対イラン国際制裁のなか権益を確保しながらしたたかな外交を展開する中国
(2010年8月24日掲載)

 国連安全保障理事会に続いてEUも、2010年6月、独自の対イラン制裁を採択した。EUの新制裁では、イラン経済の中核である石油・ガス産業から貿易取引、金融サービスを対象としている。こうしたなか、国連安保理制裁、米・EUの独自制裁により西側企業がイランとの事業機会が閉ざされることになるなか、中国企業が漁夫の利を得ることになりかねないとの声も出始めている。中国企業が、西側企業が去った後の空白を埋めると言う訳である。実際、現時点でも100社を超す中国企業がイランに進出し、テヘランの地下鉄工事、発電所建設、精錬所、石油化学プラントの建設などに従事している。

 エネルギー資源の獲得の必要に迫られる中国は、イランにおける様々な投資プロジェクトを引き受けており、石油、ガス資源獲得のため数十億ドル相当の協定を締結している。中国はイランから年間2,700万トンの原油を輸入している。因みに、2009年の場合、中国がイラン輸入した原油は全体の11%を占めた。今や中国にとってイランは、アンゴラ、サウジアラビアに続く3番目の主要石油輸入国になっているのである。

 両国間の貿易取引も2009年に212億ドルに達し、中国はイランにとって最も重要な貿易相手国となっている。名目上EUはイランの最大の貿易相手となっているが、UAE経由でイランに輸入される中国製品を勘定にいれると中国は既にEUを抜いているといって良いだろう。駐イラン・元中国大使の華黎明(ホア・リーミン)氏は最近出版した回想録の中で、「1990年代初頭に石油の輸入国になってからの中国の外交は全てエネルギー政策が決定付けてきた。イランとの関係作りには長い道のりと困難があった」と回想している。

 それだけに、中国としては、石油資源では世界第四位、ガス資源では世界第二位の埋蔵量を誇るイランとの関係をいまさら台無しにしたくないのだ。イランの西側に対する挑戦的姿勢の背景の一つには、中国が支持しくれるという自信が潜んでいる。中国最大のインターネットのポータルサイトChina.comには「中国が後ろに控えていることを知って、誰がイランの横暴を非難できようか」という趣旨の記事も掲載されているようだ。

 ロンドンのキングス・カレッジのハッシュ・パント教授(防衛研究)は、インタープレスの取材に対して次のような情勢分析を披露している。

イランに核開発計画の放棄を求める国際社会の圧力はここ数年日増しに高まっており、西側企業はイランとの取引を更に減らし始めている。
その結果、イランは石油、ガス部門への投資を一層中国に仰ぐようになった。
EUが採択した新たな制裁に対しても、中国が強力な後ろ盾となっている限り、テヘランが誠意を持って交渉に当たる理由はない。

 その中国は、イランにおける重要な経済権益を維持する一方、核拡散防止を支持し、イランに核開発計画の放棄を求める国際社会と協調努力をしながら国際社会の「責任ある一員」であること示そうときわどい外交を展開している。ブリュッセル現代中国研究所のジョナサン・ホルスラグ氏は中国政府の最近の外交を次のように捉えている。

中国は、テヘランと戦略的パートナーシップを維持するが、それが西側との関係を悪化させないように配慮している。
具体的には、中国は、イランに国連に協力してほしいという微妙だがはっきりとしたシグナルを送っている。その例として、北京はヤダバラン油田への投資を遅らせ、融資実行を延期する決定を下している。イランのマフムード・アフマディーネジャード大統領が上海万博を訪れた際に、中国政府幹部は会談を断ったと伝えられている。

 8月1日、ウイーンで中国の楊潔篪(Yang Jiechi)外相がイランの核開発問題に関して、「中国は交渉の道を継続する」との声明を発表し、進展の見られないイランの核開発計画問題を巡る交渉の解決に向けて外交努力を強化すること明らかにしている。他方、イランだが、国連安保理、EU、アメリカによる一連の制裁発動で、石油開発技術、機器の調達は益々困難になるものと思われる。果たして、中国がイランで進めようとしている石油開発プロジェクトが順調に進むのか否か注目される。

(8月13日、記)
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(中東問題研究家 江添 久義<えそい ひさよし>)