マレーシア海事プロジェクトへの不参加を検討し始めているドバイ・ワールド
(2009年9月29日掲載)

 ドバイ・ワールドは、昨今の世界的な景気の悪化がドバイ政府の財政に悪影響を与えていることから、マレーシア海事プロジェクトへの参加の必要性を再検討している。ドバイ・ワールドは約20社からなる持株会社で、系列会社の中には巨額の資産を所有する会社も多い。これらには、世界に30カ国の支社を持つDPワールドやP&O、ナキール(Nakheel)、リミットレス(Limitless)、イスティスマール(Istithmar)など有名企業も含まれている。ドバイ・ワールド全体では世界100カ国以上で5万人を雇用しており巨大企業といえる。

 投資規模45億ドルのマレーシア海事プロジェクトは、インフラ、公益事業などを中心とするMMC社(MMC Corporation Bhd.)との共同事業で2007年9月に両社が署名した。同プロジェクトは、総合的海上複合体構想であり、石油ターミナル、ドバイ・ドライドッグスによる造船所、貨物取扱所、原料の手当てから販売まで物流を効率的に管理するロジスティック・パークなどの建設が予定されている。

 ところが、既にMMC社が2009年8月18日付でクアラルンプール証券取引所を通じて声明を発出し、「世界経済に大きな影響を与えた今回の金融危機の結果、ドバイ・ワールドはマレーシアン海事プロジェクトへの投資配分を再検討するに至っているようだ」と述べていた。ドバイ・ワールドは、ドバイ政府の傘下で関連企業やプロジェクトのポートフォリオを管理してきた。しかし世界経済危機により肝心のポートフォリオが悪化してしまった。マレーシアン海事プロジェクトからの撤退の検討もその余波といえる。

 ドバイ・ワールドは9月中旬時点では、マレーシアン海事プロジェクトに関する公式なコメントを発表していない。もっとも同社は、8月6日時点で別の事業について次のように述べていた。

金融危機を発端とした景気悪化による負債総額が15億ドルに上るため、アフリカ観光事業への投資を延期した。
2007年10月から続いている合計8件のルワンダ観光開発プログラム(総投資額2億3000万ドル)についても、6プログラムを延期した。

 世界景気に関しては、このまま回復基調をたどると見るか否かで専門家の意見も分かれている。こうした状況下で、海外投資を従来通り進めるにはリスクが伴うことは必至である。ドバイ・ワールドも、昨今の世界経済情勢、さらには自社の金繰りを勘案しつつ、財源と実行すべきプロジェクトとのバランスを見ながら2009年末には今後の方針を打ち出す予定である。

(9月18日、記)
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(著述家 高橋大樹<たかはし・ひろき>)