●クウェート、原油生産目標に関わる4つのメガ・プロジェクトの行方は?
     その① ガス供給及びAl-Zour製油所建設問題
     その② Project Kuwait (次号)


(2006年11月21日掲載)


 クウェート政府は総投資額200億㌦以上かけて原油増産のため4つのメガ・プロジェクトを立案しているがいずれも難題に直面して大きな前進がみられない。その背景にはクウェートの国内事情、サウジアラビアとの国境・領海問題、イランやイラクをめぐる中東の政治問題などが色濃く反映されている。このまま無期限に延期されるか、中止という事態になれば、原油生産計画は危機に直面し、収入減やエネルギー分野での新たな技術を取得できる機会も失うことになり、クウェート石油産業の将来は暗いといわざるを得ない。クウェートが抱える4つのメガ・プロジェクトの見通しや成否の及ぼす影響をみてみよう。


 
◆ 4つのメガ・プロジェクト

  ❶ Project Kuwait
  ❷ カタールからのガス供給
  ❸ イラクからのガス供給
  ❹ Al-Zour製油所建設


 
◆ ガス供給問題・・・カタール及びイラン

 クウェートでは自国産のガスは石油化学製品の製造用及び国内発電用として使用する計画を立てている。カタールからのガス供給計画(注)は電力用として計画され、2001年覚書を締結し、順調に行けば2005年には稼動しているはずであり、カタールからのガス供給が海底パイプラインにより供給されることになっていた。しかし、パイプラインがサウジアラビアとバハレーンの領海を通過することをこの2国が認めないと拒否している現状からはガス供給計画が進展する見通しは「ゼロ」に近いといえる。また、カタールに代わり、イランからガス供給を受けるという計画もあるが、イランをめぐる厳しい国際環境の中で今後数年間は実現困難といわざるを得ない。


(注) ガス供給計画の概要
事業の当事者: カタール国営石油会社(QP)
クウェート国営石油公社(KPC)
ExxonMobil
クウェート側の総 投 資 額 : 約100億㌦
事 業 内 容 : カタールRas LaffanからクウェートRas Al-Zourまで海底パイプライン(590㌖)を敷設してガス供給するもの。ガス開発鉱区はExxonMobilがEGUプロジェクトとして開発する鉱区。生産予定量は17.5億立方㌳。
操 業 開 始 : 2005年半ば


 
◆ ガス供給問題・・・イラク

 イラクからのガス供給問題は、イラク新政権が発足したとはいうものの、未だ政権基盤は安定せず、クウェートとの交渉も大幅に遅延している。この計画は2つの段階に分かれており、第一段階では38百万立方㍍を輸入し、第二段階では2億立方㍍を輸入するというものである。クウェートはその見返りとしてガソリンとディーゼル油をイラクに供給するというもの。現在、イラクに対し1日あたり約300万㍑相当のガソリン及びディーゼル油を供給している。現在のイラク情勢からみて石油増産の優先度が高く、ガス生産はまだ先の話であることからイラクからのガス供給計画も実現性が薄い。


 
◆ Al-Zour製油所建設問題

 クウェートの製油所操業を担当するクウェート国営石油会社(KNPC)はAl-Zourで世界最大級の製油所建設(注)に向けて、9月、応札予定の最終企業名を公表し、11月に入札する計画であったが延期することとなった。新たな入札日は決まっていない。延期理由は、サウジアラビアとクウェートの間の中立地帯Al-Zourで石油生産を操業するSAT(Saudi Arabian Texaco)の親会社Chevronがクウェートに対して抗議したことである。その内容は、次の3点。

SATはサウジアラビアとクウェートの中立地帯で操業中であるが、これは1954年、両国の間で合意されたものであり、2009年の権益期限までは有効。その間、同地は石油生産のために留保されることになっている。
KNPCが計画する製油所建設予定地にはSATの事務所と従業員用の住宅がある。
現在の権益が更新される場合には、同地は引続き両国間の協定に基づき留保されることになる。


 SATは中立地帯で唯一操業を行う外国企業であり、期限は2009年。アラビア石油は中立地帯で操業をしていたが、2000年2月にサウジアラビア側、2003年1月にクウェート側の権益が失効している。SATは2009年の期限後も操業していきたい意向を示している。このままでは中立地帯の利用をめぐるクウェートとサウジアラビア2国間の国境論争が大きな障害となり、少なくとも権益の期限が到来する2009年までは事業は進まない可能性が出てきた。


(注) Al-Zour製油所の計画概要
精製部門の長期目標: 今後15年間に300~400億㌦投資して2020年までに400万b/dに向けて精製能力を増強する。精製関連だけで200億㌦の投資が必要とされる。この中核となるのがAl-Zour製油所建設計画。既存の3製油所(Al-Ahamadi, Mina Abdullah, Shuaiba)のうち老朽化したShuaibaをスクラップ化し、他の2製油所の増強を図り、新たにAl-Zour製油所を建設するというもの。
総投資額: 63億㌦
精製能力: 61.5万b/d
操業時期: 2010年



以 上

(幹事 砂野民男<すなのたみお>)