ルクオイル(露)のイラン石油事業の停止とイラン説得を試みていたロシアと中国
(2010年3月30日掲載)

 ロシア最大の民間石油企業であるルクオイルが2010年3月24日、声明を発表し、米国による圧力のためにイラン石油事業を停止することを明らかにした。同社の声明は概要次のように述べている。

米政府の課した経済制裁のためにアナラン事業のさらなる作業を停止する。
我が社は同制裁により2009年に6300万ドルの損失を被ったことを非難する。
我が社はアナラン事業を継続した場合、さらなる損失の生じることを懸念する。

 推定原油埋蔵量20億バレルとされるアナラン油田の開発事業は、ノルウェーのスタットオイル・ハイドロ及びルクオイル・オーバーシーズの合弁事業が操業している。因みに、出資比率は前者が75%、後者が25%である。スタニスラフ・クズイエフ・ルクオイル・オーバーシーズ社長は、「我が社は同事業の権利を維持し、より好ましい経済状況となれば復帰する用意がある」(http://www.hindu.com/2010/03/250stories/2010032565522000.htm)と述べ、一時的な撤退である点を強調した。

 ルクオイルは米国内に1600ものガソリンスタンドを持つほか、2009年には米国で製油所を建設する計画を発表している。同社の米国でのこうした事業は、米国がイランで操業中の国際的なエネルギー企業に課している制裁には脆弱といえる。同社のグレゴリー・ホルチェク広報部長は、米国のどの制裁のためにアナラン事業の停止を決定したのかについて明らかにしていないものの、ロシア国内のアナリスト達は米国内に持つガソリンスタンド網への影響を懸念してではないかと見ている。

 ところで、ロシア外務省は2010年3月24日、同国と中国がイランに対して、国際原子力機関(IAEA)の提案を受け入れるよう2010年3月上旬に説得したが失敗していたことを明らかにした。このためロシア外務省の高官は「外交的解決の余地が益々小さくなっており、雲がたちこみ始めた」「ロシアは核不拡散を目指す制裁には賛成するが、イランを罰することや体制変革を目的とする制裁であれば反対する」(ニューヨーク・タイムズ紙 2010年3月24日)と述べ、ロシアと中国が既に舞台裏でIAEA案を飲むようイランに働きかけていたことを明らかにした。

 ロシア外務省の高官がこうした裏話を明かしたのは、2010年3月24日に行われた記者団に対するブリーフィング時であった。興味深いのは同高官が「制裁はロシアの建設する原子力発電所には何ら影響しない」「イランのウラン濃縮力は限られているので近い将来に核兵器の製造が可能であるとは思わない」「しかし、ロシアにとって自国の近隣諸国の核計画の監視は自国の安全保障に関係する問題である」「イランがロシアに核攻撃を仕掛けるというつもりはないが、核装備したイランと第三国との紛争は、ロシアの安全保障やロシアの近辺にマイナスの影響を及ぼすだろう」(同上)と述べ、イランの核開発がロシアの安全保障に深く関わってくる点を指摘した。

 尚、中国のLi Baodong駐国連・新大使も「我が国は中東の安定と平和の維持は極めて重要と考える」と記者団に語り、やはり中国も核不拡散には賛成であることを示唆した。

(3月27日、記)
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(幹事 畑中 美樹<はたなか よしき>)