ロシアに対抗してアジア地域での石油備蓄基地確保に動き始めた中東産油国
(2010年5月28日掲載)

 2009年12月28日、ロシアの「東シベリア石油パイプライン(Eastern Siberian Pacific Ocean、ESPO、別名・太平洋パイプライン)」で送られた原油の初のタンカーへの積み出しが、ナホトカのコジミノ港で行われた。第一便は香港向けであった。このように、ロシアは既にシベリア原油のアジア地域への輸出を本格化させている。ロシアはこのパイプラインで日量約30万バレルの原油の積み出しを始めたが、2010年末までに60万バレルまで増量する計画である。積出量は中東産油国に比べればまだ少なく、短期的には中東産油国の脅威とはならないだろう。しかし、ロシアは石油需要の旺盛な中国、インド、韓国、台湾など重要なアジア市場に近接しているので、中東産油国にとっては潜在的な脅威となりそうだ。東シベリア石油パイプライン(Eastern Siberian Pacific Ocean、ESPO、別名・太平洋パイプライン)の積出量が増加すれば、中東産油国が市場シェアーの確保に動かねばならなくなると見る石油専門家も少なくない。

 中東産油国は、これまで需要の中心となってきた米欧が世界金融危機の発生もあって需要が落込んでいることから、需要の着実に増加しているアジア地区に関心を寄せている。この点からも中東産油国が、ロシアに対抗してアジアでの市場シェアーの確保と拡大を図るのは当然といえるだろう。

 折りしも、東シベリア石油パイプライン(Eastern Siberian Pacific Ocean、ESPO、別名・太平洋パイプライン)の完成と時期を合あわせたかのように、中東産油国がロシアに対抗してと見られる戦略的な動きをアジア市場で始めている。つまり、アジアに備蓄基地を構築して積出中継拠点とする戦略である。石油消費が増加している地域での消費国との関係強化を狙っての動きである。

 例えば、サウジアラビアは2009年12月22日、日本政府と日本に数百万バレル規模の石油備蓄をする事業に合意した。これはサウジアラビアと日本が、沖縄に原油を共同備蓄する計画で具体的協議が始まっている。我が国のエネルギー安全保障上の提案でもあるが、アジア太平洋エネルギー・コンサルティング社(ヒューストン)のアル・トロナー社長は、この動きについて次のように解説する。

サウジアラビアは原油の集積地を求めている。
沖縄共同備蓄は中国市場を狙う1つの方法である。
日本の中継基地から小型タンカーに積み替え中国沿岸部の製油所へ積み出すことになろう。

 尚、サウジアラビアは中国本土での備蓄も検討中と言われる。そのサウジアラビアに一歩先んじて、アブダビ国営石油(ADNOC)が、2009年12月14日、新日本石油と同社の喜入基地(鹿児島市)の原油タンクを3年間(2012年12月まで)使用する備蓄契約を結んでいる。消息筋によると、サウジアラビアなどの中東産油国は、シンガポールが建設中の地下石油備蓄基地にも関心を抱いているという。その他、カタールは石油取引のアジアのハブであるシンガポールから船で45分の距離にあるインドネシアでの原油備蓄を検討中である。イランも2007年に中国政府と中国国内に原油の戦略備蓄ターミナルを建設することを検討する覚書を取り交わしている。イランは2010年に本プロジェクトの具体化に向けて協議を本格化させる見込みと言われている

 一方、消費国サイドでは、韓国がノルウェーのスタットオイル、アルジェリアのソナトラック、フランスのトタルと共同備蓄の契約を交わしている。インド政府も中東産油国と安定供給確保のために共同備蓄施設の建設を交渉中と報じられている。但、こうした構想にも問題がないわけではない。既に原油の共同備蓄を行っている韓国石油公社(KNOC)の消息筋は「共同備蓄の需要は多いのだが備蓄施設の手当てが困難になっている」「備蓄システムの構築は簡単ではなく少なくとも数年は要する」「しかも完成したときに需要があるかどうか見極めにくい難点を伴う」と指摘している。

(5月25日、記)
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(中東問題研究家 江添 久義<えそい ひさよし>)