ペルシャ湾・ホルムズ海峡を通過する原油輸出と迂回ルート その②

(2007年8月7日掲載)

 ホルムズ海峡を迂回するパイプライン構想は建設コスト問題や関与する国々の政治的思惑や利害関係により先送りされてきた。しかし、ここにきてカタールのラスラファンから海底パイプラインでアブダビまで天然ガスを輸送する“ドルフィン計画”が8月に操業を開始したことが湾岸諸国(GCC)の協力関係を深める結果をもたらすなど情勢が変わってきた。イランの核開発問題がエスカレートしていく中で迂回ルートが実現する可能性が高まってきている。


◆ 6本の迂回ルート

 想定事業費は20~50億㌦で、パイプライン建設は6本のルートが検討されてきた。このうちの5本はサウジアラビアを起点にしてアラブ首長国連邦(UAE)を経由し、

 ・アラビア湾に到達するルート
 ・イエメンの港に達するルート
 ・UAEやオマーンやイエメンに達するルート

が対象ルートなっている。6本目のルートは他の5本に比べて大規模な計画でイラクの油田とも連結してクウェートを起点とし、サウジアラビア経由UAEに達し、その後はフジャイラ、オマーン、イエメンの港から積出すという計画である。


◆ 計画の決め手はサウジアラビアの意向

 上記の計画はサウジアラビアが参加するかどうかによって決まる。特に、サウジアラビアの国営石油会社サウジ・アラムコは相当額の投資を行って東西パイプライン(East-West pipeline)を建設しており、これ以上建設するかどうかは政府が直接決定することになる。サウジのパイプラインだけでサウジ原油の約50%を紅海経由欧米市場へ輸送できる体制にある。

 また、サウジアラビアには迂回ルートで最も利益を受ける国(UAE、クウェート、カタール等)との間で石油資源が大きく関わる国境問題があるため、必ずしもよしとしない勢力もある。


◆ 湾岸諸国の思惑

 GCCはイランをめぐる国際情勢の緊迫化にも関わらず、イランとことを構えることにウンザリしている。

 前号にてホルムズ海峡閉鎖で最大の被害を蒙るのはUAE、特にアブダビと書いた。アブダビはフジャイラまでの総延長360㌖のパイプラインを計画しており、今後、ドイツに本拠を置くILE Consulting Engineers社をコンサルタントにして欧米6社(Chicago, Bridge & Iron、JP Kenny、Penspen International、Technip、VECO Engineering、Worley Parsons)を対象として、8月には入札を行う予定。フジャイラでの製油所、原油貯蔵施設や輸出ターミナル建設はConocoPhillipsとなる見込み。

 クウェートとカタールがイランとの関係では深刻。しかし、クウェートは国内問題で手一杯。カタールはガス輸出が主体でパイプライン構想への協力には限界がある。イランの石油を武器とする戦略をカタールは現実のものとは考えていない。


◆ イランはホルムズ海峡封鎖で利益を得るか?

 海峡封鎖はイランに利益をもたらすであろうか? イラン原油自体の供給停止になる。同時に、全ての湾岸諸国による原油供給が停止することにもなり、いずれか一方だけが困るということにはならない。イランにしてもホルムズ海峡の封鎖は湾岸諸国全てを敵にまわすことになり、イランにとっては望ましいことではない。

 イラン国営石油公社(NIOC)のガニミファルド国際問題担当局長は「イランにとってホルムズ海峡経由のルートを紅海ルートに変更することは不可能だ・・・しかし、もう一つの選択肢はインド洋経由、直接輸出するというルートもある」と語っている。

以上

(幹事 中嶋 猪久生<なかじま・いくお> )