8月1日からのラマダン(断食)を前に軍事と外交の両面で立場の強化を目指すカダフィ政権と暫定国民評議会(7月9日時点)
(2011年7月12日掲載)

東部・南西部の2戦線で徐々に進軍する反政府派

 リビアのカダフィ政権も暫定国民評議会も、8月1日からのラマダン(断食)を前に軍事と外交の両面で立場の強化を目指す動きを見せている。こうした中、リビアの反政府派が、徐々にではあるものの東部・南西部の2戦線で進軍を始めている。反政府軍は2011年7月6日、6時間に及ぶ戦闘の末、首都トリポリ南西約100kmのアル・カワリシュ村を占拠した。また西部戦線ではミスタラから進軍しズリタンの手前13kmまで勢力下に治めている。

 反政府軍はアル・カワリシュ村を占拠したことで、今後は首都トリポリに向かう高速道路を押さえる位置にあるガルヤンの町を目指すことになる。アル・カワリシュ村への進攻を指揮した反政府軍のマクタル・ラクデル司令官は、7月6日、1週間以内にもトリポリ南西50kmのガルヤン攻略作戦を開始すると語っている。また首都トリポリから東方約200kmのミスラタから進軍する反政府軍の司令官は、20km前進したのだが政府軍の激しい砲撃を受けて7km後退を余儀なくされたことを明らかにし、政府軍も必死の抵抗を行っていることを明らかにした。

 尚、両戦線での前進が見られたこともあってか、リビア政府のハーリド・カイム副外相は、7月6日、決定的な後退を余儀なくされる前に話し合い停戦に持ち込みたいとの思惑からか、ロイター通信とのインタビューで、「ラマダンの始まる8月上旬には紛争の解決策が見出せるのではないか」(ロイター通信 2011年7月6日)と述べ停戦の可能性もあることを示唆している。


NATOにとって頭痛の種のラマダン(断食)期間中の攻撃

 西側外交筋は最近のリビア反政府派の軍事的進攻を讃えながらも、反政府軍が7月前半までに軍事的に大きな突破に成功しないとラマダン中には兵站上の問題を抱えることになると指摘している。特に、NATO諸国は、イスラム教徒にとって神聖な月であるラマダン期間中の軍事攻撃をどうすべきかの悩みを抱えている。

 英国政府はリビア国民を保護するのはラマダン中の攻撃も必要と考えているが、同時に、暫定国民評議会やイスラム諸国会議機構のお墨付きがあることが望ましいと見ている。他方、暫定国民評議会を支援する同じアラブのUAEやカタールは、イラク戦争やアフガン戦争の時にはラマダン中も戦闘が続けられた例を挙げ、結局、NATOはラマダン中も攻撃の手を緩めないと見ている。

 但し、NATOでもイタリアのベルルスコーニ首相は、ここに来て対リビア姿勢を大きく変えつつある。因みに、同首相は7月6日、次のように語り、元々対リビア武力行使には反対であったと発言している。

① 自分は武力行使には反対であった。
② しかし、自分の両手は議会の投票により縛られてしまった。
③ 自分は、攻撃に反対であったし、今も反対である。
④ こうした介入がどのように終わるのかは誰にも分からない。


トルコ・UAE・NATO・EUと協議する暫定国民評議会

 トルコのダブトグル外相、UAEのシェイク・アブドゥラ外相と暫定国民評議会のジブリール首相級が、7月5日、トルコの首都アンカラでリビア情勢について協議するため会談した。この会談を提唱したUAEのシェイク・アブドゥラ外相は、トルコのダブトグル外相との共同記者会見で次のように語った。

我々はリビア紛争の政治的解決策について協議した。
また7月中旬、イスタンブールで開催される「連絡調整グループ」の議題についても協議した。
イスタンブール会議は、カダフィ大佐に対して国民の声に耳を傾け退陣し、リビア危機に突破を与えるために子息とリビアを立ち去るべきとの明確なシグナルを与える必要がある。
カダフィ大佐が国民の真の指導者ならば、世界に対してリビアのために犠牲になりうることを示さねばならない。

 またトルコのダブトグル外相は次のように語った。

連絡調整グループの会合は、リビア及びリビア国民の将来の安全を確保するとの国際社会の意思を反映している。
イスタンブール会議では、流血を止めるためにトルコ案を含む共通の政治解決案が出ることを願いたい。
トルコは2011年4月、停戦と政治プロセスの行程表を明らかにしている。

 暫定国民評議会のジブリール首相級は、7月13日にはブリュッセルでNATO理事会に出席しリビア情勢に関して非公式協議を行うほか、同日には、EUのファンロンパイ議長や欧州委員会のバローゾ委員長等の指導者ともリビア情勢について協議することとなっている。

 NATO批判を繰り返すカダフィ大佐と和平退陣を疑問視する一部反体制派
リビアのカダフィ大佐は、2011年7月8日、録音された演説をテレビで流し、次のような言い回しで退陣に言及するNATO諸国を批判した。

大衆の敵は行進を行う大衆に足蹴にされるだろう。
協力者や裏切り者は崩れ落ち、NATOは自由なリビア大衆の足の下に崩れ落ちるだろう。
リビアの政権は人民を基盤としているので崩れはしない。
NATOはリビアの政権を転覆できると考えているとすれば間違っている。
我々の唯一の選択は抵抗である。
我々は諸君の戦争マシーンを恐れはしない。
リビア国民は進んで欧州に向かい自殺も厭わないであろう。
我々は死を愛し殉教を愛している。
数万、数十万のリビア人が欧州で死ぬことを厭わないであろう。我々は、彼らが我々を襲ったように、彼らの家を、女性を、子供を襲う。

 また首都トリポリのグリーン広場に設営されたテントで演説した宗教指導者(イマーム)は、次のように語り、国民同士の戦いを止めるよう訴えた。

① リビア国民は相互の戦闘をやめるべきだ。
② 西側諸国は石油が欲しいのでリビア内政に干渉した。
③ NATOに勝利するよう祈ろうではないか。
④ 神はNATOをリビアに引き入れた人々を罰するだろう。

 ところでリビア西部の山岳地帯に陣取る反政府派は、次のように語り、カダフィ大佐が退陣に同意するとは見ていないことを明らかにした。

自分は先月カダフィ軍から離反したが、カダフィ軍は崩壊しないだろう。
仮に反政府軍がトリポリに侵攻しえても、弾薬・兵士・武器類の不足から制圧することはないだろう。
あるとすれば、反政府軍がトリポリに及ぶと同時に市内の反政府勢力が立ち上がり解放することである。
反政府軍が組織立った侵攻をしないと市民に多大な犠牲が生じることになる。
自分の仲間の兵士も離反したがっているが、彼らの家族のその後の身の安全を考えて留まっている。

(7月10日、記)
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(幹事 畑中 美樹<はたなか よしき>)