イラン原油の輸入停止という最悪時のシナリオへの対応策の検討を開始した南アフリカ
(2012年1月27日掲載)

 輸入原油の約25%をイランに依存する南アフリカが、輸入停止、或いは輸入大幅削減という最悪時のシナリオへの対応策の検討を開始した。南アフリカは過去にも労働者のストライキや製油所の稼働上の問題から燃料不足に陥った経験もあるだけに、最悪の事態への対策にも熱がこもっているようだ。

 ヨハネスブルグで開かれたカーボン金融会議に出席したネルシウェ・マクバネ・エネルギー庁長官は、ロイター通信(2012年1月26日)に次のように語り、万一の事態に備える考えを明らかにした。

我々は最悪の事態に備えようと言っている。
換言すれば、イランから原油が全く入って来ない、或いは、輸入量が大きく落ち込んだ場合、どのようなインパクトがあるのか見極めようとしている。
南アフリカは米国から公式にイラン原油の輸入停止や輸入削減の要請は受けていない。
南アフリカの製油所はイラン原油を取り扱うよう設計されているので、その他原油の取り扱いに変更すれば財政費用が発生する。
製油所がイラン以外の原油を取り扱うよう調整すれば自動車の保有者に財政負担をかけることになろう。
イラン原油の停止や大幅減少時のインパクトを如何に最小化するのかを大統領府及び財務省などと協議することになろう。代替供給源については検討中である。

 実は米国エネルギー省のダニエル・ポネマン長官は、最近、南アフリカを訪問し、石油企業とイラン原油の代替源や価格面での衝撃の起きないよう方策を協議している。この点について駐プレトリア・米大使館のエリザベス・トルデアウ報道官は、2012年1月25日、「我々は石油消費国と新たな制裁への対応や代替供給源の選定で協議している」(ロイター通信 2012年1月26日)と語り、暗に南アフリカとも同様の話し合いを持ったことを認めている。

 ところで南アフリカとイランの経済関係は単に石油の取引に留まらない。両国は電気通信分野や石油化学部門などでも深い繋がりを持っている。例えば、アフリカ大陸で最大の電気通信企業であるMTNグループは、同社の売り上げの約10%をイランで得ている。また石油化学企業のサソール(Sasol)もイランで事業を行っているし、サソール石油も少量(1.2万B/D)とはいえイランで原油生産を行っている。

 こうした事業は何れも米国の経済制裁の対象となり得る。既に、石油化学企業のサソール(Sasol)は、米国やEU、国連の対象となるリスクがあることや米国で上場していることもあってイラン事業を他国に振り返ることも考えているようだ。サソール石油も事業関係者や政府関係者と協議しつつ、供給源の多様化を図ろうとしている。但し、MTNグループだけはリッチ・ムクホンド広報部長が「我が社の操業は通常通りで事業も通常通りである。我々は南アフリカであれ米国であれ、どの国の政府とも会談していないし、どこからも圧力を受けていない」(同上)と語り、平静を装っている。

 南アフリカがアパルトヘイト政策を取っていた時代から続くとされる南アフリカとイランとの石油・経済関係なだけに、同国がイラン原油の輸入を控える動きに出るとすればイランには大きな痛手といえそうだ。

(1月26日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか よしき>)