世界金融危機とドバイ危機の影響も薄れ湾岸地域の2010年の経済成長率を4.9%と予測する国際通貨基金(IMF)
(2010年8月27日掲載)

 世界金融危機の発生から2年近く経つが、中東湾岸諸国の経済も原油価格の持ち直しと共に回復に向かっている。その後、2009年11月には世界マーケットを震撼させるドバイ・ショックが発生した。ドバイ・ワールド・グループが260億ドルの債務繰り延べを発表したからだ。だがここに来て、総債務が1,000億ドル超とも言われるドバイ経済にも立ち直りの兆しがうかがわれる。湾岸諸国の経済の要となる石油価格は、2008年7月上旬の高値140ドルから2008年末にかけては一挙に30ドル台にまで急落したものの、その後上昇に転じ、世界経済の回復とともに75ドル辺りで落ち着いている。以下では、2010年8月3日付けのミドル・イースト・オンラインから、最近IMFが発表した湾岸地域の経済予測と専門家の意見をまとめてみた。

IMFの経済予測
 IMFは2010年5月、湾岸6カ国の経済成長率を2010年4.9%、2011年5.2%と予測した。その前提条件として、本年と来年の年平均油価を80ドルから83ドルの範囲に置いた。2009年の経済成長率が0.8%に終わったことから見れば飛躍的な回復予想である。

 IMFは2010年7月になると、地域の株式市況の回復を見る限りドバイの債務危機の影響は大方霧消したとの見解を示した。但し、ドバイの不動産問題に引きずられ経済規模が2009年に0.7%縮小したUAEについては、2010年も引続き影響が残ると見ている。

 IMFはガス埋蔵量の多いカタールの成長率について2010年18.5%、2011年14.3%と突出した成長予測をしている。対照的に非資源国の成長率は4.3%と予測している。IMFは、湾岸諸国の経済成長について、財政刺激策の継続と需要回復による石油の増産(推定4.8%増)が底支え役を果たすと見ている。

エカルト・ウオーツ・ガルフ・リサーチ・センター経済部長
中東湾岸諸国は資本の純輸出国であり、海外と比べても政府の公的債務の対GDP比率は低い水準にある。
ドバイは未だに最大のコングロメリトであるドバイ・ワールドの債務問題処理に追われているが、このドバイ危機の周辺湾岸国への影響が極力抑えられた理由は、上記①にある。それは同時に、経済成長を支える要因ともなっている。
湾岸諸国は世界経済とうまく同化しており、世界経済の回復の流れに乗っている。

サイモン・ウイリアムズHSBCミドル・イースト・主席エコノミスト
ドバイの経済構造はその他の湾岸諸国の経済とは大きくなっている。まず石油輸出国でないし、借入れ依存度も高い。そして何よりも、世界経済とより一体化している。
このため、金融危機の影響度は、閉鎖的な金融システムを持つ周辺の石油資源国に比べて高い。
ドバイに石油資源が無かったことが危機回避に強力な手を打てなかった理由である。
ドバイ危機では、ドバイが保守色の強い近隣諸国に比べて世界市場に門戸を開いていたことが結果的に災いした。

 IMFが予測した湾岸諸国の成長率は誤解を招くとの意見もある。全体の成長率がカタールの抜きん出た高成長率で膨らんだ形となっているからである。HSBCのウイリアムズ主席エコノミストは、「湾岸地域の2010年の平均成長率は、LNGの輸出に牽引されたカタールの成長スピードによってかさ上げされている」と指摘すると共に、「カタールの成長率を内需に限ってみると、成長率は低い。おそらく金融危機以前の水準を下回り、他の新興国をも下回る水準にある」(ミドル・イースト・オンライン 2010年8月3日付け)と分析している。

(8月13日、記)
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(中東問題研究家 江添 久義<えそい ひさよし>)