憲法制定に言及した後継最有力候補のセーイフ・イスラーム・カダフィ/カダフィ開発基金総裁
(2007年8月28日掲載)

 リビアの指導者カダフィ大佐の有力な後継者と見られているセーイフ・イスラーム・カダフィ/カダフィ開発基金総裁(35歳)が、2007年8月20日、リビア第二の都市であるベンガジ(首都トリポリ東方約1000km)で4万人超の前で演説し、憲法制定に向けた計画を説明した。


 セーイフ・イスラーム・カダフィ/カダフィ開発基金総裁は「わが国の次の課題は憲法、社会契約等と呼べる一連の法律を策定することである」「重要なことは、リビア国民の生命を守る契約を持つことである」と述べ、新たに憲法を制定する必要性を強調した。


 但し、セーイフ・イスラーム/カダフィ開発基金総裁は「しかし、その前に我々には合意しておかねばならない事項がある」「それらは、順に、イスラム及びシャリア(イスラム)法、リビアの安全保障と安定、リビア国土の一体性、ムアンマル・カダフィ(大佐)である」と語り、イスラム国家であることや指導者として尽力してきたカダフィ大佐の功績を尊重せねばならない点を改めて訴えた。


 さらにセーイフ/カダフィ開発基金総裁は「各種の法律はリビアの中央銀行や最高裁、メディア、市民社会を保証するものでなくてはならない」「憲法の制定に向けて、出来る限り早期に理想的な形態を得るべく、全てのリビア国民を含んだ国民対話が必要である」「同時に、カダフィ大佐が説いてきた直接民主主義は支持する」と述べ、憲法制定を急ぐよう促しつつカダフィ大佐の独自の統治制度である直接民主主義も擁護している。


 加えてセーイフ/カダフィ開発基金総裁は、(カダフィ大佐の統治下で創設された)人民委員会を超えて政治対話を広げる必要性に触れ、首相の権限強化による閣僚の任命を呼びかけた。周知のように、現在は閣僚については人民委員会が任命している。もっとも実際にはカダフィ大佐が選定した人物を人民委員会が承認するとの形式を採っているものと推察される。


 セーイフ/カダフィ開発基金総裁は経済分野についても言及し、「リビアでは600億ユーロ相当の開発プロジェクトが開始されており嬉しく思う」と語り、自身が2006年から開始した経済面での改革の成果を歓迎した。


 テレビ中継された今回の演説は、ほぼ一年前に行われた演説と比較して穏健な内容であった。因みに、一年前の演説では、タブーを打ち破って、カダフィ大佐の著書である「緑の書」で説明された「人民の権力」は存在しないと発言していたほか、リビアには政治・経済改革に反対する官僚達のマフィアが存在するとも指摘し、その後、いわゆる守旧派の強い反発を生んでいた。


 尚、2007年に入ってからは、カダフィ大佐の健康状態が必ずしも万全ではないとの噂が絶えないなか、革命40周年を迎える2009年9月1日に向けて指導者の交代に向けた政治プログラムが徐々に始動するとの見方も出始めている。またリビアが2003年12月に大量破壊兵器の放棄を決定した際には、次の指導者は民主主義や市場経済という価値観を欧米と共有するセーイフ・イスラーム・カダフィ/カダフィ開発基金総裁とするとの暗黙の了解事項が米英両国との間であったとも言われている。


 果たして今回のセーイフ・イスラーム・カダフィ/カダフィ開発基金総裁の演説が、かねてから噂されていたこうした指導者の交代に向けた動きの序章であるのか否か、革命38周年となる2007年9月1日のカダフィ大佐の演説や、或いは噂される内閣等の改造での人事異動の内容に注目したい。

(8月26日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)