イラクの第2回「油田開発国際入札」に対するサウジアラビアの見方~アラブ・ニューズ紙社説から
(2010年1月6日掲載)

 先般行われた第2回国際石油入札では日本勢も落札したが、イラクの野党からは、「1961年に国営化したイラクの石油産業を再び国際石油メジャーに売り渡すものだ」国際メジャーが戻ってくることは歓迎できないと非難する声があがっている。これについてサウジアラビアで発行している英語紙(アラブ・ニューズ紙)が、2009年12月13日付けの社説で論評している。今後のイラクの産油量の拡大はOPEC生産枠の配分という問題を生むだけに、サウジアラビアがイラクと外国石油企業の開発契約をどう見ているのか。同社説を紹介することとしたい。

 1991年のクウェイトの解放以降、国連による制裁が課せられるなかで、イラク国営石油公社(INOC) は重要な油田を可能な限る管理してきた。しかし、生産活動に不可欠な石油産業機器こそ密輸入できたものの、関心を集めるような特殊な活動はできず、埋蔵量調査や増産のための先端技術の導入は失敗に終わっていた。

 世界中の石油会社が油田権益の入札に参加する理由は、適切な技術の導入で時代遅れとなった炭化水素インフラの復興を行えば、増産が可能となりイラクから巨額の利益があがることが分かっているからである。だが外国の石油会社の利権の復活に反対するイラク国内の勢力は、外国企業と同じようにイラク国営石油公社も世界の石油サービス産業から専門家を容易に雇うことができると主張する。

 残念ながらこれは非現実的な話である。イラク石油産業のインフラの劣化と技術力の低下はあまりに進みすぎているのだ。石油産業の復興は、深刻な治安問題とは無縁である政府にとってすら困難な事業である。ましてイラクはいまだに破滅的な戦争の後遺症にあえいでいるのだから。

 ことによると、イラクのアル・マリキ政権は、技術と治安上のリスクの一部を部外者に肩代わりさせようと考えているのかもしれない。新しいパートナーは疑いもなく契約から収益を得ようとするのだが、イラクは厳しい条件を付けている。例えば、シェル石油が、マジヌーン油田の生産を現在の日量4万6,000バレルを180万バレルに増産する見返りに受け取る手数料は、1バレルにつき1ドル39セントと極めて少ない手数料である。この増産目標の設定にこそイラクの石油産業がおかれている危機的な状況が集約されている。

 エクソン、オクシデンタル、シェル、BPのような米英の石油企業が入札に参加しているが、その他に中国の中国国営石油公社、中国海洋石油公社、インドの石油天然ガス公社(ONGC)、ロシアのルークオイル、マレーシアのペトロナスなどの有力な企業も参加している。アル・マリキ政権はこれを口実に、これはイラク侵攻後のボーナスとして、ブッシュ前米大統領、チェイニー前米副大統領、ラムズフェルド前米国防長官が夢見た米国による契約の独り占めでないと主張することができるだろう。イラク政府にとっては、落札結果は非難に対する弁解の格好の口実であろう。

 本質的な問題は、今回の入札でイラクの石油産業を復興させるという極めて困難な課題を解決できるかどうかにある。 将来、イラク政府が外国企業の果たした役割を見直すことは疑いの余地もない。イラク政府が、他の国営石油企業にならってイラク国営石油公社を重用することだってありうるだろう。当面の優先課題は、イラクの炭化水素インフラの近代化であり、なにより施設の安全を確保することにある。

(12月28日、記)
<関連情報>

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(中東問題研究家 江添 久義<えそい ひさよし>)