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| (2012年1月27日掲載) | ||||||||
イランの中央銀行と経済省は、2012年1月25日、5年物の預金金利をそれまでの15%から21%へと引き上げることを発表した。これにより、預金金利は公式発表のインフレ率20.6%をようやく上回ることとなった。因みに、同日のイラン国営通信は「シャムスセディン・ホセイニ経済相はアハマディネジャド大統領が預金金利を最高21%に引き上げるとの通貨信用委員会の承認に合意した」(ロイター通信 2012年1月26日)と伝え、アハマディネジャド大統領が貧者向けの貸出金利を低水準に抑制するとの方針から預金金利をインフレ率以上に引き上げないとのそれまでの政策を転換したことを明らかにした。 ここに来てアハマディネジャド大統領が突然政策を変更した背景には、著名なアハマド・タバコリ議員が前日の1月24日、政府のこれまでの対応の責任を問うかの次のような発言、即ち、インフレ率が20%を超えイラン通貨の価値が1ヶ月で30%も下落する責任を(政府が)問われないならば反逆罪として早急に調査必要が出てくるとの発言があったためである。イラン国民はインフレの高進とイラン通貨価値の急落を受け、食料や金、外貨の退蔵に走り始めていた。特に、預金金利が低いなかインフレは進んでいることからイラン国民が預金を引出し金や米ドルなどの外貨に換える防衛策を講じていたため、需要の急増から金や外貨の価格がさらに上がる悪循環に陥っていた。 イラン中央銀行の公式参考レートは1米ドル=11,293リアルであるイラン通貨と米ドルとの交換レートは、2011年12月には1ドル=15,000~16,000リアルの間を変動していたものの2012年1月には18,000リアルを経て20,000リアルを超え、今回の預金金利の引き上げ発表直前には22,500リアルにまで下落していた。預金金利の引き上げ発表で一応1ドル=21,000リアルへと7%ほど戻したが、依然2011年12月比では約30%、2011年1月比では約50%もイラン・リアルは価値を落としている。 かねてからアハマディネジャド大統領に金利の引き上げを求めていたマフムード・バフマニ・イラン中央銀行総裁は、今回の決定後、これからはイラン国民が緊急に必要とする場合以外にはイラン・リアルの外貨への変換は出来ないことを示唆するように、次のようにコメントしている。
イランの要人たちの中にも政府の金利引き上げの決定が大幅に遅れたことを批判する声は少なくない。例えば、ムスタファ・モタバルザデ議会経済委員会副委員長は「引き上げの決定が遅れたことに論理的な根拠は全くない」「預金金利の引き上げは国民の投資の視点からすれば適切な手段である。しかし、それを大急ぎで、しかも今のように市場がインフレ的になっている時に実施しても何の問題解決にもならない」(同上)とファルス通信に語り手厳しく政府の対応のまずさを批判している。アラディン・ボルージェルディ議会外務委員会委員長も同通信で「イラクとの戦争中でさえ、このような不安定性はなかった」「政府高官とアハマディネジャド大統領自身が、(引き上げを求めてきた)イラン国民や世論に対して責任を負っている」(同上)と述べ、やはりアハマディネジャド大統領の失政と批判している。 実はイランの国会議員たちは、アハマディネジャド大統領が財政赤字を削減するために意図的にイラン安の政策を採っているのではないかと疑いの目で見てきた。外貨で得た石油収入を外貨高・リアル安で換えれば、イラン建ての受取額が大きくなるからだ。例えば、1億ドルを公式レートで換えれば1兆1,293億リアルにしかならないが、市場レートの1ドル=21,000リアルで換えれば2兆1000億リアルとなり弱者向けの歳出をそれだけ賄えることになる。 イランの政治評論家たちは、2012年3月2日に予定されていた議会選挙に向けてアハマディネジャド政権が国民受けする経済政策を優先して来たのではないかと指摘する。因みに、今回の議会選挙は、2013年央に予定されるイラン大統領選挙の前哨戦として大きな意味を持つ。2009年の大統領選挙後、改革派の力の著しく弱まったイランでは権力争いも「穏健保守派」対「強硬保守派」といいう保守派内部での戦いへと姿を変えている。 アハマディネジャド大統領のイラン政府内での権力基盤は、ハメネイ最高指導者が大統領制の廃止は可能と語るなど必ずしも盤石なものではない。米欧による制裁の強化される中でのアハマディネジャド大統領による苦しまぎれ的な今回の預金金利の引き上げは、一般市民という新たな敵を作る可能性を秘めているだけにイラン国内の動きからしばらく目が離せくなりそうだ。 |
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| (1月26日、記) |
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| <関連情報> ●欧州連合(EU)によるイラン制裁を巡る各国の動向:豪州・スペイン・中国・インド【2012/1/27】 ●今後を予想する上で極めて重要なイランを訪問する国際原子力機関(IAEA)高級調査団へのイラン政府の対応【2012/1/27】 ●原油の全面禁止措置を含む新たなイラン制裁を決定した欧州連合(EU)外相理事会【2012/1/24】 ●緊張緩和を目指すように「米海軍艦船は長年に亘り湾岸・中東に派遣されてきた」との声明を発表したサラミ・イラン革命防衛隊副司令官【2012/1/24】 ●イランがシリアの原油を販売【2012/1/24】 ●今後の事態に備えてイラン原油に代わる供給先を探し始めたトルコの石油企業【2012/1/24】 |
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| (幹事 畑中美樹<はたなか よしき>) |