イラン攻撃の可能性を否定するイスラエルの平和活動家アブネリ氏
(2011年11月8日掲載)

 イスラエルのイラン攻撃が近づいているとの議論が高まっている。これに対してイスラエルの平和活動家のウリ・アブネリが、その可能性は無いと断言している。

 その理由は、まずアメリカが反対している。イスラエルはアメリカの承認無しには戦争を戦えない。戦争においては、アメリカからの兵器の補給が必要となるからである。1956年のスエズ危機つまり第二次中東戦争以来、イスラエルは、アメリカの承認なしには、本当の戦争は一度も始めていない。

 アメリカがイスラエルのイラン攻撃に反対する理由の一つは、ペルシア湾の出入り口であるホルムズ海峡の封鎖の可能性である。もしイスラエルがイランを攻撃すれば、この海峡をイランは直ちに封鎖するだろう。わずか35キロメートルの幅の水路なので、イランはミサイルによってタンカーの航行を簡単に阻止できるだろう。海峡が封鎖されてペルシア湾岸の石油と天燃ガスが止まれば、世界の経済への打撃は想像を絶するだろう。そして、海峡を実力で開くとなると陸上部隊の投入が必要となる。アメリカにも他のNATO諸国にも、そうした用意は無い。

 そしてイランからの、ハマスからの、ヘズボッラーからのミサイルがイスラエルに降り注ぐだろう。これは止めようが無い。イスラエルの軍や諜報機関の長が一致して戦争に反対しているはずである。

 それでは、なぜ戦争の可能性の高まりにイスラエルの政治家たちが言及しているのだろうか。それは国内的な理由からだ。その理由とは、若者たちの抗議運動である。2011年10月30日の日曜日に、テルアビブで抗議集会が開かれた。多数の人々がラビン広場を埋めた。その大半が若者たちであった。抗議の対象は、住宅難や物価問題であった。この日、過去2ヵ月間は低調であった抗議運動が息を吹き返した。イスラエルのメディアは、抗議集会への参加者を2万人と報道したが、実際には10万人が集まった。

 抗議に答えるためには予算が必要である。予算の出所は、超保守のユダヤ教徒への補助金の削減、あるいは入植地の建設の凍結、もしくは軍事予算の削減しかない。いずれも現政権には政治的に困難である。となればイランの核の危機をあおり、戦争の可能性の高まりを話題にし、社会問題は後回しにならざるを得ないとの世論を醸成する必要がある。イランのアフマドネジャド大統領がイスラエルのネタニヤフ首相の連立政権の救世主的な役割を演じている。とアブネリは分析している。

 なおアブネリは、アラファトと最初に会談したイスラエルの政治家として知られている。

(11月7日、記)
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注:関連情報はJAMEEF]編集部が付記した。

(評論家 高橋和夫<たかはし かずお>)
http://ameblo.jp/t-kazuo/