4年以内での核物質の管理徹底に合意する内容の声明を採択し閉幕した「核安全保障サミット」
(2010年4月16日掲載)

 2010年4月12日、13日の二日間、ワシントンで開催された「核安全保障サミット」は、今後の世界では核テロが国際的な安全保障にとって最も挑戦的な脅威の一つであると位置づけつつ、オバマ米大統領の提唱する4年以内での核物質の管理徹底を目指す内容での声明及びその実現に向けた作業計画を採択して閉幕した。

 2010年4月13日に行われた全大会議では、核物質の違法取引対策など、国際原子力機関(IAEA)の機能強化法、核の安全の確保策、の三つの議題が主に検討された。同日の議論を通じて、時間的な制約もあることから、既存の国際的な法的枠組み、例えば、核物質保護条約などを有効活用して行くことが合意された。また、今後、作業計画の実施状況を検証する実務者会議を半年に1度開催することも合意された。尚、次回は2012年に韓国で開催されることとなったが、朝鮮半島の非核化の問題に国際社会の関心を集める狙いがありそうだ。

 今回の「核安全保障サミット」の参加国・機関は、47カ国と3機関(国連、IAEA、欧州連合)であった。尚、参加国のうち首脳が出席したのは38カ国で9カ国は代理による参加となった。中東で唯一の核保有国と見られるイスラエルのネタニエフ首相は、サミット4日前の2010年4月8日、急遽参加予定を取り消しメリドール原子力相の出席となった。尚、全体会議の冒頭演説及び声明採択後の記者会見でのオバマ米大統領の主な発言内容は次の通りであった。


<13日全体会議冒頭の演説>
国家間の核戦争の危険は遠ざかっているが核攻撃の脅威は増している。歴史の残酷な皮肉である。
国際的なテロリストが核兵器を使った攻撃を行う脅威が高まっているが、この脅威への対処には全ての国の協力が必要である。世界の各国が意思を統一して行動する時が来た。
実際、りんご程度の大きさのプルトニウムが数千人を死に追いやり世界を破滅させかねない。
例えば、アル・カイダのようなテロ組織が核兵器を手に入れれば必ず使うであろう。そうなれば世界は破滅してしまう。

<13日声明採択後の共同記者会見での発言>

(「核安全保障サミット」の)参加国は核テロが安全保障上の最大の脅威と宣言し、核防護や核物質の密輸の阻止が最も効果的な予防策であることに合意した。
(今回の核安全保障サミットは)一層安全な世界の構築に向けて真の進展を遂げた。


 尚、2010年3月下旬以降、今回の「核安全保障サミット」の開催に向け、核兵器を含む核の管理体制を整備・強化する次のような動きが見られた。

年月日 主   な   動   き
2010年
3月26日
オバマ米大統領とメドベージェフ露大統領が、電話会談で、2009年12月に失効した「第一次戦略兵器削減交渉(START)」の後継条約について合意した。1)
3月29日
国際原子力機関(IAEA)とロシアが、「核燃料バンク」の創設協定に調印した。2)
4月06日
オバマ米政権が「核戦力体制見直し(NPR)」を発表した。3)
4月08日
オバマ米大統領とメドベージェフ露大統領が、プラハで、「新START条約に署名した。4)

注:1) 合意の主な内容は、①配備済み核弾頭の上限を1550発に制限する、②大陸間弾道ミサイルや戦略爆撃機等の核運搬手段の総数を未配備分も含めて800基・機に制限する、③②のうち実戦配備の運搬手段の上限を700基・機に制限する。
2) 仕組みとしては、「ロシア国内で製造される120トンの低濃縮ウラン(濃度2~4.95%)をシベリア南東部のアンガルスクに備蓄し、IAEAが管理の上で、一定条件を充足する国家の要請に応じて市場価格で提供する」というもの。
3) 今後5年から10年の米国の核戦力の包括的指針として策定されたもので、米国にとっては、国家間の全面核戦争よりもテロ支援国・過激派による核兵器の入手を最も深刻な脅威であるとの立場を明確にしている。また、非核保有国が米国を攻撃しても、核拡散防止条約(NPT)遵守国であれば核使用の対象とはしないことを明記している。
4) 今回の調印は、2009年4月5日、オバマ米大統領が核のない世界を訴える演説を行ったプラハ城で行われた。新条約の有効期間は10年で、批准後7年かけて履行する。

(4月15日、記)
<関連情報>

心理戦の一環か浮上し始めたイスラエルによるイラン核施設に対する戦術核を使用した軍事攻撃の可能性【2010/4/13】

イスラエルからも参加者のあったバハレーンで開催の「原子力技術国際会議」【2010/4/9】

プーチン首相のカラカス訪問で油田及び原子力エネルギー開発・宇宙協力などで合意したロシアとベネズエラ【2010/4/9】

ヨルダンの研究用原子炉建設の本契約を獲得した韓国原子力研究院と大宇建設の韓国企業連合【2010/4/2】

イラン核問題で「適切且つ強硬な措置」を求めた主要8カ国(G8)外相会合【2010/4/2】

(幹事 畑中 美樹<はたなか よしき>)