緊急事態法の無期延期を決めるなど政治的安定が未だに見えて来ないチュニジア
(2011年8月5日掲載)

 チュニジアの公報は、2011年7月26日、フアード・メバザアア暫定大統領が緊急事態法の無期延期を決める政令に署名したことを明らかにした。今回緊急事態法を無期延期にしたことで、全ての集会が禁止され、警察及び軍は命令に背いた者を銃撃する権限を付与された。チュニジアでは10月23日に選挙が予定されているが、ここに来て、イスラム派と世俗派の対立が表面化したり、ベンアリ政権時代の要人が新生党を結成し復活を目指す等、必ずしも政治情勢は安定していない。

 2011年7月21日(木)には、数百人が首都チュニスの中心部で「暴力と混乱を非難する」「統一賛成」と叫びながら抗議デモを行った。この抗議運動はイスラム政党であるナフダ党を除く8政党の呼びかけに応じたものであった。それに先立つ7月18日(月)にはエセブシ首相がテレビ放映された演説で、「7月15日(金)から17日(日)にかけて行われた抗議運動は国内に混乱を引き起こし10月23日に予定される選挙の延期を狙ったものである」「国家を不安定化しようとの組織だった計画がある」「選挙は何が起ころうと予定通り10月23日に実施される」「全ての政党及び国民に国家を守るよう呼びかける」(ロイター通信 2011年7月18日)と述べ、最近の抗議運動の背後にイスラム過激派による組織的な動きのあることを示唆した。

 他方、ナフダ党のラシッド・ガヌーシ党首は、2011年7月18日、記者会見で次のように語りエセブシ首相の批判に反論している。因みに、ナフダ党は2011年6月27日、政治改革を行うために2月に創設された国家委員会から一部の委員たちが自己目的のために活動しているとの理由で脱退することを明らかにしている。

我々はイスラム教徒の若者をそそのかし暴力を振るわせようとの試みがあると感じている。恐らく、狙いは選挙の延期であろう。
我々はチュニジアの全ての若者に暴力を振るわぬよう訴える。
警察は平和的な抗議運動を暴力で取り締まっている。

 新生チュニジアは2011年6月24日、国際刑事裁判所(ICC)の設立条約への加入書を国連に提出したことを明らかにしている。そのチュニジアではベンアリ元大統領や同夫人の裁判が、本人たちの不在のまま進められている。既に、
チュニジアの裁判所は、2011年6月20日、チュニジアのベンアリ前大統領とレイラ夫人に対して公金横領等の罪状で禁固35年・罰金6560万ドルを言い渡していたが、次表に見るように7月に入っても別の2つの容疑で有罪判決を下している。


       表 ベンアリ前大統領に対するその後の裁判状況

裁判日 罪 状 判決内容
7月04日 ベンアリ前大統領による販売目的での薬物及び武器類の不法所持 禁錮15年6ヶ月及び罰金10万8000チュニジア・ディナール
7月28日 ベンアリ前大統領、実娘ネスリーン女史、同女史の夫サクル・マテリ氏による権力濫用罪(家族向けに不動産を市場価格以下で取得した容疑) ベンアリ前大統領に禁錮16年、実娘ネスリーン女史に禁錮8年、同女史の夫サクル・マテリ氏に禁錮16年。また3人に罰金1億ドル
同 上 ベンアリ前大統領甥のソフィエンヌ・ベンアリ氏による薬物不法取引 禁錮2年及び罰金1400ドル
出所:各種報道より作成のもの。

(8月3日、記)
<関連情報>

公金横領等の罪状で禁固35年・罰金6560万ドルを言い渡されたチュニジアのベンアリ前大統領とレイラ夫人(6月20日時点)【2011/6/24】
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(幹事 畑中美樹<はたなか よしき>)