改革派のハタミ政権の後押しをすることにつながり、また、日本企業にとって大きなビジネス・チャンスが生まれていたことを考えれば残念としか言いようがない。8月、安倍総理はインドを訪問し、イランと同じようなプロジェクトに対し、円借款を供与することをコミットした。インドは核保有国であることを考えれば、明らかに矛盾するし、ダブル・スタンダードといえよう。


 今回、制裁の対象をイランだけではなく、米国市場で売買されている欧州やアジアの企業にまで広げている。6月には、米国政府はイランに投資する外国石油会社と幾つかの政府に対して、これ以上イランとの取引を続けるなら制裁を科すると警告を発している。欧州サイドからは米国による“国境を越えて米国の法律”を適用する傲慢さに反論が出てきている。また、イランを“テロリスト支援国家”として認定しているのは米国であり、欧州では認定しているわけではないとの主張もある。

以上

(幹事 砂野 民男<すなの・たみお> )