停戦に向け微妙な駆け引きを行うリビアのカダフィ政権とベンガジの暫定国民評議会(6月26日時点)
(2011年6月28日掲載)

 2011年2月17日の政府軍による一般市民への武力弾圧から4カ月強、3月19日の多国籍軍による空爆開始から3カ月強を経過して、リビアではいよいよ停戦に向けた微妙な駆け引きが行われる段階に入ったようだ。カダフィ政権、暫定国民評議会や仲介を行うアフリカ連合等がそれぞれ政治解決に関する見方を表明しつつ、政府側と反政府側がお互いに相手を牽制する発言をしているからである。以下では、こうした発言等の紹介を通じて現時点のリビア情勢を描写してみることとする。


ゴーガ暫定国民評議会副議長:「近々、カダフィ提案があろう」

 アブデル・ハーフィズ・ゴーガ暫定国民評議会副議長は、2011年6月25日、ベンガジで次のように語り、近々、カダフィ大佐から内戦終結につながる提案があるとの見方を示した。

我々は、近々、カダフィ大佐から内戦終結につながる提案があると期待している。
カダフィ大佐は息をすることが出来なくなっている(注:追いつめられているとの意味)。
我々は人命を守りたいので、出来る限り早期に戦いを終えたい。
我々は常にカダフィ大佐に出口を用意してきた。
暫定国民評議会は、フランスおよび南アフリカとの接触を通じて、この提案がトリポリの政府により準備されると理解している。
これら諸国はカダフィ大佐により暫定国民評議会に提案を行う諸国として選択された国々である。
但し、今のところまだ何も受け取っていない。
如何なる提案でも、カダフィ大佐、同政権、側近たちが権力の座に留まらないものである限り、もたらされたものは真剣に検討する。


ムーサ・イブラヒム・リビア政府報道官:「カダフィ去就は国民選挙で」

 リビア政府のムーサ・イブラヒム報道官は、2011年6月26日、次のように述べ、カダフィ大佐が退陣するか否かは国民投票で決めるべきとの従来の案を再提起した。

リビア政府は、一定期間内での国民対話及び国連及びアフリカ連合(AU)の監視する選挙を提案する。
国民がカダフィ大佐は退陣すべきというのであれば退陣するし、残るべきというのであれば残留する。
但し、何が起ころうともカダフィ大佐が国外に脱出することはない。
カダフィ大佐はどこにも行かず、このリビア国内に留まる。

 国民選挙を行うとの考えは6月初めにセイフ・イスラム氏により提案されたが、バグダディ・マフムーディ首相及び暫定国民評議会、米国により拒否された形となっていた。今回、ムーサ・イブラヒム報道官が国民投票案を持ち出したことについて多くのアナリストは、NATO間に生じた亀裂の拡大を狙ったものではないかと推察している。


アフリカ連合・リビア特別委員会声明:「カダフィ大佐は交渉に参加しない」

 南アフリカのプレトリアで開催したアフリカ連合(AU)リビア特別委員会は、2011年6月26日、終了後声明を発表し、カダフィ大佐が交渉過程に加わらないとの決断を歓迎することを明らかにした。尚、南アフリカのジャコブ・ズーマ大統領の発言及び同委員会の声明の主な内容は、次の通りである。

国連決議の目的はリビア国民の保護であるのだから、NATOによる継続的な空爆に懸念を抱いている(ズーマ大統領によるリビア特別委員会での発言)。
決議の目的は、体制変革でも政治的暗殺でもなかった(同上)。
政治解決のみが現在の紛争の継続的な解決を可能にする(リビア特別委員会声明から)
人道援助を可能にするためにNATO空爆の一時的停止を要請する(同上)。
爆撃により市民の人命が奪われ、市民のインフラが被害を受けている(同上)。

 周知のように、アフリカ連合(AU)リビア特別委員会は、モーリタニア、コンゴ民主共和国、マリ、ウガンダ、南アフリカの代表で構成される。


和平交渉を巡る他関係者の発言:「カダフィ国外脱出は前提条件」等

 暫定国民評議会のジャラール・エル・ガラール報道官は、次のように述べ、カダフィ大佐の国外脱出が和平の条件と言明した。

① 和平交渉の開始前にカダフィ大佐は国外に去らねばならない。
② カダフィ大佐が国内に残る案は解決案ではない。
③ カダフィ政権とは、直接、間接を問わずまったく交渉していない。

 アラブ連盟のアフマド・ビン・ハリ副事務総長は、アアウサット紙で次のように語り、政治解決案が進行中であることを示唆した。
アラブ連盟、国連、アフリカ連合(AU)、イスラム諸国会議機構(OIC)にエジプト、アルジェリア政府を加えた政治案が進行しつつある。

