ウィキリークスが光を当てるエジプトのスレイマン「副」大統領
(2011年2月14日掲載)

 エジプト現地時間の2月11日の夕刻ムバラク大統領の辞任が伝えられた。副大統領のスレイマンに注目が集まっている。ウィキリークスの暴露された米国務省の極秘電報が、この人物に光を当てている。

 2月11日付けのエルサレム・ポストのインターネット版が、以下を伝えている。ウィキリークスがノルウェーの夕刊紙アフテンポステンを通じて2005年9月のスレイマンとイスラエル側代表の会談の内容を伝える電報を公開している。それによると、スレイマンは2006年1月に予定されていた選挙でハマスが勝利を収めるのを恐れており、選挙を阻止すると発言している。ハマスがガザを支配すれば、エジプトのムスリム同胞団の立場を強めると懸念していた。

 また2月7日ウィキリークスが、イギリスの保守系の高級紙である『デイリーテレグラフ』を通じてエジプト関連の電報を公開した。その中にスレイマンへの言及がある。

 まず2007年11月9日に在テルアビブの米大使館から発信された電報が、米国とイスラエルの高官の意見交換を記録している。それによれば、ガザへのエジプトからの密輸に関してイスラエルがスレイマンに密輸業者の氏名を伝えたとしている。またイスラエル側の担当者との会談では、「自らシナイ半島の清掃(密輸業者などの一掃)する」とスレイマンが約束している。

 またガザへのエジプトからの密輸が続くのに業を煮やした米議会が、問題が解消しなければ、対エジプト援助を削減するとの動き見せた際に、スレイマンはイスラエルに対してこの動きを阻止するように求めている。

 次に、2007年12月17日に在カイロの米大使館から発信した電報が、スレイマンのガザは「飢え(starve)」てはならないが「空腹(hungry)」でいるべきとの発言を記録している。またガザへの密輸を止めるために最悪の場合は、イスラエル軍をシナイ半島に歓迎するとのスレイマンとタンタウィ国防相の言葉も記録されている。

 さらに2008年8月29日付けの在テルアビブの米大使館から発信された電報がイスラエルのバラク国防相のエジプト訪問の様子を描写している。イスラエルとエジプトの諜報機関の間にはホット・ライン(直通電話)が設置されており、日常的に両者間で対話が行われている。エジプト側で電話を受けているのはスレイマンである。イスラエルの訪問団は、ムバラク大統領の老化にショックを受けており、スレイマンが後継者となると予測し、また歓迎している。

 なお、この年の末から翌2009年の初めにかけてイスラエルはガザに対する大規模な攻撃を行った。

 こうした電報が浮き彫りにしているのは、スレイマンのイスラエルの諜報機関との密接な関係であり、ムスリム同胞団に対する深い敵意である。これはスレイマンの政治的将来を考える際のマイナス要因である。

(2月12日、記)
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注:関連情報は編集部が付記した。

(国際政治学者 高橋和夫<たはかし かずお>)