緊張緩和を目指すように「米海軍艦船は長年に亘り湾岸・中東に派遣されてきた」との声明を発表したサラミ・イラン革命防衛隊副司令官
(2012年1月24日掲載)

 イランのホセイン・サラミ革命防衛隊副司令官は、2012年1月21日、緊張緩和を目指すように「米海軍艦船は長年に亘り湾岸・中東に派遣されてきた」との声明を発表した。因みに、同日のサラミ革命防衛隊副司令官の発表した声明は「米国の軍艦及び軍用船舶は長年に亘りペルシャ(アラビア)湾及び中東に駐留してきた。米国による新たな艦船の派遣は真新しい問題ではなく、恒久的な存在の一部と理解されるべきものである」(ロイター通信 2012年1月21日)としている。

 このように、同日の声明の内容は、明らかに和解的なものとなっている。恐らく、核開発を巡る交渉で近々合意するだろうとの見方をイランが出したにも関わらず欧州連合(EU)や米国が依然拒否する姿勢を見せているほか、米国防総省が仮にイランによりホルムズ海峡が封鎖されても解除するとの強い姿勢を示したことが関係していそうだ。イランは核交渉を始める用意があると再三表明しているものの、西側諸国は核開発の中核的な諸点についてイランが説明することが保証されねばならないと主張している。尚、イランと安保理常任理事国5カ国にドイツを加えた6カ国との核開発交渉は2011年1月22日にイスタンブールで決裂している(決裂時の双方の言い分については、本論の最後に「参考」として掲載した)。

 周知のように、イラン海軍のサーレヒ長官・提督は、2012年1月3日、次のような強硬な言い回しで米空母ステレスの湾岸地域への復帰を認めないとの立場を鮮明にしていた。

私は米空母がペルシャ湾に戻らないことを推薦し強調する。
イランには同じことを二度警告するとの習慣はない。

 このイラン側の威嚇発言に対してオバマ政権が米空母は湾岸地域に復帰すると明言するとともに、パネッタ米国防長官がホルムズ海峡を封鎖しようとの如何なる行動も一線を越えたものと見なされ必要な対応を生むことになると極めて強い調子で警告していた。

 尚、ホセイン・サラミ革命防衛隊副司令官は、イラン国営通信にイラン暦のバフマン月(1月21日~2月19日)の間に計画済みのイラン革命防衛隊による新たな海軍軍事演習がホルムズ海峡及び湾岸海域で実施されることを確認している。


「参 考」

 トルコのイスタンブールで2011年1月21日、22日の二日に亘り開かれた国連安全保障理事会常任理事国5カ国にドイツを加えた6カ国とイランとの核開発を巡る協議は、実質協議の開始への糸口を見出せないまま終了した。6カ国側の代表を務めたバロネス・アシュトンEU外交安全保障上級代表(外相)は、当時、終了後の記者会見で次のように述べ協議が物別れに終わったことに失望を表明した。

我々は、イランの低濃縮ウランを国外搬出し民生用の核燃料と交換するとの案に関して、詳細且つ建設的な議論を行えるものと考えていた。
しかし、イラン側は、ウラン濃縮の継続と安保理制裁の解除に関する前提条件に我々が同意するまで協議する用意のないことを明らかにした。
だが、こうしたイランの前提条件は協議を進める方法ではない。
我々は実質的な話し合いに入りたいと考えあらゆる努力を払った。
我々は最新版の燃料スワップ計画など前進に向けた実質的な方法をイラン側に提示した。
しかし、これが適わなかったことに失望している。
新たな協議日は予定されていないが、我々の提案は机上に置かれている。
我々の扉は開かれており、我々の電話回線も開かれている。選択はイランの手の中にある。

 他方、イラン側の責任者を務めたサイード・ジャリリ最高安全保障委員会事務局長は、イランの核開発の権利に固執するように、別に開いた記者会見で次のように説明した。

バロネス・アシュトンEU外交安全保障上級代表(外相)との協議から自分が理解するところでは、如何なる協議・協力も核技術を含むイランの権利の尊重を基本とすべきものである。
イランは交渉に前提条件を付けておらず、むしろ6カ国側が前提条件を押し付けようとし、対話ではなく指示しようとした。
イランは前提条件を持ち出したのではなく権利を主張したに過ぎない。
核の平和利用は核拡散防止条約(NPT)において全加盟国に認められた権利である。

 因みに、その時の協議について米国の外交官は匿名を条件に、イランは長く複雑な協議で6カ国の分裂を誘い譲歩を引き出そうとしたが成功しなかったとコメントしていた。裏を返せば、イランは「北朝鮮方式」を狙っていると解することが出来るかもしれない。即ち、時間稼ぎをする間にウラン濃縮を進め、核爆弾を少なくとも一つ製造するのに必要とされる濃縮度に濃縮されたウランを、核爆弾を少なくとも一つ製造するのに必要な数量確保してしまおうとの戦術である。

 果たして、今般緊張の緩和を目指すような発言を行ったイランが、これ以上追い込まれることを避けるために新たに譲歩することになるのか注目される。具体的には、2011年1月下旬の交渉決裂時にバロネス・アシュトンEU外交安全保障上級代表(外相)が主張した「6カ国側がウラン濃縮の継続と安保理制裁の解除に関する前提条件に同意するまでイランには協議する用意はない」との立場を変えて臨んでくることになるのか注視する必要があろう。

(1月22日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか よしき>)