アフリカ連合(AU)の調停案を基礎に話し合い解決の可能性が出て来たリビア情勢(7月3日時点)
(2011年7月5日掲載)

<話し合い解決の基礎となりそうなアフリカ連合(AU)の調停案>

 アフリカ連合(AU)は2011年6月30日、7月1日の二日間、赤道ギニアの首都マラボで第17回アフリカ連合(AU)首脳会議を開催し、公式に出席したカダフィ政権側と賓客扱いで出席した暫定国民評議会側を含めてリビア危機の解決策について協議した。AU首脳会議は、フランスによる反体制派への武器供与についてアル・カイダ系組織に手に渡る恐れがあるとの警告を発したほか、国際刑事裁判所(ICC)によるカダフィ大佐を含む3人への逮捕状の発行についても、平和的な解決が目指されているリビア情勢を複雑にするだけであるとしてAUとしては受け入れないことを明らかにした、

 また、今回のAU会議は、2011年7月1日、リビア危機の解決を目指す交渉過程からカダフィ大佐を除外すべきであるとの考えで意見の一致を得られたことから、このことも含めた調停案を同会議に出席したカダフィ政権側と暫定国民評議会側の双方に提示した。その結果、双方は7月3日までにAUの調停案を歓迎するとの意向を表明している。

 AUは双方に提示した調停案の文書の中で、1)即時停戦、2)人道主義的休戦の実現、3)国連及びAUの加わる監視システムによる停戦の監視、4)国連安保理によるリビア資産の凍結の解除、5)選挙実施に向けた暫定政府の樹立、6)双方の代表の選出により内閣等の国家機構の樹立等々を提案している。尚、AUの調停案を強力に推進してきた南アフリカのズマ大統領は、2011年7月1日、赤道ギニアの首都マラボで次のように語り、調停案に期待を示した。

リビア政府と暫定国民評議会は、近々、エチオピアの首都アジスアベバで交渉を行う。
カダフィ大佐は交渉に参加しない。
リビア危機を解決する調停案を政権側と暫定国民評議会側に手交した。
双方に対して同案に従って交渉を進めるよう呼びかける。

 尚、暫定国民評議会で大統領級の議長を務めるアブドゥル・ジャリール議長は、2011年7月3日、次のように語り、カダフィ大佐が退陣し権力を放棄するのであれば、リビア国内に残留するのを認めるとの考えを初めて明らかにした。

暫定国民評議会は、カダフィ大佐が退陣し権力を放棄するのであれば、リビア国内に残留するのを認める。
この提案は、約1か月前に国連を通じてカダフィ政権側に伝えられた。
我々は、平和的な解決策として、カダフィ大佐が退陣すると共に兵士に兵舎に引き返すよう命令を発出した上で、国内外のどちらに居住するのかを自身が決めることを提案した。
カダフィ大佐が国内残留を望めば、我々が場所を選定し、国際監視下に置く。カダフィ大佐の行動は全て国際監視下のものとなる。
但し、現時点ではこの提案に対するカダフィ政権からの返答はない。

 リビアを巡る情勢では、過去数日間だけでも、次のような新たな動きも見られた。


★トルコ外相がベンガジを訪問し暫定国民評議会を公式承認

 トルコのダブトグル外相が、2011年7月3日、ベンガジを訪問し、暫定国民評議会のアブドゥル・ジャリール議長と会談した。その後、同評議会のアリ・イサウィ外相級と記者会見に臨んだトルコのダブトグル外相は、暫定国民評議会をリビアを代表する正統政府として承認することを明らかにすると共に、それまでの1億ドルに加えて新たに2億ドルを支援することを表明した。

 加えて、ダブトグル外相は次のように述べ、カダフィ大佐に国民の意思を尊重するよう呼びかけた。

国民の改革要求には答えねばならない。
カダフィ大佐は退陣し、リビアは分割されるべきではない。
私はリビア国民とともにここにいる。国民の正当な権利が尊重され、危機の恒久的な解決が図られねばならない。
それは、リビア国民の要求を基礎とする政治解決によってのみ可能である。
我々は暫定国民評議会が、この目標を達成する正統な代表と考える。


★クリントン米国務長官がカダフィ大佐に退陣を促す

 クリントン米国務長官は、2011年7月2日、次のように語り、カダフィ大佐に改めて退陣を求めた。スペインへ向かう途次、記者団に語ったもの。

カダフィ大佐は脅迫をするのではなく、リビア国民の生活と利益を第一に考えるべきだ。
カダフィ大佐は退陣しリビアの民主化への移行を可能とすべきだ。
カダフィ大佐への圧力は高まっており、反政府派は力と勢いを増している。
我々は反政府派がやり遂げるまで協力することで合意している。


★欧州への報復を示唆したカダフィ大佐

カダフィ大佐は2011年7月1日、音声メッセージで次のように述べ欧州への報復を示唆した。

我々は諸君に破滅的な事態となる以前に撤退することを勧告する。
我々はその気になればイナゴや蜂のように欧州に舞台を移すことができる。
我々は決意すれば欧州が我々を取り扱ったように取り扱うことが出来る。
我々は欧州の自宅、事務所、家族を、欧州がリビアに対してしたように合法的な軍事対象として攻撃することが出来る。
我々はリビア国民との話し合いを行うことを助言する。


★市民への攻撃命令を否定したセイフ・イスラム氏

 セイフ・イスラム・カダフィ氏は、2011年7月1日、次のように述べ、市民への攻撃命令を下したとの国際刑事裁判所の主張を否定した。

この裁判はミッキーマウス裁判である。
国民を殺した責任が自分にあるというのは大きな冗談である。
自分もカダフィ大佐も国民を殺す命令を下していない。
誰も命令など下していない。誰もだ。護衛にあたっていた部隊が発砲しただけだ。それだけだ。
政府軍は自衛のために抗議者に発砲したのだ。
彼らが自分たちを守るうえで命令など必要としない。
西側諸国はリビアの石油やその他資源を狙い干渉している。
彼らの目的はリビアをコントロールすることである。
誰も降参しないし、誰も白旗を上げない。
我々は平和を望むが、もし相手が戦いを望むならば、我々は臆病者ではない。
我々はこれからも戦う。


★反体制派と同盟を結ぶ用意があると語ったアイーシャ・カダフィ女史

 カダフィ大佐の娘であるアイーシャ・カダフィ女史は、2011年6月30日に放送されたフランス2とのインタビューで、政権側と暫定国民評議会側が政治解決に向けて協議していることを明らかにした。

政権側は直接・間接に反政府側と協議している。
我々がリビア人の血が流れるのを止めるべきだ。
我々は悪魔、それは反政府勢力だが、と同盟を結ぶ用意がある。
カダフィ大佐は国を去る理由はない。
カダフィ大佐の出発という言葉を何回も聞くが不可思議だ。
ここはカダフィ大佐の祖国であり、人々は彼の国民である。
彼はどこに行けば良いのか?あなた方は決して分からないかもしれないが、父は象徴であり先導役なのだ。

(7月4日、記)
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(幹事 畑中 美樹<はたなか よしき>)