 また国連のバン・キムーン事務総長も次のように述べ、政治解決に努めていることを示唆した。

自分はカダフィ大佐との対話を拡大しようとしている。
同時に、現時点で重要なのは、リビアが前提条件抜きに、しかも立証可能な方法で戦闘を停止し市民の殺害を止めることである。
そうすれば多くの市民向けの人道援助が可能となる。
そうなれば政治対話を進めることもできる。
数カ国が暫定国民評議会を承認しているのだから、直ちに対話を開始すべきである。


西部山岳地帯で前進する反政府軍:「西部からトリポリへの進攻に注力する」

 リビアの反政府軍は、2011年6月上旬、それまで押し込まれていた首都トリポリ西方のナフサ山岳地帯から抜け出し平野部に進攻することに成功しており、じりじりと西方から首都トリポリに攻め込もうとしている。しかし、カダフィ政府軍もここに来て反撃を始めており激戦が展開されている。

 この点について、反政府軍のジャラール・アル・ドゥグヘリ国防相は、次のように説明している。

反政府軍の武器類に限りがあるので、西部山岳地帯から首都トリポリに迫る作戦を採っている。
但し、近い将来、東部のベルガ近郊からもトリポリに向けて進軍する予定である。
離反者からの情報により、1)カダフィ支持者が次第に減少している、2)カダフィ側近もカダフィ大佐を見限り始めている、3)カダフィ大佐のインナー・サークルも日ごと縮小している、ことが判明した。


暫定国民評議会委員の証言:「トリポリの地下組織と緊密に連絡している」

 ベンガジの暫定国民評議会委員は、次のように語り、トリポリの反カダフィ地下組織と緊密に連絡をとっていることを明らかにした。

我々は彼らと政権の崩壊について秘密裡に協議している。
協議はスカイプや衛星電話を使って行われている。
NATOの空爆の効果が上がっており、トリポリの士気は低下している。
我々はトリポリの地下組織をカダフィ追放戦略に取り込もうとしている。
我々は自分たち暫定委員会の5人を「トリポリ・ファイブ」と呼んでおり、毎晩トリポリの100人超と連絡を取っている。
我々はカダフィ政権の監視を回避する方法を見つけた。

 暫定国民評議会のアルアミン・ベルハジ委員は、これまで逮捕者がでていないことからもスカイプや衛星電話を使った連絡は安全であると強調している。同委員はかつては禁止されていたリビア・モスレム同胞団の一員で30年に亘り反カダフィ闘争に加わってきた人物である。一時は英国のマンチャスターに海外亡命していた。

我々は毎晩約1時間協議する。
このネットワークは社会のあらゆる階層を含んでいる。
彼らは自分たちの友人の考えやモスクでの説教の様子や道路での平素の状況等を伝えてくれる。
我々は地下運動の経験を豊富に持っている。過去30年間、当局による侵攻を許したことはない。
彼らの話では、街中を監視する親カダフィ兵が減少しているし、役所では上層部がいなくなっている。
我々はトリポリで反政府蜂起が起きると100%信じている。問題はその時期である。
我々は、カダフィ軍の兵力が減少しているので、南部・西部・東部からの進攻と首都トリポリでの蜂起を一斉に行おうことを計画している。
但し、我々はカダフィ大佐がいざとなれば何かとんでもないことを仕掛けてくると見る。
カダフィ大佐が権力を喪失した場合の最悪のシナリオに備えておかねばならない。
それ故、我々は専門職やテクノクラート、特に警察と軍の士官に接触している。彼らは依然カダフィに忠実の素振りをしているが、密かにいざとなれば離反し反政府側につくと言ってきている。
これこそ、彼らが我々に示してくれた明白なメッセージである。
こうした人たちは、暫定国民評議会は何をしているのかと質問し始めている。


ポスト・カダフィの準備を行う英国等:「イラクの二の舞は避けねばならない」

 英国、米国、イタリア、トルコ等の外交官等が、過去数週間に亘りベンガジで、暫定国民評議会の指導部たちとポスト・カダフィのシナリオに関する議論を続けている。法と秩序の維持や石油生産の再開、停戦監視のための平和維持軍の派遣、市民社会の諸組織の開発等に関する草案が、既に過去1カ月の間に策定されている。

 こうした協議に関係する外交筋は、匿名を条件に、我々は過去の紛争から教訓を得たのでリビア国民のための準備を始めており英国が中心役を果たしていると述べている。英国のキャメロン首相もEUサミットの開かれたブラッセルで、1)我々は暫定国民評議会を真に支援していることを示さねばならない、2)彼らは過激主義者でもイスラム主義者でも部族主義者でもないことを立証していると思う、3)彼らが望むのは統一されたリビア、より民主的なリビアである、と発言し国際社会がさらに暫定国民評議会を支援する必要性を訴えていた。

(6月27日、記)
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