最近のサウジ外交姿勢を示唆するアラブ・ニューズ掲載の記事(「さらなる機会を創出する新シルク・ロード」)から

(2007年4月13日掲載)

 
サウジアラビアで発行されている英字紙アラブ・ニューズは同国政府の見解を知る上で極めて有益な新聞として知られている。その同紙が2007年4月10日付で「さらなる機会を創出する新シルク・ロード」(A New Silk Road Creates More Opportunities)と題する「新アメリカ財団」(The New Amerian Foundation)のアフシン・モラヴィ(Afshin Molavi)研究員の記事を掲載している(http://www.arabnews.com/?page=7&section=0&article=94791&d=10&m-4&y=2007、ワシントン・ポスト紙への寄稿記事の転載)。同記事は、若干米国離れし、その分、アジア寄りとなっているサウジアラビアの最近の外交姿勢を考える上で有益な視点を提供していると思われる。以下では、同記事の主な内容を紹介することとしたい。


 昨年(2006年)、石油巨人であるサウジアラムコを訪問した中国の胡錦涛・国家主席は通訳者を必要としなかった。中国語を話す数多くのサウジ人がいたからである。その数年前からサウジアラムコは、数十人の社員を勉学のために北京に送り始めていた。結局、サウジアラビアの石油輸出の将来の増加分を受け入れるのは、米国ではなく中国である。他方、中国はインド、中国、マレーシア、シンガポール、韓国で学ぶ学生に奨学金を与えている。これら4カ国のうちシンガポールを除くインド、中国、マレーシアは、2005年に国王に就任後にアブドゥラ国王が初めて行った外国訪問の訪問国であった。


 サウジアラビアの学生の例は、中東とアジアの間で増加しつつある貿易とビジネスの回廊のほんの一部分に過ぎない。コンサルタント会社のマッケンジー社によれば、新シルク・ロードと呼ばれる両地域間の貿易・投資は過去10年で4倍に増加しており、今後も2020年まで劇的に増加し続ける見込みである。


 ドバイで発行されている新聞は3月某日の見出しで、イラク情勢でもアラブ・イスラエル和平交渉でもなく、ドバイのCEO型統治者であるシェイク・ムハンマド首長の歴史的なインド訪問を取り上げた。訪問時には数十もの協定が調印されたが、なかでも最も注目されたのは、インドの4万エーカーの土地に三つの新都市を創出する総額200億ドルの不動産事業であった。


 新シルク・ロードは、経済ブームを引き起こしているばかりでなく(インドとの取引では10万の雇用口が創出される見込みである)、東洋の地経学及び地政学の風景を変えており、米国の政策に重大な影響を与えつつある。


 新シルク・ロードは、主として中国及びインドの経済成長と高水準の原油価格の双方の影響の結果として生まれた。中国とGCC諸国は潤沢な現金を持っている。さらに言えば、中国とインドのエネルギー需要は、世界第16位の経済規模に等しいGCC地域の継続的成長を確かなものとするであろう。新シルク・ロードの新たな隊商宿は、地域の経済的「勝者」或いは上昇する星々である:即ち、ドバイ、北京、ムンバイ、チェンナイ、東京、ドーハ、クアラルンプール、シンガポール、香港、リヤド、上海、アブダビである。


 旧シルク・ロードの文明化の中心地、例えばペルシャ(イラン)、レヴァント(レバノン、シリア、ヨルダン)、メソポタミア(イラク)は背後に置き去りにされている。ドバイは新シルク・ロードの非公式の首都と呼べるかもしれない(成長を生み出す資本、知恵、貿易の集積地である)。他方、かつては中心地であったイランは、巨大な潜在力にも関わらず病人と化している。


 GCCの投資家たちは、アジア中の不動産、金融、インフラ部門に資金を注ぎ込んでいる。中国工商銀行への最大の外国投資家となったクウェイト投資庁(KIA)は、過去2年でアジア向け投資額を倍増した。ドバイ政府の高官は2007年3月、GCC諸国が外貨準備の多角化のために中国元を購入しつつあると語っていた。その一方で、中国、韓国、インド、日本の企業が中東の不動産、消費財、工業投資の各分野で積極的に活動している。中国とエジプト(エジプトは背後に置き去りにされたいま一つの国家であるが、ここに来て新たな動きを見せ始めている)は、今後数年で貿易を倍増することを確約している。


 ニコラス・バーンズ米国務省次官は2007年2月、ドバイで、イラクの危機、イスラエル・パレスチナ紛争、イラン封じ込めが、米国の中東での関与の核心部分を形成していると語った。同次官は、米国務省の最高レベルの高官達は時間の相当部分をこれらの危機の管理に費やしているとも語っていた。良いであろう。それらは確かに肝要な問題なのであるから。


 しかし、我が外交問題の官僚機構が主として火消しに焦点を当てている時に、我々は重要な地域同士の傾向と連携を見過ごしている。それはビジネスに留まらない。新シルク・ロードの大きな利点は、米国の安全保障を増大する潜在性を秘めているところにある。


 今や湾岸安保は、北京にとってもニューデリーにとっても、米国にとってと同様に重要になっている。中国は(湾岸における)米国の安全保障の傘の下のみで満足してはいないであろうし、インド海軍は今やアラビア海をこれまで以上に積極的に警戒航行している。さらに言えば、中国とインドは、西側よりも遥かにイランに影響力を持っているーそして、妨害となる戦争への忍耐をなくしつつある。イスラム共和国の多くの政治エリートはビジネス・エリートでもあり、紛争からの出口を探している。


 より拡大した新シルク・ロードへの統合への道を示すことは、恐らく、イラン指導部にとって孤立よりも遥かに穏健な力となろう。イランのマフムード・アハマディネジャド大統領は恐らく余り気にかけまいが、より力を持つ保守陣営の指導者達は戦争よりも安定(そして金儲け)に関心を示すであろう。


 ワシントンはGCC資本を西半球に呼び込むための努力について検討することであろう。ブッシュ大統領は最近、中南米経済の発展を支援すると約束した。我々の接触を梃子として出現しつつある中南米市場とGCC資本網を結びつけ、新たな地球シルク・ロードを創造しようではないか。


 新シルク・ロードが成長するにつけそうした機会も増すことになろう。しかし、我々は自らの火を消すのに忙しく、それらを見ることが出来ないかもしれない。

(4月11日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか・よしき>)