自由・公正や雇用等を求める「民主化運動」からスンニ派対シーア派の「宗派対立」へと変化してきたバハレーンの騒動
(2012年1月27日掲載)

 バハレーンのターリック・アル・ハッサン警察長官・少将は、2012年1月25日、次のような声明を発表し、道路の封鎖を試みた反政府抗議を散会させたことを明らかにした。

1月24日夜の衝突で、破壊者たちが道路を封鎖し手製の火炎瓶を投げつけてきた。
治安部隊はシーア派の村落で何人かを逮捕した。

 当時の状況について野党シーア派政党イスラム国民統合協会(ウィファーク)の党員でもあるマタール・マタール元議員は「抗議者たちは少なくとも4つの村落で治安部隊と衝突し、重傷者1人を含む数人の負傷者を出した」「若い男性一人が病院に運ばれたが危険な状態にある」「今回の事件は、抗議者を単に追い払うのではなく意図的に負傷させるとの政府の政策があることを示唆している」(ミドル・イースト・オンライン 2012年1月25日)と語り、バハレーン治安部隊が容赦なく抗議者を攻撃しているとの見方を明らかにした。

 米国政府は、2012年1月23日、反政府運動が続いていることから、予防的な措置として大使館員及びその家族をバハレーンの首都マナマ近郊の新たな場所に移したことを明らかにしている。ドイツ国会の議員でイラン及び治安問題の専門家でもあるオミド・ヌーリプール氏は「自由を求める非宗派運動として始まったバハレーンの動きは、イランとサウジアラビアの地域戦争の最も熱い戦場へと転化してしまった」「サウジアラビアがバハレーン国内での国家による抑圧を支持しているので、イランはシーア派を擁護する役割を演じている」(NYT紙 2012年1月25日)と述べ、バハレーンの民主化運動がイランとサウジアラビアの代理戦争の場へと変わってしまったと分析している。

 実際、2012年1月の場合、イスラム教徒の休日である金曜日ともなるとモスク(寺院)は信者で溢れ返っている。しかも、モスクの近くにはイランの故ホメイニ師を描いたのぼり旗が数多く見られる。モスクの説教師、例えばアヤトラ・カシム師は以前には平和的な説教を行っていたが、1月20日の金曜礼拝では女性の抗議者に暴力をふるった警察を非難する内容になっていた。

 問題は要人がスンニ派である政府側とシーア派住民の間の信頼感が崩れてしまったことである。双方の不信感が根強いことは両派の人たちも認めている。野党シーア派政党イスラム国民統合協会(ウィファーク)のアリ・サルマン党首は「人々は真の改革があれば抗議を止める」「我々は首長家に退陣せよとは言っていない」「首長家は統治してよいが、権力を国民に手渡すべきである」「モロッコの国王を見てほしい。モロッコ国王は国民の声を無視せず、正しい方向に動いている」「問題はバハレーンではそうした動きのないことである」(同上)と語り、君臨しても統治しない王制への変更がなければ抗議デモは終わらないとの考えを示唆している。

 但し、先に登場したドイツ国会の議員でイラン及び治安問題の専門家でもあるオミド・ヌーリプール氏は、次のように語り、反政府側にも問題のある点を指摘する((NYT紙 2012年1月25日)。

長年に亘る約束の果て野党が政府を信頼しなくなったことは理解できる。
しかし、だからと言って対話しないのは誤りと思う。何故ならば、抗議者側は過激なシーア派運動により多くの若者の命を失っているからだ。

 野党がイランとのつながりを言われるレバノンのヒズボラやイラクのアフメド・チャラビ氏と接触している点が警戒心を高めているとの指摘について野党シーア派政党イスラム国民統合協会(ウィファーク)のジャワド・フェイルーズ書記長は「チャラビ氏はその他の人と同じように米国との仲を取り持ってくれた」「しかし、我々は外部者にバハレーンで何をするのかを指示されることは許さない」と反論している(同上)。

 一方でイランの核開発を巡る制裁問題が注目される中、サウジ政府によるバハレーンへの妥協を封じる圧力が高まることが予想される。バハレーン政府内にも野党側に一定の譲歩を行い改革を行うべきとの勢力もいるのだが、流れは反対の方向に向かって行きそうな雲行きである。

(1月26日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか よしき>)