サーレハ・イエメン大統領の免責法案を国会とオマーン出国後の去就に集まる注目
(2012年1月24日掲載)

 イエメン議会は 2012年1月21日、暫定内閣が1月8日に承認していた、アリ・アブドゥラ・サーレハ大統領及び同大統領の政権に仕えた人物について、過去33年間に犯した罪に関して訴追を免除するとの法案の修正案を可決した。また議会は、同日、アブドゥラッブ・マンスール・ハディ副大統領が2月21日予定される大統領選挙で全党を代表とする候補者となることも決定した。但し、同日可決された修正案は、原案とは異なり、側近を含め大統領の政権に仕えた人物に関しては法的な保護は付与するものの全面的な免責を認める内容とはなっていない。子息たちも大統領と同様の免責措置を受けることになるのか否か、今後の火種となりそうだ。

 ところで全面的な免責を受けることになったサーレハ大統領の今後の動きについては見方が大きく分かれている。同大統領は近々出国後、米国での治療検査を受けた後、隣国オマーンに留まるとの見方と、オマーンから再びイエメンに戻り「国民全体会議」の党首として政治家活動を続けるとの見方が並存しているからだ。

 例えば、首相府の高官は「サーレハ大統領は米国での治療検査後オマーンに戻る」「子息のアフマド・サーレハ氏が現在オマーンで住居の準備をしている」(ロイター通信 2012年1月21日)と発言しオマーン滞在論を展開している。他方、「国民全体会議」の幹部ムハンマド・アル・シャイエフ氏は「サーレハ大統領は数日後にオマーンに行き、その後治療検査のために米国に向かう」「その後、党を率いるためにイエメンに舞い戻る」(同上)と述べイエメン帰国論を主張している。

 尚、免責の妥当性については、イエメンの反政府デモを当初から率いた青年活動家の姿勢も割れている。例えば、抗議運動の指導者となったファイザフ・スレイマン氏は「我々は野党への信頼を喪失した。サーレハ大統領を免責にする法案を可決できるということは、次には我々がデモを行うのを禁止する法案でも可決しうることを意味する。我々若者は、最早野党を信用できない」(同上)と語り、野党がサーレハ大統領の免責法案に賛成したことは裏切り行為と述べ、あくまでも免責を認めるべきでないとの筋論を展開している。但し、同じ青年活動家でも、アブドゥルアジズ・サッカフ氏は「勿論議論の余地はあるところだが、平和的な権力の移行を成功させるには(免責法案の可決は)必要なことであった。自分も原則論としては支持しないが、現実的な理由から支持する」(同上)と述べ、サーレハ大統領を平和裏に退陣させるには望ましくないにせよ不可欠な措置であったとの立場を取っている。

 果たして米国での治療や検査を終えた後、サーレハ大統領が再びイエメンに帰国することになるのか否か。イエメン情勢は一山を超えたとはいえ、まだまだ目を離せそうもなさそうだ。

(1月22日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか よしき>)