欧州連合(EU)によるイラン制裁を巡る各国の動向:豪州・スペイン・中国・インド
(2012年1月27日掲載)

 欧州連合(EU)外相理事会が、2012年1月23日、原油の全面禁止措置を含む新たなイラン制裁を決定して以降、関係諸国はそれぞれの置かれた立場を反映するような動きを始めている。例えば、オーストラリアのケビン・ラッド外相は、2012年1月24日、ロンドンで開かれた英豪外務・財務相会合後の記者会見で、次のように語りEU禁輸に全面協調する姿勢を鮮明にした。

我が国はEUの決定を承認するだけでなく、勿論、同様の措置を採る。
イラン国民、イランのエリート指導層、イラン政府に伝えたいメッセージは、イランの行動が国際的に受け入れがたいである。
それは費用の伴うものだが、支払う価値のある費用である。
現在のイラン原油輸入量は無視し得るものである。

 また、スペインのホセ・マヌエル・ガルシア・マルガッロ外相は、2012年1月23日、EU外相理事会の終了後、次のように述べイラン原油輸入の減少分をサウジアラビアが補填すると言っていることを明らかにした。

スペインの原油輸入に占めるイラン原油の比率は約10%である。
自分はEU外相理事会の前にスペインの石油企業と協議したが、代替供給源を確保したと言っていた。
自分も個人的にサウジアラビアから保証を得ている。
自分も個人的にサウジアラビアから保証を得ている。
サウジアラビアは我々に供給を保証すると共に、原油価格を維持すると言っていた。

 EUがイラン原油の禁輸を決めたことで注目されるのが中国である。この点について世界最大の船舶仲介企業の一部門のクラークソン調査サービス社は、2012年1月24日までに、イランのカーグ島から中国向けに原油約200万バレルを運ぶべくスーパー・タンカー2隻を予約したことを明らかにしている。

 具体的には、現在、qi Lian San号がシンガポール沖合に停泊し、2月3日~5日の間に原油27万トンをカーグ島で積み込む手筈となっているほか、中国の石油トレーダーのZhuhai Zhenrong社がナショナル・イラン・タンカー社の所有するタンカーを予約しており、1月29日に原油26.5万トンを積み込み備蓄タンクのある中国のNingboに運ぶ予定となっている。因みに、中国の通関資料によれば、中国の2011年12月のイラン原油引き取り量は240万トンであった。

 中国に次いで対応の注目されるのがインドである。DEBKAfile news websiteによれば、テヘランを訪問中のインド代表団は、今般、イラン原油の輸入代金の支払いに金を当てることで合意したと伝えている。因みに、中国も金での支払いを行う見込みともしている。この報道が事実とすれば、少なくとも両国は、金で支払うことによって制裁の対象となったイラン中央銀行を使わずに済むことになる。

 この報道に接した金の専門家は、両国のイラン原油の輸入には大量の金が必要となることから金価格が上昇し米ドル価値が低下すると予測している。但し、BKAfile news websiteの発表では「支払い問題を協議するために先週イランを訪問したインド代表団は、イラン原油代金を一部は円で、残りはルピで支払うことに合意したが金での支払いについては闇の中にある」(http://www.presstv.ir/detail/22857.html)と伝え、明確に発表はされていないとしている。

 中国、インドのイランからの原油輸入がどうなるのかは、イランに対する米国、EUの制裁がどの程度効くのかを示すメルクマールにもなるだけに気になる動きと言えそうだ。

(1月25日、記)
<関連情報>

今後を予想する上で極めて重要なイランを訪問する国際原子力機関(IAEA)高級調査団へのイラン政府の対応【2012/1/27】

原油の全面禁止措置を含む新たなイラン制裁を決定した欧州連合(EU)外相理事会【2012/1/24】

緊張緩和を目指すように「米海軍艦船は長年に亘り湾岸・中東に派遣されてきた」との声明を発表したサラミ・イラン革命防衛隊副司令官【2012/1/24】

イランがシリアの原油を販売【2012/1/24】

今後の事態に備えてイラン原油に代わる供給先を探し始めたトルコの石油企業【2012/1/24】

イラン原油の禁輸ではコンセンサスはあるものの猶予期間等での調整が依然必要なため結論を持ち越した欧州連合(EU)外相会議準備会合【2012/1/24】

イラン制裁やホルムズ海峡封鎖論を巡る主要国等の動き(米国・ロシア・中国・インド・サウジアラビア・OPEC・NATO)【2012/1/20】

来訪したアイホーン米国務省特別顧問(不拡散・武器管理担当)にイラン原油輸入量の段階的削減を示唆した韓国政府【2012/1/20】

オバマ米政権からのホルムズ海峡の封鎖に関する警告書簡の受領を明らかにしたイラン外務省【2012/1/17】

(幹事 畑中美樹<はたなか よしき>)