リーヒー上院議員が対イスラエル援助の一部凍結を提案
(2011年8月26日掲載)

 バーモント州選出の民主党のパトリック・リーヒー上院議員がイスラエルへの軍事援助の一部の凍結を主張している。具体的には、イスラエルの特殊部隊がガザ地区とヨルダン川西岸でパレスチナ人の人権を侵害しているとして、三つの特殊部隊への軍事援助の凍結を2012年度の援助法案に織り込むように提案している。

 在米イスラエル大使館が提案を引っ込めるように同議員の説得工作を行ってきたが、これまでのところ功を奏していない。またリーヒー上院議員と長年の知己であるイスラエルのバラク国防相も訪米した際に同議員と面談したが、翻意させることはできなかった。

 リーヒー議員は、民主党左派に属するとされ、対人地雷禁止条約を支持するなど、これまでも人権問題での活動で知られてきた。故ラビン首相とも友人であり、反イスラエルとして知られているわけではない。しかし、イスラエル軍がガザに侵攻した2008年以来、イスラエルに批判的になったとされる。

 親イスラエル勢力の強い米国の上院で、一部とはいえ同国への援助を停止しようとの提案が出て来るのは、稀である。注目を集めている。通常は、イスラエルに批判的な議員は次の選挙での苦戦を免れないからである。イスラエル・ロビーは、対立候補に資金を流し込む。また有力候補が不在な場合には刺客候補を送り込み、その候補者に多額の資金を投入して反イスラエル的政治家の落選を狙うからである。一例を上げるとフルブライト上院議員の1974年の選挙での落選がある。日本でも米国留学の奨学金プログラムの提案者として名を残す人物である。落選の理由の一端は、同議員がイスラエルのロビー活動に批判的だったので、親イスラエル勢力の不興を買ったからだ。との説が一部では流布している。

 リーヒー議員は次の選挙は大丈夫なのであろうか。現在71歳の同議員は、35年も上院議員を務めている。これは、ハワイ州選出で、やはり民主党のダニエル・イノウエ議員に次いで長い上院でのキャリアである。米国議会は映画で見る江戸時代の牢屋の牢名主の制度に似ている。長くいるほど影響力を発揮できる。ということは自分の選挙区への利益誘導が容易になる。となると選挙を有利に戦える。事実2010年の選挙において、リーヒー議員は、この点を強調して戦った。64パーセントの得票で、投票終了直後に当選確実が発表されるほどの圧勝であった。この圧勝で、リーヒーの議員として経歴は、1974年に当選して以来の連続しての7期目に入った。

 選挙区のバーモント州は、米国東北部のニューイングランドに位置し、カナダと国境を接する人口60万の小さな州である。ユダヤ教徒の数も少ない。これだけ選挙に強ければイスラエルに批判的な立場を表明しやすいと言える。恐らくもっと重要な要因はリーヒーの年齢であろう。現在71歳であるので、7期目の任期の切れる2017年には77歳となる。引退の時期ではないだろうか。次の選挙がないとなると、もうイスラエル・ロビーさえ怖くないと言う心境だろう。リーヒーの提案が、次の選挙を心配する他の議員たちの支持を集めるとは考えにくい。だが、上院でイスラエルへの援助を批判する声が上がるという事実に、イスラエル支持勢力は、不安を覚えたであろう。

(8月24日、記)
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注:関連情報はJAMEEF編集部が付記した。

(評論家 高橋和夫<たかはし かずお>)
http://ameblo.jp/t-kazuo/