●イラン経済 その④ 
    アハマディネジャド政権で利益を得るのは誰か?


(2006年11月24日掲載)


 イランでは国民の約40%以上が貧困ラインの生活を送っているとされている。国内的には低所得層を対象とした経済政策を進めてきており、まず、政府系産業部門の労働者の給料を引上げた。次に、全労働者の最低賃金を(米㌦換算で)月120㌦から180㌦に引上げた。賃上げ対象者が労働者の80%近くに達したことから民間部門の企業はむしろ赤字に転落、悪くすると倒産に追い込まれる事態も出てきたらしい。その後、賃上げ率が引下げられたが、今度は労働組合の反発が強い。インフレが進行し、物価が上昇する中では経済が停滞するのは当然ともいえる。


 その中で利益を得るのは誰か? アハマディネジャド(以下「ア」)の基盤を支える勢力、つまり革命防衛隊ということになろうか。2004年の国会議員選挙で約40名の革命防衛隊出身の議員が選出されている。「ア」政権では、出身母体である革命防衛隊は幹部クラスが当事者能力もないのに政府の要職に迎えられているし、経済的特権も享受している。直近の例では、11月15日、「ア」大統領はファルハド・ラフバル副大統領(兼行政管理庁長官)を更迭し、後任にアミル・マンスール氏を指名した。同氏は、大統領と同じ大学を卒業した機械技師で、これまでに政府のダムや空港建設に携わってきた経歴を持つ。


 イラン国軍とは別組織でハメネイ最高指導者による直轄下にある革命防衛隊のエンジニアリング部門を担当する企業Ghorbによる大型プロジェクト参入の事例が増えてきていることに国会で批判を浴びている。2005年以降、政治力を行使して多くの公共工事を受注してきた。Ghorb社による工事は大型になればなる程、ことごとく工期に遅れ、しかも大幅に予算を超過する、という批判である。


 「ア」大統領は就任後、国内経済建設にあたり、イラン企業優先策を打ち出してきた。このため革命防衛隊による最近の建設部門での受注状況をみると大型工事の受注が目立つ。例えば、

テヘラン国際空港の運営
ハタミ前政権は新空港の管理をトルコ企業に委託する計画であったが、この事業を狙っていた革命防衛隊は外国企業の関与に強く反対して空港を閉鎖、契約を白紙に戻してしまった。


イラン~パキスタン~インド向けのパイプラインに連結される予定の国内用の建設工事(IGAT-7)を含め13億㌦で受注。総延長900㌖。この受注に関しては議会の反対が強い。

South Pars15-16のガス田開発に関連する建設部門の幹事役に指名。この工事は、当初、ノルウェーのAker Kvaerner社とのコンソーシアムであったが、入札をやり直し、Ghorb社が一社幹事となった。受注後にGhorb社はオランダ、フランス、イタリアの各社に下請けに入らないかと声をかけている。

テヘラン地下鉄拡張工事3.5億㌦と新線4本の建設12億㌦。


公共工事はどこの国でもおいしい仕事なのであろう。このような政治的コネを最大限に利用し工事をさらっていくGhorb社に対して、民間の建設業者からは強い不満の声が挙がっている。いわく、

Ghorb社にはプロの技術者がいない。普通の会社ではない。民間と同じルールでやっているわけではない。 

外部の支援がなければ、これ以上の新規受注はGhorb社の能力を超える。


 しかし、今後、国内受注工事では革命防衛隊が中心的な役割を果すことになり、近い将来、エネルギー分野にも進出してくるだろう。エネルギー分野への進出に意欲を燃やす背景には次の要因があるようだ。

カタール、サウジアラビアなど近隣の産油国に比べると開発・生産の立ち遅れが目立っていること。

外国企業による投資に猜疑心を持っていること。

米国の制裁により石油生産もほぼ10数年間増えることなく推移し、他方では一部油田の枯渇が急速に進んでおり、自力で何とかやっていきたい、という強い期待感がある。


 但し、South Parsのガス開発プロジェクトは複雑で、開発技術は従来、フランスのTotalやイタリアのEniなどに依存してきたという事情もあり、今後どのように対応していくのかという問題が残る。


以 上

(幹事 砂野民男<すなのたみお>)