イラン制裁やホルムズ海峡封鎖論を巡る主要国等の動き(米国・ロシア・中国・インド・サウジアラビア・OPEC・NATO)
(2012年1月20日掲載)

<直接交渉の申し出を否定し段階的制裁の発動を弁護するオバマ政権>

 米国のオバマ政府高官は、2012年1月18日、イランのハメネイ最高指導者宛の親書を送ったとの報道についてそのような親書はないと存在そのものを否定した。オバマ政権が親書の存在を否定した理由は、イランのファルス通信が保守派のアリ・モタハリ議員の発言として、米国が二国間秘密交渉を提案してきたと伝えたためである。因みに、同通信は同議員の話として次のように伝えた。

オバマ米大統領は親書の中でイランとの直接交渉を呼びかけてきた。
親書はホルムズ海峡の封鎖は超えてはならない一線と言っていた。
親書の前半部分には脅しが含まれているが、後半部分は対話の申し出が含まれていた。

 さらにオバマ政権の高官は、核開発に関する交渉の準備が進んでいるとのイランの主張についても次のように述べ否定している。イスラエルのメディア向けの席上、エルサレム・ポスト紙の記者から出された質問に答えたもの。

米国は一連の制裁を積極的に履行しようとしているところである。
イランが国際社会の共有する懸念に答えるまで今行っていることは変わらない。
現在行っていることからの後退はない。
我々は、イランと6カ国(国連安保理常任理事国+ドイツ)との核開発交渉の準備が進んでいるとのイランの主張を、制裁が効き始めたとイランが感じている証左と見ている。
米国は、真剣且つ何らの前提条件がないのならば、イランとの交渉はあり得る。

 加えて、同高官はイスラエル国内でオバマ政権が議会の承認した制裁法案の履行に余り積極的ではないとの批判が出ている点についても次のように語り弁護している。

多くの企業や国家が、既に制裁に従いイラン原油の輸入を削減しつつある。
諸外国による重要な動きが近々あるだろう。中国も最近イランからの原油購入量を減らしている。
オバマ政権は制裁法に関する戦術については議会と異なる見解を持つものの目標は同じであり承認されるや直ちに行動に出ている。
米国は原油価格の急騰を防ごうと慎重に対応している。
我々の最大の関心はイラン石油収入の削減である。
我々が積極的だが段階的に制裁をかけているのは、仮に油価が急上昇すればイランを利することになるからだ。


<イランへの軍事攻撃に警告を発したロシア>

 ロシアのラブロフ外相は、2012年1月18日、モスクワで記者団に次のように語り、西側諸国などによるイランへの軍事攻撃に反対する姿勢を改めて強調した。

西側諸国がイランを軍事攻撃すれば大量の難民がイランから生まれるほか、中東の宗派間の緊張の火を煽ることになる。
軍事攻撃は連鎖反応を引き起こし、どのような結末になるのか分からない。
西側諸国による制裁は核拡散防止にはならないばかりか情勢を悪化させる。
イランは6カ国との核開発交渉を行う姿勢を示しつつある。

 尚、単独でイラン軍事攻撃に踏み切るのではないかとの懸念を抱かれるイスラエルのバラク国防相は、同日、そのような決定はまだ先の事であると述べ、直ちにイスラエルがイランを攻撃することはないことを強調した。中東筋は同日のバラク国防相のコメントについて、イスラエルはイランを軍事攻撃しないとの保証を得るためにイスラエルを訪問するデンプシー米統合参謀本部議長を意識した発言と見る。

 オバマ米政権高官やラブロフ・ロシア外相の言及したイランと6カ国との核開発に関する交渉についてイランのアリ・アクバル・サレヒ外相は、トルコ訪問中に記者団に対して、「交渉内容と日時の交渉が進んでおり近いうちに発表できよう」「恐らく会談場所はイスタンブールとなろう」(http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-16613485)と発言している。但し、関係当事国である英外務省は「イランがアシュトンEU外交安保上級代表の親書への回答を出していないので交渉の日時や具体的な計画は出ていない」(同上)と述べ否定している。


