イラク政策で意見を異にするブッシュ政権とサウジアラビア

(2007年8月3日掲載)

 ホワイトハウスは2007年7月27日、米国はサウジアラビアが果たすイラク問題での役割に強い不満を覚えているとの報道があったためか、米国のテロとの戦いに関するサウジアラビアとの関係は極めて強力であることを発表した。ホワイトハウスがわざわざサウジアラビアとの関係が良好であると言及したのは、7月27日付のニューヨーク・タイムズ紙が、「米国は、サウジアラビアがイラクのマリキ政権を弱体化しようとしているほか、イラクの反政府武装勢力への参加を目指すサウジ国民のイラク流入の阻止に失敗していると見ている」と報じたためであった。


 しかし、サウジアラビアの消息筋によれば、2007年1月のリヤドでのサウジ政府と米国政府との高官協議の際に、サウジ側はマリキ・イラク首相がイランの手先であり信用できない人物であると書かれた入手書類を米国の特使に見せてイラク政策の再考を求めたという。これを聞いたザルメ・ハリルザード特使(現・国連大使)は、直ちにアブドゥラ・サウジ国王に対して、同書類は偽造されたものに違いないと反論したものの、サウジ側は承服せず、サウジアラビアとイラク現政権の間の亀裂の深さを実感したという。


 ブッシュ政権は、イラクの混乱や不安定化の件で、中東における友好国であるサウジアラビアを非難することを回避し、代わりに批判の矛先をイランとシリアに向けてきた。理由は、米国がイラク政策やイランの核開発問題、或いは中東和平問題でサウジアラビアの支援を必要とする時に批判をすれば、サウド王家が益々ブッシュ政権に背を向けかねないと見ているためである。


 しかし、この数ヶ月、米国の対サウジ不満は大きくなりつつある。サウジアラビアがイラクのマリキ政権を弱体化するために、スンニ派の部族や反マリキ勢力への支援を益々強めており、ブッシュ政権の描く今後のイラク像から乖離し始めているからにほかならない。


 さらにブッシュ政権を怒らせたのが、サウジアラビアがGCC諸国、特にUAEに対して、イラクのシーア派部族を直接支援するよう呼びかけていたことである。このためハリルザード米国連大使は、約10日前のニューヨーク・タイムズ紙に、不快感を示すために、「シリア、イランのみならず米国の友好国の何カ国かが(イラクの)不安定化政策を追求している」との発言を行っている。特に、過去数ヶ月に亘って、ライス国務長官、ゲーツ国防長官、チェイニー副大統領、ステファン・J・ハドレー国家安全保障担当補佐官が、アラブの友好国に対して、イラクのスンニ派の指導者たちがマリキ政権をもっと支持するような言動をとるよう圧力をかけていただけに、ブッシュ政権の不満は極めて大きくなっている。


 但し、サウジアラビアの消息筋は、「米国がどのように解釈するかは勝手だが、サウジアラビアは、まずアラブ統一戦線の構築に努め、さらなるアラブ間の内紛の回避に動き、そしてアラブ・イスラエル紛争の平和的解決に向けたコンセンサス作りを行ってきた」と述べ、むしろ不満を抱いているのは、独善的な米国の中東政策に付き合わされるサウジアラビアをはじめとするアラブ側であると反論している。

(7月31日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)