イランがシリアの原油を販売
(2012年1月24日掲載)

 2012年1月19日付けの『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙によると、イランがシリアの石油を販売し、その代金がシリアに支払われている。同紙はアメリカ財務省筋の話として以下のように伝えている。シリアから秘かにイランに運ばれた原油が、国際市場へと販売されている。先月には、こうして9万トン以上の原油が市場へ流れた。イランは、ドバイのシー・エンタープライズ社を通じて、ギリシア船主の所有するリベリア船籍のタンカーを傭船し、シリアのバニアス港から石油をイランに運んでいた。この背景にあるのは、昨年秋からの欧米諸国によるシリアの石油の輸入禁止措置である。これによりシリアは、その石油の販路の確保に苦労している。禁輸措置の以前は、シリアは日量10万バレルほどの原油を主としてドイツ、イタリア、フランスなどのヨーロッパ諸国に輸出しており、外貨収入の三分の一を石油輸出から得ていた。現在は、欧州からインドなどへと販路を変更しようとしているようだ。

 また同省によればキプロス経由でロシア製の軍需品がシリアに輸出されている。欧米諸国は、軍需品に関してもシリアに対する輸出を禁止している。欧米諸国は、民衆の抗議行動を弾圧しているシリアとのイランやロシアの密接な関係に対して非難を強めている。両国は、こうした非難に対しシリアとの取引を禁止する国際法は存在しない。欧米のシリアに対する一方的な貿易禁止措置を尊重する義務はないと反発している。

 一方で欧米と大多数のアラブ諸国が協力してシリアを経済的に孤立させようとしている。さらにはシリアでの流血を止めるために軍事介入が必要だとの発言が、たとえばカタールから出ている。逆に他方では、シリアの伝統的な同盟国であるロシアとイランが、アサド政権との関係を維持している。また昨年成立したリビアでの人道的な介入のための安保理決議1973号が、拡大解釈され政権転覆とカダフィの殺害を用意した、との認識をロシアは抱いている。したがってシリアに関しては、ロシアは拒否権を行使して軍事介入を容認する決議の成立を阻止するだろう。さらに欧米においては新たな軍事介入を支持する世論は存在しない。となると、シリアでは民衆と体制の力いっぱいの綱引きが、しばらくは続きそうである。また仮に将来において軍事介入が実行されるにしても、安保理決議抜きの、つまり「国連の錦の御旗」なしの戦いとなるだろう。

(1月21日、記)
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注:関連情報はJAMEEF編集部が付記した。

(評論家 高橋和夫<たかはし かずお>)
http://ameblo.jp/t-kazuo/