イスラエルの前モサド長官がイランの核兵器獲得は2015年以降と発言
(2011年1月11日掲載)

 2011年1月7日付けのイスラエルの『ハーレツ』紙のインターネット版の報道によれば、対外諜報機関モサドの長官を8年間務めたメイル・ダガンが、失敗が重なりイランの核兵器獲得は2015年以降になると発言した。ダガンのモサド長官からの退任直後のイスラエル議会の外交国防委員会での説明の中での発言であった。またイランへの先制攻撃に反対してきたダガンは、今回もイスラエルによる攻撃に改めて反対の立場を表明した。ウィキリークスによれば、諜報活動により、また核開発に必要な物資の禁輸によってイランの核開発の妨害を前長官は主張していた。同時にイランの少数民族や反対派を使ってのイスラム政権の転覆も、同長官の提案であった。

 8年間の長期にわたってモサドのトップに在任した事実が示すように、同長官の評価は高い。一時期は失敗続きでモサドの威信が低下していた。しかし、昨年のドバイでのハマス幹部の暗殺もモサドの仕業とされており、必要とあれば地の果てまでも敵を追うというモサドの威信を回復したとの国内的な評価を得ていた。

 イスラエルは、これまでイランは核兵器製造能力の獲得の寸前の状態にあると主張して来た。たとえば2009年にはエフード・バラク国防相は、2011年までにイランが核兵器を獲得すると発言した。この予言が正しければ、イランは既に核兵器を保有しているはずである。ここに来ての分析の修正の意味は何だろうか。たとえばイスラエル政府の閣僚が、先月イランの核兵器の獲得まで3年の時間を必要とすると発言してもいる。実際にイスラエルの状況認識が変化したのだろうか。報道されたように、コンピューター・ウィルスの発信によるイランのウラン濃縮の妨害工作が大きな成果を上げたのだろうか。昨年11月にイランの核研究者の暗殺事件も発生している。

 あるいはフェイントだろうか。奇襲攻撃の効果を最大限とするために、イスラエルのイラン攻撃が遠のいたとの雰囲気の醸成を狙っているのだろうか。はたまたイスラエルとイランの間に何らかの秘密の合意があったのか。さらには、イスラエルの指導層の間にイランによる核兵器製造能力の獲得のタイミングについて深刻な意見の相違が存在するのか。さまざまな推測を生む前モサド長官の発言である。

 ちなみにイランは、翌日に20パーセントの濃縮度のウランの保有量が昨年10月の30キログラムから現在は40キログラムに増大していると発表した。

(1月8日、記)
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注:関連情報は編集部が付記した。

(国際政治学者 高橋 和夫<たかはし かずお>)