反政府側の勢いがやや戻るなかNATOの空爆でカダフィ大佐の子息の1人と3人の孫が死亡したリビア(5月1日時点)
(2011年5月2日掲載)

<NATOの空爆でカダフィ大佐の子息の1人と3人の孫が死亡>


 リビア政府のムスタファ・イブラヒム報道官は、2011年5月1日の記者会見で次のように語り、前日の4月30日にNATOの実施した空爆でカダフィ大佐の子息の1人であるサイフ・アル・アラビ・ムアンマル・カダフィ氏(29歳、6男)と3人の孫が死亡したことを明らかにした。

NATOの空爆によりカダフィ大佐の子息の1人であるサイフ・アル・アラビ・ムアンマル・カダフィ氏(29歳、6男)と3人の孫が死亡した。
カダフィ大佐自身と妻女は無事であった。
この攻撃はリビアの指導者の暗殺を直接目指した作戦であった。
我々は世界が今回の空爆を注意深く見ることを望みたい。何故ならば、我々は今、ジャングルの法則に直面しているからだ。
この空爆がどのようにして民間人の保護につながるのか。サイフ・アル・アラビ・ムアンマル・カダフィ氏は、民間人であり、学生であった。
同氏は爆撃された時、両親や甥や姪、訪問者らと話をしていただけであり、何ら罪を犯していなかった。
我々は、交渉の用意、和平への行程表の用意、政治的暫定期間の用意、選挙の用意、国民投票の用意のあることを再び宣言する。
NATOは我々の約束を試そうとしていない。西側諸国は我々の声明を試す気がない。西側諸国は、我々から自由と富、それは石油であり、リビア国民として未来を決める権利を奪うことにのみ関心がある。

 他方、NATOの作戦責任者であるカナダ人のチャールズ・ブチャード准将は、次のように語り、空爆は民間人の保護を目的としたものであることを強調している。

標的はカダフィ軍の作戦立案や民間人攻撃能力を損なうとの戦略に沿ったものである。
NATOの攻撃目標は全て軍事的なものであり、明らかにカダフィ軍による民間人攻撃と関係している。
我々は民間人を攻撃目標としていない。
カダフィ大佐の親族が死亡したとの未確認の報道を聞いている。
我々は全ての生命の喪失、特に無垢な人々が被害を負うことを遺憾に思っている。


<停戦を口にしたカダフィ大佐>

 カダフィ大佐のテレビ向けの演説が2011年4月30日、午後2時30分から約45分間に亘り放映され、その中で、次のように述べ停戦の用意のあることを改めて表明した。

フランス、イタリア、英国、米国よ、やって来い。我々は諸君と交渉しよう。
諸君は私が自国民を殺害していると嘘を言っている。
我々に死骸を見せて欲しい。
我々は停戦を歓迎しているが、十字軍のNATOは攻撃を停止しない。
リビアは今でも停戦に入る用意があるが、停戦は一方だけでは出来ない。
誰も私に出国を強要できない。
私は自国を去らないし、誰も私に強要できない。
誰も私に祖国のために戦うなとは言えない。

 このカダフィ大佐の提案に対して暫定国民評議会のゴーガ副委員長は、カダフィ大佐は人権を侵害し、国際法を破り、リビア国民と地域の安全と安保を犯すことを続けるために停戦を口にしているだけであると述べ、拒否する姿勢を明確にしている。またNATOも、カダフィ政権による市民弾圧の恐れの消えるまで作戦を続けると語り同様に停戦を拒否している。


<ミスラタ港の封鎖を狙うカダフィ軍と食糧調達に苦労する国民評議会>

 リビア政府のムスタファ・イブラヒム報道官は、2011年4月29日、次のように語り、反政府側が海路で武器類を補給しているとして封鎖を目指す考えを明らかにした。

ミスラタに対する海路での支援物資の搬入は今後認めない。
代わりに、援助機関は陸路を使用せねばならない。
ミスラタ市の反政府軍が武器類を捨てて降伏するために4日間の猶予期間を与える。
反政府軍が戦闘を続けるならば、猛攻を受けることになろう。
反政府軍がベンガジから海路で武器類の支援を得ていた。
我々は反政府軍に海路で武器類が搬入されることを許さない。
ミスラタ港への入港は、いかなる理由があっても攻撃される。

 尚、NATOのロブ・ウェイギル作戦部長は、次のように語り、カダフィ軍によるミスラタ港への機雷の敷設を防いだことを明らかにしている。

多国籍軍は、カダフィ軍によるミスラタ港沖合い2~3kmでの機雷の敷設を防止した。
カダフィ軍による機雷敷設の試みは、政権側が国際法を完全に無視し、人道物資の供給努力を攻撃しようとしていることを示すものだ。

 ところで、リビアでの紛争が長期化するなか、暫定国民評議会にとって食糧の調達が新たな課題として浮上している。暫定国民評議会に十分な資金的な裏づけがないことや輸出時の付保面で不安のあることなどから、食糧トレーダーが輸出に二の足を踏んでいるためである。世界食糧プログラム(WFP)の最近の現地調査によれば、今のペースで消費が進めば食糧在庫は2ヶ月で底をつくという。暫定国民評議会向けの食料品の輸出について、欧州のトレーダーや食糧アナリストは次のような見方をしている。

支払いが必ず行われるのか否か不安があるので輸出しない。
暫定国民評議会が食糧購入に不慣れなことも輸出を難しくしている。
通常、食糧輸入でも前払い金は要るが彼らはこれを拒んでいる。
或いは、輸出側の懸念を払拭させたければ、暫定国民評議会が傭船し現地で購入して自ら船積みするという方法を取ればよい。
しかし、どちらの方法も嫌がっている。
暫定国民評議会は国際金融にも疎い。
暫定国民評議会は国際金融にも疎い。
リビア向けの船舶に保険が中々かけられないことも障害となっている。
国連制裁による武器禁輸での監視も海上輸送を難しくしている。


