3月7日の連邦議会選挙を前にマリキ・イラク首相の批判を一段と強めるスンニ派勢力
(2010年2月5日掲載)

 イラクのスンニ派の有力指導者達は、2010年2月1日、マリキ政権が3月7日に予定される連邦議会選挙への反対勢力の立候補を禁じることで民主化プロセスを損なおうとしていると述べ、米国や国際社会に対してこうした動きを止めるよう要請した。マリキ政権はこれまでにバース党の考えを広めようとしているといった理由などで、少なくとも512人の立候補者をブラック・リストに載せ立候補を取り消している。

 立候補を取り消されたスンニ派のサーレハ・アル・ムタラク議員は「マリキ首相とその仲間に挑戦しようとしていた人々の立候補が取り消された」「マリキ首相が選挙結果に関わらず権力を維持しようとしているのは明白である」(ガルフ・ニューズ紙 2010年2月2日)と述べ、マリキ政権の姿勢を厳しく批判した。また同様に立候補を取り消されたスンニ派のダフィル・アル・アニ議員は「米国のイラクでの影響力は、次第に強くなりつつあるイランに押されている」(同上)と語り、イラクでのイランの影響力の伸張振りを指摘する。クリストファー・ヒル駐イラク・米大使も「選挙戦の過程で元フセイン大統領とつながりを持つ有力者を外そうとするのは間違いであり、選挙自体に暗い影を落としつつある」「非バース化政策が利用されている」(同上)と述べ、マリキ政権によるスンニ派候補者外しの悪影響、とりわけ治安面への悪影響を懸念している。

 問題なのはマリキ政権が、元フセイン大統領を実際に支えていた中心となるバース党員と自らの保身や出世の手段として党員となっていた人物とを区別することなく候補者から外していることである。ワシントンの近東政策研究所でイラク問題の調査に当たるデビッド・スチェンカー研究員も「マリキ首相は見境なくバース党員との烙印を押している」「しかしながら、こうした政策はバース主義が真にどこまで信じられていたのかを考慮に入れていない」「イデオロギー的に確信していた中核となる人々に加えて、生活のために入っていた人たちもいるのだから」(ガルフ・ニューズ紙 2010年1月29日)と語り、今のマリキ政権のやり方を問題視する。

 勿論、元フセイン大統領時代の要人が広範囲に亘るスンニ派の抵抗勢力を率いていることは米軍も認めている。ところがマリキ首相はこの点をいわば悪用し、2009年8月以降の首都バグダッドでの爆弾テロ事件が彼らの仕業であり、シリアも加担していると主張している。だがマリキ首相のこうした言い分は、治安上の失態から目をそらす意図が込められたものであると解釈する向きが少なくない。

 スンニ派の指導者達はマリキ首相が明白な証拠もなしにスンニ派外しを行っているのは、選挙戦を政治的道具として利用しているためと見る。米国もマリキ政権の動きが選挙の公平性を損ないかねないとの懸念を高めている。先般、バイデン米副大統領が突然バグダッドを訪問したのも、米国の懸念を伝えるためのものであった。しかし、マリキ首相はバイデン米副大統領との会談で、元フセイン政権時代の人物には如何なる政治的役割も任せるべきでないとの主張を曲げなかった。こうした姿勢が連邦選挙後のイラク内政にどのような影響を与えることになるのか、選挙後もしばらく注視する必要があるだろう。

(2月3日、記)
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(幹事 畑中 美樹<はたなか よしき>)