カダフィ軍による南部フェッザン地方での油田や外国人労働者へのゲリラ攻撃の脅威を指摘するリスク管理専門企業(10月17日時点)
(2011年10月20日掲載)

 欧米のリスク管理専門企業が今後のリビア情勢について気になる見方を提示している。仮に、カダフィ軍が最後まで立て籠もっていたシルテなどから駆逐された場合、南部の砂漠地帯であるフェッザン地方で政治家や外国人労働者、石油施設を狙った「ヒット&ラン」のゲリラ攻撃を仕掛けてくる可能性があるとの指摘である。

 例えば、エクスクルーシブ・アナリシス社のフィラス・アビ・アリ・中東北アフリカ予測副部長は「カダフィ大佐の支持者たちは国民の支持を欠いているので、反政府武装闘争を展開することはできまい。しかし、外国人や国民評議会の指導者たちに対する爆弾・暗殺キャンペーンを行う技術力は持っている」(ロイター通信 2011年10月18日)と述べ、要人などを標的とするゲリラ戦を仕掛けてくる可能性を警告する。

 リビアはイタリア植民地時代にゲリラ戦術が駆使された歴史を持つ。仮に、同様の戦術が繰り返されることにでもなれば、復旧・復興に不可欠な外国人労働者や外国人技術者のリビア復帰を遅らせることになるだけに国民評議会にとっても避けたいところである。特に、それぞれが労働組合を抱え社員や従業員の身の安全には気を配らねばならない欧米日の石油をはじめとする各種企業や航空会社にとっては、頭の痛い問題となりかねない。

 リスク管理専門企業として名の通っているグローバル・リスク社は、先週、トリポリへの渡航リスクをそれまでの「高い」から引き下げている。しかし、その同社もリビアの国内各所の評価では「非常に高い(extreme)」を据え置いている。周知のように、その後トリポリの一部地区では国民評議会軍とカダフィ軍との銃撃戦が発生している。加えて、リスクはあっても利益率は高いと見る企業にとっても、上乗せのつく保険費用は別途負担要因となろう。

 リビアの分析者たちが高リスク地域として一様に指摘するのが、2011年9月下旬までカダフィ軍が支配していたサハラ砂漠地帯のフェッザン地方である。同地方にはイタリアEniの巨大油田エレファントやスペインのレプソルのシャララ油田がある。因みに、これらの油田の産油量は約33万B/Dと内戦前の全生産量のほぼ5分の1を占める。フェッザン地方の石油地帯は、リビアの石油産業への影響力の観点から言えば相対的に安全の確保されているシルト油田地帯に比べて小さいかもしれない。しかし、それでも同地方の油田へのゲリラ攻撃がリビアの産油量の回復を遅らせることは確かである。

 コントロール・リスク社のヘンリー・スミス氏は次のように指摘する(ロイター通信 2011年10月18日)。

フェッザン地方(の各種施設)は遊弋する武装勢力には容易な標的となる。彼らはさっと攻撃して後背地の砂漠に消えることが出来る。
最も脆弱なのはガダミス、セブハとガトの間に広がるウバリ砂丘であろう。
同地帯を知る人は、中央政府の治安部隊のいない同地での警戒は極めて困難と言うだろう。

 加えて、エクスクルーシブ・アナリシス社のフィラス・アビ・アリ・中東北アフリカ予測副部長は、「石油労働者に対するヒット&ラン攻撃や掘削施設の爆破、ウバリ及びムルズク石油地域に人員や設備を輸送する航空機への攻撃など高いリスクがある」(ロイター通信 2011年10月18日)と具体的に指摘している。特に、内戦の過程で、数千以上の肩掛け式の地対空ミサイルが行方不明となったと伝えられるだけに航空機への攻撃は懸念される。

(10月18日、記)
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(幹事 畑中美樹<はたなか よしき>)