外相理事会で追加制裁措置の発動を決めた欧州連合(EU)と前提条件なしでの交渉を表明したイラン
(2010年7月30日掲載)

 国連安保理による4本目の制裁案の採択や米財務省による追加制裁の発表、さらにはオバマ米大統領による包括制裁法案への署名と厳しい制裁案を立て続けて突きつけられてきたイランだが、2010年7月26日、欧州連合(EU)外相理事会は新たな追加制裁措置の発動を決定した。以下では、連続的制裁措置で追い込まれるイランについて、2010年7月25日から28日までの動きを一表にまとめてみた。

   図表 イランを取り巻く最近の情勢(2010年7月25日~28日)

月 日 国際社会の動き イランの動き
7月25日  
ブラジルのアモリン外相、イランのモッタキ外相とトルコのイスタンブールで会談したダウトオール・トルコ外相は、イランのモッタキ外相が欧米との核交渉について9月中旬以降で同意したと語った。
7月26日
欧州連合(EU)がブリュッセルで27カ国外相理事会を開催し、対イラン追加制裁措置の即時発動で合意した 1)
カナダのキャノン外相が、対イラン独自追加制裁の発動を発表した。イラン石油・ガス部門への新規投資の禁止、核開発転用可能性のある物資のイラン向け輸出制限、イランの銀行のカナダ内での支店新設の禁止、カナダ金融機関によるイラン国債購入の禁止などが主な内容となっている。
ロシアのイザベスチヤ紙はロシア外務省が、イランのアハマディネジャド大統領によるメドベージェフ大統領批判について、「決して受け入れられない発言である」「イランは無責任な発言を止めて具体的で建設的歩みを取るべきである」との声明を発表したと報じた。2)
イランが国際原子力機関(IAEA)に核燃料に関する交渉を無条件で再開する用意があるとする書簡を送った。3)
アリ・アスガル・ソルタニエ駐IAEA・イラン大使が、ファルス通信で、「IAEAとの交渉再開への準備が完了した」「交渉の再開に如何なる前提条件もつけない」「イランは交渉の早期再開を望む」と語った。
メフマンパラスト・イラン外務省報道官が「イランは、ウィーン・グループ(露仏米、IAEAで構成)との交渉再開に向け速やかに行動する」と語った。
メフマンパラスト・イラン外務省報道官が「(EU追加制裁による)影響はない」「事態を複雑にするだけである」と語った。
アハマディネジャド大統領が、国営プレスTVとのインタビューで、「米国とイスラエルが、中東の少なくとも2カ国を2~3ヶ月以内に攻撃する計画を進めている」「米国がイラン向けの心理戦のために攻撃計画を立案したとの情報を持っている」と発言した。
7月27日
ロシア外務省がEUの対イラン追加制裁を受け入れられないとする声明を発表した。
ロシアのキリエンコ・国営原子力企業ロスアトム総裁が、ブシェール原発では2010年8月末に核燃料を原子炉区画内に搬入すると語った。
イラン外務省報道官が、「(EUの追加制裁は)交渉再開の助けにならない」と発言した。
7月28日
クローリー米国務省報道官が、「イランと話し合いを続ける準備は出来ている」「数週間のうちに協議が開かれることを希望する」「但し、イランがウラン濃縮を継続する限り制裁も続く」と発言した。
ヴェスターヴェレ独外相が、ダウトオール・トルコ外相との会談後、イスタンブールで、「イランの核兵器開発は受け入れない」「イランの民生用の核開発の権利も、国際的義務を履行が条件となる」「我々の目的は、協力的且つ透明の原則に基づく交渉の再開にある」と語った。
ダウトオール・トルコ外相は、イランのモッタキ外相が、研究用の核燃料を提供されるならばウラン濃縮20%を停止すると話したことを明らかにした。また、同相はアナトリア通信に、「(米・イランは)2010年9月に協議することで基本合意した」「低濃縮ウランと燃料の交換に関する実務協議は始まっている」と発言した。
出所:各種資料より作成のもの。

注:1) 実施は2010年7月27日から。対象分野は、貿易や金融、保険、輸送、石油・ガス開発など。具体的には、イラン国内の石油精製・天然ガス液化等の事業へのEU域内企業による新規投資・機材及び技術の新規提供の禁止等、イラン向け4万ユーロ(約450万円)超の送金の許可制化、イラン銀行のEU域内での支店開設の禁止、イラン貨物機のEU域内空港への発着の禁止、イランの銀・海運企業・核及びミサイル開発関与疑惑企業・機関・人物やイラン革命防衛隊管理下の企業・機関のEU域内での新たな活動の禁止及びEU域内の資産の凍結、軍事転用可能な機器類のイラン向け輸出の禁止等である。尚、EUがイランのエネルギー分野を対象とする制裁を実施するのは今回が初めてである。
2) イランのアハマディネジャド大統領は、2010年7月24日、テヘランにおいて、メドベージェフ大統領が、米国の宣伝芝居を演じる発言を行っているとの趣旨の発言をしていた。
3) イランは同書簡で、独自に3.5%で濃縮したウラン2646ポンドと20%濃縮ウラン265ポンドを交換する用意があると述べている。

(7月29日、記)
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(幹事 畑中 美樹<はたなか よしき>)