戦闘がこう着状態に陥りつつあるなかカダフィ大佐の国外脱出による外交解決の可能性も出始めたリビア情勢(4月17日時点)
(2011年4月19日掲載)

<カダフィ大佐の亡命先を探る米国?>


 オバマ政権の3人の高官が、ニューヨーク・タイムズ(NYT紙)に対して、リビアのカダフィ大佐の退陣を迫る国際的な圧力が高まるなか、同大佐に亡命を認める国家探しが静かに、しかし熱心に進められていることを確認している(http://www.theaustralian.com.au/news/world/us-eyes-the-exile
-option-hunt-launched-for-a-gaddafi-bolthole/story-e6frg6so-1226040587...)。

 カダフィ大佐の亡命先を探す上で最も必要となるのは、国際刑事裁判所への引き渡し義務のあるローマ条約を締結していない国家であることだ。仮にカダフィ大佐が国際刑事裁判所に引き渡された場合、パンナム機を爆破させた1988年のロッカビー事件や今回の反体制派や一般市民への虐殺行動の罪を問われる可能性があるためである。

 リビア危機は、NATO主導による空爆の継続にも関わらず、既に米国や欧州諸国が考えていたよりも長期化する可能性が出ている。このため米国も欧州諸国も、さらなる市民の犠牲を防げるのであればカダフィ大佐が安全な地に出国する事態もあり得るとの考え方に傾きつつある。2002年から効力を発揮し始めたローマ条約に加盟しているアフリカ諸国は、依然ほぼ半数に留まっている。2011年3月にカダフィ大佐がアフリカのどこかの国家へ出国するとの考え方を最初に打ち出したのは、イタリアのフラッティニ外相であった。

 オバマ政権の高官は、米国がイラク戦争で学んだ最大の教訓は、政権交代は自国民の手に委ねるべきとのことだと語っている。因みに、同高官は、米国が舞台裏で淡々と引き受け国を探していることを示唆するように、「我々が行おうとしているのは、機会の訪れた時に亡命ができるように平和裏の方法を見つけ出す事だけだ」(同上)と説明している。



<カダフィ追い落としで意見の割れる英仏>

 リビアに対する空爆で他国を主導するフランスと英国だが、新たな国連安保理決議なしにカダフィ大佐の追い落としを行うことが認められるか否かでは見解を異にしている。例えば、フランスのジェラルド・ロングエ国防相は、カダフィ大佐の退陣を追い求めることは国連安保理決議1973号を逸脱する動きと考えている。他方、英国外務省はそのために新たな決議は不要であるし準備する予定もないと述べている。

 さらにジュッペ仏外相は、2011年4月16日、パリで開催された「アラブの春」と題する会議で以下のように講演し、同国がアラブの主導者の転覆を試みているわけではないと語っている。

イエメン及びシリアの情勢を非常に心配している。
これら諸国は国民の要望に明確に答える道は対話以外にないことを認識せねばならない。
国民は完全な自由の下で自らの考えを表明する必要がある。
リビアの市民はカダフィ大佐が居座る限り保護されない。
しかし、だからと言って、指導者の転覆がフランス外交の目的になったわけではない。
(シリアの情勢は拡大するかと問われ)そのリスクはある。それを防ぐ唯一の方法は改革である。シリアはまだ改革の必要がある。
アルジェリアのブーテフリカ大統領はいくつもの改革を約束した。これらは全て正しい方向に向かっている


<カダフィ大佐の退陣を要求した米英仏首脳の共同意見書>
 オバマ米大統領、キャメロン英首相、サルコジ仏大統領による「リビア和平への道」と題する以下のような内容の共同意見書が、2011年4月15日、欧米の3紙(IHT紙、フィガロ紙、タイムズ紙)に掲載された。同意見書は、退陣が必要と述べることでカダフィ大佐や親族・側近に国外脱出の準備を促したとも受け取れよう。

自国民を虐殺しようとする指導者が、将来の政府においても役割を担うことは考え難い。
カダフィ大佐をその座に置くとの取引は一層の混乱や無秩序を招来する。
我々は、その意味するところを過去の経験から熟知している。
カダフィ大佐が権力の座にある限り、NATOは作戦を続けて市民を保護し政権に圧力をかけ続ける必要がある。
その後、独裁政治から新世代の指導者たちによる憲法採択への真の移行が開始される。
移行を成功させるには、カダフィ大佐を永遠に追いやらねばならない。
カダフィ後の国家再建には手を貸さねばならないが、新指導者の選出は国民に委ねられるべきである。

 英国では、保守系の3議員が、同国の対リビア政策に大きな変更があったようなので直ちに国会を再開すべきと主張している。特に、リビア介入に反対票を投じた保守派のジョン・バロン議員は、我が国は今では国際法で禁じられている政権の転覆を口にしつつあると語り、国会議長に再開すべきとの書簡を送付したことを明らかにしている。但し、英政府側は対リビア姿勢に変化はないので国会の再開は不要との立場を崩していない。


<何れカダフィ大佐は退陣すると見る米国>


 米国のオバマ大統領は、2011年4月15日、AP通信とのインタビューで、次のように語り、カダフィ大佐は何れ退陣するとの見方を示した。

軍事面でのリビアの情勢はこう着状態に陥っている。
そもそも僅か3週間の空爆でカダフィ大佐の退陣をもたらせるとは考えていなかった。
しかし、カダフィ大佐は軍事以外の方法でも締め付けられている。
金融制裁や武器禁輸により資産・物資が少なくなっており益々孤立している。
こうした圧力を継続していれば何れカダフィ大佐は退陣する。

 尚、NATO外相理事会(2011年4月14、15日)に出席するためベルリンを訪問したクリントン米国務長官は、同地でフランスのジュッペ外相から空爆作戦への復帰を求められたが拒否している。クリントン米国務長官は、米国は自らに与えられた責務を遂行しているとの言い回しで、空爆自体に復帰することを拒否した。


<新たな攻撃機の供与要請に冷淡であったNATO臨時外相会議>

 戦場での膠着化や反体制派によるNATO批判が明らかとなる中で開催されたNATO臨時外相会議では、ラスムセン事務総長が、対リビア空爆を一層効果的にするためには、高精度の地上攻撃用航空機が今少し必要であると説明し各国に協力を求めた。しかし、各国から前向きな回答は出てこなかった。むしろ空爆だけで問題を解決することは出来ないとの見方が多く、政治解決に向けた動きも模索すべきとの意見も出されている。

 実際、NATO28カ国のうち、空爆に参加しているのはフランス、英国、デンマーク、ノルウェー、ベルギー、カナダの6カ国に留まっており、米国ですら飛行禁止委空域の監視を中止とする防御的な作戦に軸足を移しつつあるのが実情である。スペイン、オランダ、スウェーデンも飛行禁止空域での監視活動に限定した参加であるし、イタリアも後方支援に留まっており空爆に関しては国会の判断次第となっている。

(4月18日、記)
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(幹事 畑中 美樹<はたなか よしき>)