ペルシャ湾・ホルムズ海峡を通過する原油輸出と迂回ルート その①

(2007年8月3日掲載)
◆ ホルムズ海峡の重要性

 ペルシャ湾は世界最大の石油供給源。ペルシャ湾を取巻く湾岸8カ国(サウジアラビア、イラン、イラク、クウェート、アラブ首長国連邦、バハレーン、カタール、オマーン)だけで、

石油埋蔵量は世界の60%
天然ガスの埋蔵量は世界の40%

を占めている。これらの国だけで、

毎日24百万㌭の石油(世界全体では84百万㌭)を産出し、
このうち世界石油市場で取引される石油の約40%がホルムズ海峡を通過。
海峡を通過する10万㌧以上の大型タンカーだけで毎日20~30隻。
日本の中東産原油輸入の75%はホルムズ海峡を通過。
この海峡は狭いところで幅50㌖、2つのレーンに分離している。


◆ イランによるペルシャ湾封鎖の可能性?


 イランによる核開発問題がエスカレートするにつれて、今後の情勢次第では米国によるイラン制裁が一層強化される見通しが強い。ブッシュ大統領は対イラン制裁には“全ての選択肢”を検討していると発言もしている。イランにとってもペルシャ湾、特に出入り口となるホルムズ海峡の戦略性を最大限利用しようとしている。イラン側の発言振りをみるとホルムズ海峡封鎖も視野に入れていることが伺える。

ハメネイ最高指導者
「米国や欧州がイランに対して誤った行動をとれば、中東のエネルギー輸送は深刻な危機に直面するだろう。米国はこの地域でエネルギー供給を防衛できない」とホルムズ海峡を封鎖、イランを含むペルシャ湾諸国から石油を運ぶタンカーの航行を妨げる可能性を示唆した。


アフマディネジャド大統領
米国によるイラン攻撃の場合には“石油を武器”に使う。

バジリ石油相
世界の石油供給の多くがイラン領のホルムズ海峡を通過して市場に供給されている。ペルシャ湾岸地域からのエネルギー供給が止まれば、欧米諸国の経済は大きな打撃を蒙るだろう。

ヤヒア・ラヒム・サファビ革命防衛隊司令官
対イラン制裁の結果として戦略的な湾岸水路を通じての国際的な石油の流れを崩壊させることになるだろう。


◆ ホルムズ海峡を迂回し石油を輸出するルートはあるのか?


 ホルムズ海峡を迂回する原油パイプライン構想については浮かんでは消えるという経緯を辿ってきた。先送りされてきた理由は建設コスト問題であった。イランをめぐる核開発問題が深刻化する中で改めて現実的な形で浮上してきた。しかし、パイプライン建設構想は関与する国々の政治的思惑もあり実現にはまだまだ障害がありそうだ。

 サウジアラビアのトゥルキ前駐米大使は米国とイランとの戦争が始まれば原油価格は現在の3倍になるとの懸念を表明した。


◆ UAE(アラブ首長国連邦)の場合

 ホルムズ海峡封鎖による最も被害を蒙るのはUAE、特にアブダビ首長国とイラン自身。現在検討中のUAEの迂回パイプライン計画が動き出している。このパイプライン建設計画の概要は次の通りである。

事業主体: 国際石油投資会社(IPIC)
アブダビ首相国が全額出資する投資会社
総事業費: 40~50億㌦
迂回ルート: アブシャン(Habshan)油田からオマーン湾に面したフジャイラを結ぶ総延長360㌖。
送油能力: アブダビの原油生産能力は約240万b/dで、この迂回ルートにより130万b/dの輸送が可能となる見込み。
建設時期: 8月には欧米6社を対象として入札を実施し、早急に建設に着工する計画。
その他: フジャイラには原油貯蔵施設や輸出ターミナルを新設する。

以上

(幹事 中嶋 猪久生<なかじま・いくお> )