イスラム寺院の尖塔の新規建設の禁止を決めていたスイスに対する聖戦(ジハード)を呼びかけたリビアのカダフィ大佐
(2010年3月2日掲載)

 リビアの最高指導者カダフィ大佐は、2010年2月25日、イスラム教の始祖ムハンマドの生誕祭に際してベンガジで聴衆を前に演説し、2009年11月の国民選挙でイスラム寺院の尖塔(ミナレット)の新規建設の禁止を決めているスイスに対して聖戦を行うよう呼びかけた。カダフィ大佐はこの日の演説で、具体的には次のように話しイスラム教徒が団結してスイスに聖戦を仕掛けるよう促した。

神のモスク(寺院)を破壊する者は聖戦により攻撃されてしかるべきである。
もし(リビアが)スイスと国境を接しているならば、我々は戦っていたであろう。
スイス、シオニスト、そして外国の侵略者に聖戦を仕掛けようではないか。
世界のどこであれスイスと取引を行うイスラム教徒は背教者であり、預言者ムハンマド、神、コーランに背く者である。
世界のイスラム教徒はスイス製品をボイコットし、イスラム国家の空港、港湾へのスイスの航空機、船舶の着陸、入港を禁止しようではないか。

 カダフィ大佐の呼びかけに対して、国連のセルゲイ・オルゾニキッゼ・ジュネーブ代表は、「国家元首による国際関係に関するこのような発言は許しがたい」「スイスの国連事務所の警護は専門的であり、如何なる事故にも対応しうるよう準備されている」(http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/8538474.stm)と述べ、カダフィ大佐の発言を批判した。

 ところでスイスでは2009年11月29日、右派で反移民の姿勢を貫く国民議会(下院)の第一党である国民党(SVP)の呼びかけに応じる形で、イスラム寺院の尖塔(ミナレット)の新規建設の是非を問う国民投票が実施された。投票率53%の結果は大方の予想に反するもので、投票者の57.5%が新規建設の禁止に賛成票を投じた。スイスには26州があるが、反対票が過半数を上回ったのは国連などの国際機関のあるジュネーブほかのフランス語圏の4州のみに留まった。

 この投票結果を受けてスイス国内外のイスラム教徒は、偏見に満ちた反イスラム的な動きであるとして反発をしていた。またABBやネスレなどイスラム諸国でのビジネスも少なくないスイスに本拠を置く多国籍企業も、イスラム諸国との関係を損なうものであり、スイスに観光に来たり預金していたイスラム教徒を敵に廻すことになると述べ警告していた。尚、スイスのイスラム教徒は、人口750万の約6%、従って人数にして約50万人にも達する。但し、これらイスラム教徒の大半は、1990年代に発生したユーゴスラビア紛争時に逃れてきた人たちで、信仰心の篤いイスラム教徒は全体の約1割といわれている。

(2月28日、記)
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(幹事 畑中 美樹<はたなか・よしき>)