<イランの核兵器開発には反対な中国>

 中国の温家宝・首相は、2012年1月18日、訪問中のカタールの首都ドーハで記者会見し、イランの核兵器開発を拒否することを明らかにすると共に、いわゆる「5+1」によるイランとの核開発交渉を支持する姿勢を鮮明にした。因みに、同日の温首相の主な発言は次の通りであった。

中国はイランに関する国連制裁を順守している。
世界の権益を犯すホルムズ海峡での如何なる過激な行動に反対する。
依然中国のイランとの石油取引は正常なものであるので自分は心配していない。

 尚、温家宝首相は、ドーハ滞在中に、カタール・中国投資協力委員会設立協定や森林・砂漠化対策・野生動植物保護覚書、カタール中央銀行・中国人民銀行協力覚書などの調印式にカタールのシェイク・ハマド・ビン・ジャシム・ビン・ジャブール・アル・サーニ首相兼外相と共に参列している。


<米国の除外措置は求めないとするインド>

 インドのランジャン・マサイ外務長官は、2012年1月18日、インドとしては新たなイラン制裁に関して米国から適用除外措置を求めないしイラン原油の購入を続けるとの考えを明らかにした。同日の同長官の主な発言内容は次の通りであった。

インドは国連の決定した制裁を順守している。
その他の制裁が個別国に適用されるものではない。
インドはイラン原油の購入を継続する。
現在イランを訪問中のインド代表団が、現在のトルコのハルクバンク経由の原油代金決済方式に代わる方式を検討中である。

 他方、イラン国営石油公社(NOC)のモフセン・カムサリ国際局長は、イラン石油省上のウェブサイトで次のように言っている。

インドとのビジネスに何ら問題はない。
インドの対イラン支払いは完璧に行われている。
インドからの支払いに関しては何の問題もない。


<脅威にはあらゆる手段で自衛すると発言したトルキ・元サウジ諜報庁長官>

 サウジアラビアのトルキ・アル・フェイサル王子・元サウジ諜報庁長官は、2012年1月17日、バハレーンの首都マナマで開催された湾岸安保に関する会議で講演し、次のように語り、サウジアラビアはイランによる脅威にはあらゆる手段で自衛する考えを明らかにした。

我が国の国営や安保に対する脅威には、それらを守るためにあらゆる選択肢を駆使して防衛することを余儀なくしよう。
懸念の拡大や引き続く緊張は、予期せぬ結果や望まない軍事対決を伴う出来事を引き起こすかもしれない。
イランは、サウジアラビアが国際的な約束について言及したからと言って、この紛争を煽るべきではないし、サウジアラビアを威嚇すべきでもない。
イランはホルムズ海峡及び世界のエネルギー供給の安全を中立にすべきである。
イランは、地域の安保を脅かし外国の介入を招くような異なる政策を採っている。


<イランからホルムズ安保の保証を求める考えのOPEC議長>

 現在OPECの議長を務めるイラクのアブドゥルカリーム・ルアイビ石油相は、2012年1月18日、イランを訪問し、ホルムズ海峡の安全航行に関する保証を求める考えを明らかにした。同日の同議長の主な発言は次の通りであった。

自分は(OPEC議長として)イランに行き、兄弟国イランから世界にとって真に重要な保証を得ようと考えている。
何故ならば、誰もがホルムズ海峡の安全を求め、地域の原油生産・輸出を守りたいと考えているからだ。
そうでなければ、全世界、世界経済に影響が出てしまう。
イラクは石油を政治に使うことには反対だ。
OPECは石油生産と油価の安定を求めている。
(但し、)脅威はイランからだけ来ているわけではない。
EUはイラン禁輸という脅しをかけているので、我々はイランで両方の問題を話し合う意向である。


<石油供給の保証を求めるNATO>

 北大西洋条約機構(NATO)のラスムセン事務局長は、2012年1月18日、ダブトグル・トルコ外相との会談後のブラッセルでの記者会見で次のように語り、ホルムズ海峡経由の石油の流れを確保することを明らかにした。

肝要な海峡からのエネルギー供給を確かなものとするのは最も重要なことである。
私は、イラン政府当局には国際社会の一員として行動する責任のあることを強調したい。
NATOには介入する計画は全くない。

(1月19日、記)
<関連情報>

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(幹事 畑中美樹<はたなか よしき>)