<停戦を後押しするアルジェリアとNATO地上軍の派遣を予測するロシア>

 アルジェリアのムラード・メデレイ外相が、2011年4月27日、28日と同国のリビア危機に対する姿勢を改めて説明し、基本的にアフリカ連合による停戦工作を支持することを明らかにした。

 まず、4月27日、スメイルー・ブーベイエ・マイガ・マリ外相との会談後、記者団に次のように語った。

リビア危機の解決に向けたAUの調停努力は、リビアの問題に対して友好的なものであり信頼性を示すものである。
アフリカはこの問題で正しい方向に向かっている。
リビア問題に関するAUと外国諸国との議論が数日中に実を結ぶことを期待したい。
我々のリビア政府及び反政府側との協議は、危機の克服を目指すものである。
AUの調停努力が最初から機会を与えられれば平和的な解決をもたらしていたであろう。
カダフィ大佐の出国をリビア危機の終結の前提条件とすべきではない。
カダフィ大佐の出国は数ある中の可能性の一つであり、国民が選択すべき問題である。
アルジェリアはリビア国民の意思を尊重する。

 同相は、翌4月28日には、エル・チュルーク紙に自国の姿勢を語っている。

他国に支援されるベンガジの暫定国民評議会は、リビア危機でのアルジェリアの外交的な立場を変えようと努めていた。
我が国はリビア危機の早期解決を模索するAUによる調停努力を完全に支持している。
AUはリビアの双方と交渉している唯一の機関である。
これまで暫定国民評議会が混乱し現実をゆがめてきたが、リビア危機は狭い見方を離れて解決されねばならない。
現実は、関係者がリビアでの暴力を煽っており、その他の者は和平のために動いているということだ。アルジェリアは後者の範疇に属する。
外国の中にはリビア危機に乗じて同国を分裂させようとする者がいる。アルジェリアは如何なる外部勢力の干渉も拒否する。

 また、ロシアのラブロフ外相は、2011年4月30日、ロシア・プレスに対して、NATO及び一部の欧州諸国が地上軍の派遣を計画していると語り警告を発した。

我が国のチャネルにより得た情報によれば、NATOとEUは同様の計画を立案中である。
自分の理解するところでは、その計画では、EUは人道目的での軍の派遣を計画している。
しかし、国連安保理で規定されない限りNATO軍の派遣があってはならない。
仮に誰かがそのような考えを持っているのならば、国連安保理で提案すべきである。
そうすればロシアも議論に加わり、地上で何を行おうとしているのかを理解できるだろう。

(5月1日、記)
<関連情報>

リビア危機の長期化に備える米英と多国籍軍の爆撃の在り方を批判するロシア(4月26日時点)【2011/4/28】

リビア政府軍の活動抑制へ同国向け石油製品の供給の阻止を検討しはじめた英国と米国(4月26日時点)【2011/4/28】

政治的・軍事的こう着状態を打開すべく対リビア戦術を変更した北大西洋条約機構(NATO)(4月25日時点)【2011/4/28】

ユニークなリビアの「朝鮮半島化」論とモロッコ・エジプト・クウェイトの動き(4月24日時点)【2011/4/26】

リビアでの軍事作戦に無人攻撃機プレデターの投入を承認したオバマ米大統領と第三の都市ミスラタから撤退したカダフィ政府軍(4月23日時点)【2011/4/26】

英国と同じように最終的にはリビア反政府側に軍将校の派遣を決定したフランスとイタリア(4月20日時点)【2011/4/22】

軍事面での手詰まり感が高まるなかリビア反政府側に軍将校を派遣する英国と派遣を逡巡するフランス(4月19日時点)【2011/4/21】

戦闘がこう着状態に陥りつつあるなかカダフィ大佐の国外脱出による外交解決の可能性も出始めたリビア情勢(4月17日時点)【2011/4/19】

一時的な財政支援の仕組みの必要性等で合意したカタールで開催のリビアの反体制派を後押しする「連絡調整グループ」の第一回会合 【2011/4/15】

リビアからの石油輸出と同国への石油製品の供給に関与したことを公式に認めたカタール(4月12日時点)【2011/4/15】

アフリカ連合(AU)特別委員会代表団の仲介案を拒否したリビア反体制派の国民評議会(4月11日時点)【2011/4/15】

仲介案を手にリビアを訪問中のズマ・南アフリカ大統領を団長とするアフリカ連合(AU)特別委員会の代表団(4月10日時点)【2011/4/12】

反体制派による100万バレルの石油輸出は成功したものの政府軍の攻撃で東部の油田の生産が停止したリビア(4月7日時点)【2011/4/12】

軍事的には手詰まり状態に陥るなか反体制派に対する新支援策とトルコによる停戦の行方が当面の焦点のリビア情勢(4月7日時点)【2011/4/12】

軍事から外交に焦点が移行してきたリビア・カダフィ政権と反体制派の戦い(4月6日時点)【2011/4/8】

反政府デモによる中断後初の原油輸出を試みるベンガジのリビア反体制派勢力(4月5日時点)【2011/4/8】

固有名詞は挙げずに指導者の交代は不可避とインタビューで発言したリビアのシュクリ・ガーネム国営石油会社(NOC)総裁【2011/4/8】

カダフィ大佐の退陣を含む停戦案を巡り推進派と反対派に分裂する子息たち(4月5日時点)【2011/4/8】

(幹事 畑中 美樹<はたなか よしき>)