![]() |
||
|
||
| (2011年9月13日掲載) | ||
ニューヨークで9月下旬に始まる国連総会にあわせパレスチナ暫定自治政府が独立国家として国連への加盟申請を行う予定である。パレスチナのアッバス議長は、オバマ政権の誕生以来、米国の仲介によるイスラエルとの和平交渉に期待をかけて来た。だが、これまで何の成果も得られなかった。これからも成果が得られる可能性は薄いと判断して、国際世論に直接訴える戦術に切り替えた。 2月にイスラエルによる占領地への入植活動を非難する安保理決議を米国が拒否権で葬った。この事件などが、パレスチナ側の方針の転換を促したようだ。また5月にミッチェル元上院議員が中東特使の職を辞した。ミッチェルは大リーグの薬物疑惑の調査などで名を馳せた大物政治家で、オバマによって中東特使に任命された。しかし、ミッチェルの2年間の努力にもかかわらず中東和平は停滞したままであった。ミッチェルの辞任はオバマの中東政策の停滞を象徴していた。 国連加盟は、まず安保理で審議される。安保理でパレスチナの加盟を認める決議を成立させるためには、15カ国のメンバーのうちの9カ国以上の賛成と、5常任理事国全ての賛成を必要とする。現在の安保理の構成メンバーは、米国、英国、フランス、ロシア、中国の5常任理事国と、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブラジル、ガボン、レバノン、ナイジェリア、インド、南アフリカ、コロンビア、ドイツ、ポルトガルの10非常任理事国である。恐らく9カ国以上の賛成を得ることは可能であろう。 安保理の常任理事国は、どう投票するだろうか。米国の拒否権が予想される。再選を目指すオバマ大統領は来年の大統領選挙を前にして米国内のイスラエル支持勢力を怒らせるわけには行かない。国内政治的には拒否権しか考えられない。となると決議は不採択となるだろう。 しかし、それでも各国の投票行動が注目される。中国とロシアは賛成するだろう。問題は英仏の動向である。多数のイスラム教徒人口を抱え、中東での経済権益を持つ両国の動向が注目される。米国の拒否権による安保理での決議案の否決後はどうなるのだろうか。 一つの可能性は、この問題についての緊急国連総会の招集である。これには前例がある。1950年の朝鮮戦争の際にソ連の拒否権の連発によって安保理が機能不全となった。ここで緊急の国連総会が召集され国連総会決議377号が圧倒的多数で採択された。通称「平和のための結集決議」と呼ばれるもので、安保理が機能しない場合には、代わって総会が問題を討議するという内容である。当時は国連加盟国の大半がワシントンに協力的な時代であった。その後のアジア・アフリカ諸国の大量加盟により国連総会の構成が変化し、ワシントンの意向が通らなくなった。 さて377号の前例がよみがえるとなると、国連総会での賛成票の獲得が重要になる。パレスチナ側はロビー活動を始めている。アラブ連盟が既にパレスチナの支持を決定している。著名な中東専門家のパトリック・シールによれば、193の加盟国のうちの122カ国は既にパレスチナを承認している。恐らく154カ国が賛成するのではないかとシールは票読みをしている。同氏によれば、現在イスラエルを承認している国家の数が156であるので、ほぼ肩を並べる数字である。 仮に緊急国連総会が召集され、さらにパレスチナ国家の加盟が認められると仮定すると、どうなるだろうか。パレスチナが独立を宣言しようが、国連に加盟しようが、イスラエルが占領を続けているという現実には何の変化もない。 しかし、国際社会での承認はパレスチナ人を大きく勇気付けるだろう。そして現地では大規模な抗議行動が起こるだろう。イスラエルは、パレスチナ人の動きに入植者がいかに対応するべきかとの訓練を既に開始している。秋に入ってもパレスチナには熱気が漂いそうである。 |
||
| (9月8日、記) |
||
| <関連情報> ●イスラエルには一撃でイランの核兵器開発を止める力はない【2011/9/6】 ●リーヒー上院議員が対イスラエル援助の一部凍結を提案【2011/8/26】 ●イスラエル南部での連続襲撃事件を契機に休戦破棄宣言を行ったハマスの軍事部門カッサム部隊と駐イスラエル大使の召還の構えを見せたエジプト【2011/8/23】 ●中東諸国での民主化要求デモなど情勢変化を受けイスラエルに初めて解放軍参謀総長を送った中国政府【2011/8/19】 ●Jストリートの世論調査、米国のユダヤ人は依然としてオバマ支持【2011/7/26】 ●ガザ地区とのラファ検問所の封鎖を緩和したエジプトの暫定政権【2011/5/31】 注:関連情報はJAMEEF編集部が付記した。 |
||
| (評論家 高橋和夫<たかはし かずお>) http://ameblo.jp/t-kazuo/ |