イスラエルの沖合いで大規模なガス田の発見
(2011年1月11日掲載)

 イスラエルの『ハーレツ』紙のインターネット版(2011年1月5日)の報道によれば、イスラエル北部の港湾都市ハイファの沖合い130キロメートル海域の水深1600メートルの海底で大規模なガス田が確認された。発見したのはイスラエルと米のテキサスのノーブル・エネルギー社などの合弁企業で、埋蔵量の総量は16兆立方フィート以上で評価総額は950億ドルとされている。過去10年では最大規模のガス田の発見である。このガス田はリバイアサンと名づけられている。なお昨年も周辺でガス田が発見されている。

 こうしたガス田の開発が進めば、イスラエルはエネルギーを自給できるようになる。現在イスラエルはエジプトからガスを輸入している。しかしエジプトでのガス生産は頭打ち傾向にある。またロシアからの輸入を視野に入れたトルコからの海底パイプラインの建設も考慮された。しかし、最近のトルコとの関係悪化から、この計画の実現は疑問視され始めていた。ガス田はイスラエルをこうした懸念から解放する。

 さらにはイスラエルがガスの輸出国になる可能性さえ視野に入ってきた。これまでに発見されたガスの総量は、米国のガス埋蔵量の5分の1に当たる。人口が米国の40分の1以下のイスラエルにとっては途方もない埋蔵量である。

 しかしながら、こうしたガス田は自国のものであるとして国連がイスラエルによる開発を停止させるように求める書簡を、レバノン外相が国連事務総長に送った。レバノンとイスラエルの陸上の国境を確定した2000年の安保理決議は、両国の海上の国境線には言及していないとして、国連は介入しない方針である。

 なおレバノン最大の軍事組織でもあるヘズボッラーが、レバノンの資源に手をつけないようにとイスラエルに警告した。この警告は重い。なぜならばガス田はヘズボッラーのミサイルの射程内にあるので、開発に必要な巨額の投資が危険にさらされる可能性があるからだ。

 レバノン議会のナビ・ベリ議長は、ガス田の開発に早期に着手するように呼びかけた。さもなくばイスラエルが既成事実を作ってしまうと警告した。ガスの開発が、レバノンの債務の支払いの道であるとも同議長は主張し、ガス開発のための法案を議会に提案した。

 イスラエルは、ガス田は全てイスラエルのものとしてレバノンの主張をはねつけている。また閣僚の一人は、ガス田を守るために軍事力の行使をためらわないと強硬な発言をしている。ガスの存在は、エネルギー資源を持たないイスラエルとレバノンの対立の新たな火種となりそうである。

(1月6日、記)
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(国際政治学者 高橋 和夫<たはかし かずお>)
注:関連情報は編集部が付記した。