モサド前長官が対イラン武力行使に再度の警告
(2011年6月7日掲載)

 2011年6月1日付けのイスラエルの『ハーレツ』紙のインターネット版によると、同日にテルアビブで開かれた会議で昨年9月に引退した前のモサドの長官のメア・ダガンが、対イラン攻撃に反対の意見を述べた。ダガンのイラン攻撃への反対は既に良く知られている。先月も「イスラエル空軍によるイランの核施設爆撃は、これまで聞いた話の中で一番馬鹿げている」との発言がメディアに流れた。

 この会議での発言の要旨は;

対イラン攻撃が引き起こす戦争にイスラエルは耐えられない。
イスラエル軍にはイランの核開発を遅らせる能力はあるが、止めることはできない。
もし戦争に引き込まれれば、イスラエルは戦争から抜け出す手段を持ってい
ない。
軍事力の行使は最後の選択であり、他の全ての手段が、まず尽くされるべき
である。
モサド前長官が引退から間のない時期に公に発言することに対する批判に対しては、首相と国防相が担当する問題ではあるが、発言する義務を覚えている。選挙で選ばれたかどうかと、賢明な判断と決断ができるかは関係がない。
停滞している中東和平問題に関しては、イスラエルは積極的に主導権を取って問題の解決に動くべきである。パレスチナ人は存在し、パレスチナ人との合意は不可欠である。でなければ、将来には、より不利な状況となり、その結果をイスラエルは受け入れざるを得なくなるだろう。押し付けられるよりは、積極的な動きが望ましい。
最近のファタハとハマスの和解に関しては、状況を見極めるためには、しばらく時間が必要であろう。

 イスラエルのネタニヤフ首相は、イランの核兵器開発はユダヤ人国家の生存を脅かすと論じ、その阻止のためには全ての手段を行使すると繰り返してきた。つまり軍事力に訴える選択をも排除しない方針を明らかにしてきた。

 そうした政府の方針がある中での、前長官の公の場での発言の真意は何か。イスラエル政府の戦争への準備にダガン前長官が本当に懸念を抱いており、公然と政府を批判する異例とも言える発言となったのか。あるいは、イランを油断させるための手の込んだ陽動作戦なのか。

 紹介するまでもなくモサドはイスラエルの対外諜報機関で、その「活躍」は伝説的でさえある。ダガンは、2002年にタカ派のシャロン首相に任命されて以来、8年間にわたりモサド長官の要職にあった。2007年のシリアの原子炉の爆撃、2008年のドバイでのハマス幹部の暗殺などは、ダガンの在任中の事件である。こうした「武勇伝」の人ダガンの警告の意味は何か。様々な憶測を引き起こしている。

(6月3日、記)
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注:関連情報はJAMEEF編集部が付記した。

(評論家 高橋和夫<たかはし かずお>)
http://ameblo.jp/t-kazuo/