依然強力な守旧派の抵抗を受けながら改革・開放を進めるリビアのサイフ・アル・イスラム・アル・カダフィ/カダフィ国際慈善基金総裁
(2010年3月12日掲載)

 リビアのサイフ・アル・イスラム・アル・カダフィ/カダフィ国際慈善基金総裁(37歳)は、社会主義と権威主義がしみついた同国の官僚的な体質を変えようとしている。しかし、本人がインタビューで、「国家に新たな考えを植えつけるのは大変な仕事である」「しかし、それを我々は行おうとしている。リビアは新しい憲法、新しい法律や商業関係規則、そして15%で一律な所得税を導入しようとしている」(ニューヨーク・タイムズ紙 2010年2月28日)と述べ、1969年の革命以降、リビアが取ってきた諸制度の改革に積極的に取り組む意向を改めて表明した。

 流暢に英語を話しロンドン大学で博士号を取得したサイフ・アル・イスラム・アル・カダフィ/カダフィ国際慈善基金総裁は、改革と開放の旗手として登場し、リビアの親欧米的な側面を代表する顔としての役割を果たしてきた。多くのリビア・ウォッチャーは、2009年10月、リビアの人民委員会がサイフ・アル・イスラムィ/カダフィ国際慈善基金総裁を社会人民委員会調整官に任命したことで、いよいよカダフィ大佐も後継体制作りに乗り出したと解釈した。しかし、リビアの政治では、構想などが浮かんでは消え、消えては浮かぶということが頻繁に起きてきた。そうした過去があるだけに、サイフ・アル・イスラム・アル・カダフィ/カダフィ国際慈善基金総裁の国家元首級とされる社会人民委員会調整官への任命にも疑問符がつきまとう。

 例えば、リビア政府は最近になって、サイフ・アル・イスラム・アル・カダフィ/カダフィ国際慈善基金総裁の支援してきた2紙の活動を抑制しているし、英国を除くシェンゲン協定の締結国に対するビザ発給も停止されている。こうしたなか、後継者争いで最大のライバルと見られ治安部門を見るムタッシム・カダフィ氏も着実に力を伸ばしている。リビア情勢に詳しいダナ・モス氏は、多くの人が、サイフ・アル・イスラム・アル・カダフィ/カダフィ国際慈善基金総裁こそリビアの将来を担う人物と見てきた。但し、そうは言ってもまだまだ不透明感は残されており、両氏が共に一定の発言権を確保する方向に進みつつあるようにも見える。

 サイフ・アル・イスラム・アル・カダフィ/カダフィ国際慈善基金総裁は、人民委員会により2010年10月に社会人民委員会調整官に任命されたにも関わらず、依然同ポストを引き受けるには至っていない。むしろサイフ・アル・イスラム・アル・カダフィ/カダフィ国際慈善基金総裁は、2010年1月、ロンドンで、新しい憲法や新たな法律、そして透明度の高い選挙が実施されない限り同職を受け入れる意思はないと明確に語っている。これが計算された戦略に基づくものであるのか否かは定かでない。但し、サイフ・アル・イスラム・アル・カダフィ/カダフィ国際慈善基金総裁は、官僚主義的な体制からの脱却を図ろうと無税の投資ゾーンやビザの廃止、豪華なホテルの開設を提唱し、実務面から改革を推し進める姿勢を見せている。

(3月10日、記)
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(幹事 畑中 美樹 <はたなか よしき>)