インドと原子力協定の締結に向けた交渉をようやく開始することになった日本
(2010年6月29日掲載)

 岡田克也外務大臣は、2010年6月25日、記者会見で、インドと原子力協定の締結に向けた交渉を開始することを明らかにした。日本政府内では、インドが核拡散防止条約(NPT)に加盟しておらず、しかも核兵器を保有していることから同国との原子力協定の交渉に慎重な意見も存在した。しかし、米国やフランス、ロシアなどがインドとの原子力協定を締結していることや韓国も締結交渉を進めつつあること、またインドにおける原子力ビジネスの将来性、さらには地球環境問題への寄与といった観点を総合的に勘案して決定に踏み切った。

 原子力協定は、原子力発電での協力や核不拡散に向けた措置などから成る取り決めで、国際原子力機関(IAEA)の査察の受け入れや原子力発電関係の技術などの輸出の平和利用への限定などの条件が明らかにされている。日本企業が原子力発電関連の技術や部品などを海外輸出する場合、原則として原子力協定の締結国が対象とされる。

 インドは2020年までに20基超の原子力発電所の建設を計画していることから、米国、フランス、ロシア、韓国などが積極的な売込みを図るなか、日本はインドが我が国と原子力協を結んでいないこともあって原子力商戦で不利な立場に置かれていた。トロントで開催された20カ国・地域(G20)首脳会議に参加した菅直人首相も、2010年6月27日、やはり同会議に参加していたインドのシン首相と会談し、早速、民生原子力分野での協力問題で意見こうしたほか、貨物鉄道などインフラ分野での日本の支援問題についても協議している。

 因みに、米国や韓国、ロシアとインドは過去1年の間に次のような動きを見せていた。

インドを訪問したクリントン米国務長官は、2009年7月20日、ニューデリーでクリシュナ外相と会談した。同長官は会談後の共同記者会見で、①米企業によるインドでの原子力発電所2基の建設、②兵器輸出に関する協定の締結、③戦略対話の定期開催、④インドのシン首相の2009年11月の訪米、で合意したことを明らかにした。

 米国とインドは、ライス国務長官(当時)とムカジー外相(当時)が2008年10月10日、ワシントンで米印原子力協力協定に正式調印している。また、その二日前の10月8日には、ブッシュ米大統領(当時)が米印原子力協力協定を承認する法案に署名している。ブッシュ大統領(当時)は署名時に、「米印原子力協力協定の発足は米国の雇用創出になる」と語り、米原子力産業への効果に期待を表明している。またライス・米国務長官(当時)も調印式で、「真に歴史的な出来事であり、米国とインドはエネルギー安全保障、気候変動、大量破壊兵器の拡散といった諸問題で共に立ち向かおう」と語り、協定の意義を強調している。

インドを訪問した韓国の李明博大統領は2010年1月25日、シン首相とニューデリーで会談し、両国関係をそれまでの長期的協力パートナーから戦略的パートナーに格上げすることで合意し共同声明を採択した。両国首脳の合意に基づき、外交安全保障対話を新たに設け2010年中にも第一回会合を開催することも決められた。

 また李明博・韓国大統領とシン・インド首相は原子力事業を含む経済分野での関係強化でも合意した。まず2010年1月に両国間で発効した包括的経済連携協定(CEPA)を通じて、114億ドルであった2009年の両国貿易額を5年後の2014年までに300億ドルに引き上げることを目指すこととされた。

 注目された原子力事業では、インドの原子力市場への韓国企業の参入に向けて原子力協力協定の締結に向けた交渉を開始することが確認された。ンドの年」にすることで合意し、民間交流を活発化させることを確認している。この確認に基づき、韓国外交通商省のユ・ミュンファン大臣とインドのクリシュナ外相が、2010年6月18日、ソウルで外相共同委員会を開催し、原子力協力協定の締結に向けた政府間実務交渉を開始することで合意している。

ロシアのプーチン首相は2010年3月12日、一日の日程でインドのニューデリーを訪問しシン首相と会談した。両首脳は会談後の記者会見で、原子力発電所の建設や軍事・通信分野でのなどでの協力拡大に合意したことを明らかにした。今回の両首脳の会談で最も注目されたのは、インドにおける原子力発電所の建設へのロシアの関与の有無であった。この点についてシン・インド首相は「ロシアがインドの原子力発電所を建設する行程表(ロードマップ)で合意した」と語り進展のあったことを表明した。

 プーチン首相に随行したロシアのセルゲイ・イワノフ副首相は「両国はインド国内の3箇所で最大16基の原子力発電所(軽水炉)をロシアが建設することで合意した」(ガルフ・タイムズ紙 2010年3月13日)と記者団に述べた。両国は、今後核燃料製造向けの合弁企業の設立についても検討することで合意した。ロシアは現時点で、インド南部のタミルナド州のクダンクラムで原子力発電所2基を建設中のほか、2009年12月のシン・インド首相の訪露時にさらに4基建設することで合意していた。


(6月28日、記)
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(幹事 畑中 美樹<はたなか よしき>)