急落するイランの通貨
(2011年12月26日掲載)

 12月の中旬に入ってイランの通貨リアルの対ドル交換レートが急落している。1週間で1割急落した。バザール(自由市場)では17日の土曜日に1ドルが1万3800リアルだったものが、21日の水曜日には1万5300リアルを超えた。また中央銀行の交換比率でも1万1000リアルを超えた。

 その直接的な理由は、財政赤字を補填するために政府が意図的に市場への介入を控えてドル価格を引き上げているからだ。これが市場で広がっている見方である。今年の財政赤字は300億ドルでイランのGDPの7パーセント相当である、と12月21日の『フィナンシャル・タイムズ』紙のインターネット版は伝えている。

 政府の意図的なリアル引き下げ政策の兆候として見られているのが以下の諸点である。

1) アフマドネジャド大統領が銀行の預金金利をインフレ率以下に強制的に引き下げさせている。
2) 政府は、昨年より導入された国民への補助金の直接支払の資金繰りに苦しんでおり、市中銀行から資金を吸い上げている。これは国際的な経済制裁の強化を受けて、アフマドネジャド政権によって導入されたシステムである。長年の生活必需品の価格統制の撤廃の代わりに、政府が各個人に直接に補助金を渡す制度である。
3) 政府は銀行預金の引き出し額を制限している。
4) また個人が海外旅行用に交換できる限度を年間2千ドルに設定した。
5) さらに市中銀行の企業へのドル売却にも制限が掛けられている。

 こうした一連の動きが、リアルからドルや金などへの資金の移動を引き起こしている。

 背景にあるのは対イラン経済制裁の広がりと深まりである。ドル以外の通貨が石油代金として支払われる例も増えており、中央銀行はドル不足に陥っている。さらに制裁が強められるのではないかとの懸念が、リアルを弱めている。特にEUがイラン原油のボイコットを決定するかも知れないとの不安が市場を覆っている。また政治的な混乱が続くシリアのアサド政権への巨額の資金援助を与えているとの推測も流れている。これもイラン経済には大きな負担となっていよう。

 20日にアフマドネジャド大統領は、イランは膨大な外貨準備を保有しているので、これ以上のリアルの下落に歯止めを掛ける対策を取ると表明した。しかし市場は反応していない。

 革命以前のリアルは安定した通貨であり1ドル70リアルの交換レートが維持されていた。革命後は、リアルはドルに対して長期の低落傾向にある。今年に入ってからでも、30パーセント下落している。

(12月25日、記)
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注:関連情報はJAMEEF編集部が付記した。

(評論家 高橋和夫<たかはし かずお>)
http://ameblo.jp/t-kazuo/